第21話「尊厳と共に」
魔法使いとなるべくして始めた第一段階から第二段階へと進み、今度は炎をデッサンする事であった。
炎をデッサンと言っても、絶えず炎は揺らめくので正確には特性や特徴を捉え、リアティや存在感を出すと云う技術は、これがまたなんとも言えず難しいのだ。
もう何十枚と描いたのだろうか?第二段階のステップへと移行してから早1週間、進展はしているのだろうが、実感が沸かない。
自分自身で進展しているかどうか自信が無い為、日を置きつつ何度もアザントサンに「どうですか?」と確認して貰っていたのだが、、、、。
「ふ~ん?、、、その調子で続けていなさい。」
そんな調子でイマイチはっきりしないのであった。
アンリ&ジル爺さんにはなかなか好評ではあったが、肝心のアザントさんに認められなければ意味は無いので、今日もこうしてデッサンを続けているのだがアンリが邪魔をしてくる。
「流一!リューウーイーチー!!ほれ!見て見て!?」
大変面倒臭いのだが無視するのも大人げ無い、仕方なしとばかりに声のする方へと顔を向けると、、、。
「がおー!ボアウルフマンだぞー!!かかってこ~い!!」
そこには先日、狩りで飼って来たボアウルフの毛皮を被る少女が立っていた。
「、、、、、。」
一体、なんだと云うのだ?恐らくだがアンリは此処の生活に飽きてきたのだろう、、、、。
同年代の友達は居ないし、一番年齢の近い俺も絵を描いてばかりいるので、構ってくれる大人は老人'Sしかいない。
余りにもの構ってオーラが酷いので石の片面に✕印を付け、地面に線を引いて盤面代わりにした何とも貧乏臭いオセロで相手をしてあげたのだが、これがまあ何とも弱い。
手加減すると怒るし、勝っても不機嫌になる、、、、一体どうしろと?
そして相手を変えてジル爺さんと勝負をしていたのだが、当然結果は変わらずアンリの一人負け。
そしてとうとう勝者への道を諦めたアンリは、ボアウルフの皮を被り俺を襲ってきたのだった、、、臭く無いのか?
「流一!ボアウルフマンがやって来たのだぞ!?勝負だ!!」
「勝負?オセロで?」
「オセロ違う!、、、、違うけど勝負だ!!」
「だから何で勝負するの?」
「う~、、、、流一が考えろ!」
「え?僕が?お前、無茶苦茶だな!?」
ボアウルフマンは登場するや否や、兎に角構って欲しいとの仰せだ。
それにしても、修行の邪魔しないでくれないかな、、、、。
二人で遊べる遊びか~、、、、何があるんだろ、、、、トランプとかは作るのめんどくさいし、オセロとかと同じ結果になりそうだしな、、、複数人とかだったら無い事も無いんだけどな、、、、、。
、、、、幾ら考えても思いつかん!二人で頭を使わないで遊べる遊びなんて思いつかんわ、、、、。
「う~ん。っていうかアンリは何かしたい遊びはないの?」
逆に聞き返すとアンリは数瞬の間悩み、モジモジしつつもチラチラとこちらを窺い、何か言いたそうにしている、、、、どうした?
「どうしたの?何でも良いよ?言ってごらん?」
そう問いかけても、モジモジするだけで何も言ってこない、一体何なのだろうか?、、、そう疑問に思っているとアンリは恭しく口を開いた。
「う~ん、、、、、えっとね?、、、、流一はアンリの事バカにしないか?」
「え?うん。バカになんてしないよ、何でも良いから思い付いたなら言ってごらん?」
「アンリ、、、、、、お、、、、。」
「、、、お?」
「、、、、ぉ、おままごとしたい!」
え?おままごと?ちょっと幼稚過ぎないか?確かアンリって11歳だよな?
「、、、、、おままごとしたいの?」
「、、、、うん、、、、、嫌か?」
うっ!そんなウルウルした目で見ないでくれ、胸が苦しい、、、、。
「お、おままごとか~、、、、、う~ん。」
「うぅ~、嫌か!?」
「え!?あ、ああ、嫌じゃないよ!?」
「!、、、良いのか!?やったぁ!!」
「うっ!」
つぶらな目をキラキラとさせて喜ぶアンリを見て、引き返せない事態になってしまった事に戦慄する。
予想外の提案に乗ってしまい、満面の笑みで喜ぶ少女を見て自分の行く末に戦慄していると、どこからか視線を感じたので顔を見上げてみると、洞窟の入口のすぐ横で椅子に座り、酒を飲み乍らこちらの反応をニヤニヤと見て笑みを浮かべる赤っ鼻の酔っ払いが目に付いた、、、、このジジイ!。
、、、、よし!決めた!あのジジイを巻き添えにしてやる!
「よし解った。それじゃあ、ジル爺さんも誘って3人でやろう!」
「なっ!?」
「本当か!?3人でやるの?、、、、爺ちゃ~ん!」
驚愕の顔でこちらを見るジル爺に逆にニヤニヤしてやった、、、、フッ、ざまあ!
「ぐぬぬっ、、、おのれ、、、、。」
悔しそうにこちらと酒を交互に見るジル爺さんを見て、アンリがつぶらな瞳を向ける。
「爺ちゃん、、、、嫌なのか?」
アンリ、GJッ!!カワイイ孫にあんな顔でねだられて断れる人間はいねえ、、、我の秘策、此処に相成った。
こうして平均年齢32歳で織り成す地獄のおままごとが始まる事となった。
「じゃあアンリはお母さんっ!!流一はお父さんな?爺ちゃんは、、、、、え~っと、赤ちゃんな?」
「儂がかっ!?」
「うんっ!!決定!」
「ちょっ!ちょっと待てアンリ!?普通、儂がお父さん役じゃろ!?」
「え?何で?」
「何でって、儂が一番年上じゃろ!?ここは流一がやるべ、」よしっ!ジル爺さんが赤ちゃん役でお父さん役が僕だな?解ったっ!」
ふ~、危ない危ない、何が悲しくて異世界で幼児プレイなんかしなきゃいけないんだ?僕にそんな性癖なんて無いぞ?
「待てっ!!流一っ!話は、」爺ちゃん、五月蠅いっ!もう決定したのっ!」
「ほらほら、ジル坊やはお母さんの言う事聞かなきゃ、メっだよ?」
「流一ィ~!貴様ァ~!!」
「爺ちゃんっ!赤ちゃんはバブ~だけしか喋っちゃ駄目っ!!」
「くっ!?ぐぬぬ、、、、。」
「はいはい、じゃあ始めようヨ~イ、スタート!」
ほらほら、構成作家兼、脚本家兼、演出兼、ディレクター兼、チーフプロデューサーのアンリさんが決めた事に反論は認めませんよ?黙って位置に着いてください。
「はあ~、今日も大変だったわぁ~。あっ!いけない、隣の奥さんのお話しに付き合ってたらお夕飯遅れちゃう、お仕事が忙しい旦那様の為に美味しいご飯作ってあげなきゃ」
やたらクネクネした動きで奥さん役を演じるアンリ。
ジル爺さんは苦々しい顔をし乍ら両手両足を曲げ、仰向きの体制になっている。
そんなジル坊やを一瞥するとアンリママはジル坊や(72歳)に話しかけた。
「ジルちゃんも良い子にしててね?もうすぐパパも帰ってきまちゅよ~。」
「、、、、、バブ~」
「、、、、、爺ちゃん?」
カ~ット!ハイっ!アンリさん演技指導入りま~す!
「爺ちゃん!?赤ちゃんは、そんな声出さないぞ!?」
アンリPの演技指導が入り、ジル爺さんは半ばやけくそ気味に裏声で演技する。
「バブ~っ!」
ジル爺さんの迫真の演技を見て満足したアンリPは気を取り直して再開する、、、、プッ。
「今日は早く帰れそうだって言ってたけど、旦那様はまだかしら?」
どこからか持って来たお玉を持って鍋をかき回すアンリママは、スタンバイしている俺の方をチラチラと見てきた、、、、どうやら出番みたいだ。
「ただいま~。」
「お帰りなさ~い。ご飯の用意はもう出来てるけど、先にお風呂にする?ご飯にする?」
う~ん、先にお風呂って言ってこのまま暫くの間フェードアウトしていたいんだけど、何か怒られそうだよな、、、。
「うん。じゃあ先にご飯にしようかな、、、今日のご飯は何かな?」
「今日はね~貴方の好きなハンバーグよ!」
「お?ハンバーグかそれは楽しみだな~。」
アンリママにそう返事すると、アンリママはキッチンが設定されている方向に振り向き、エア料理を始める。
その間、チラっとジル坊や(72歳)の方を見ると、開始時から寸部違わぬ体勢のままレイプ目で虚空を見詰めていた、、、、ナムマンダブ、ナムマンダブ。
暫くすると、これまた何処からか持って来た人数分の茶碗とスプーンを床に置いて、鍋に用意されていた愛妻料理(泥)を茶碗に盛り付けた。
「はい、お待たせしました~!たんと召し上がれ♡」
「お~美味そうだね~。頂きま~す。モグモグ。」
「どう?美味しい?」
アンリママは満面の笑みで料理(泥)の評価を聞いてきた。
「うん。凄く美味しい。」
「えへへ。良かった。一杯あるからたんと食べてね?」
そう言ってアンリママは満足そうに笑みを浮かべ徐に死後1週間経過したセミの死骸の様に全く動かないジル坊や席を移動し、膝枕の様な体勢でジル坊や(72歳)を抱えて食事を促した、、、どう見ても老人介護にしか見えないが、、、。
「は~い、ジルちゃんア~ン♡」
「モグモグ。」
「ジルちゃん、美味しい?」
「バブ~。」
「ブファッ!」
「!」
ジル坊や(72歳)が精一杯の返事をした瞬間、いつから見ていたのか、何十年来の親友であるジル爺さんの悲劇上で発揮した迫真の演技をを見て突如アザントさんが吹き出した、、、、、、クッ、、、失、、、礼、、、ですよ?師匠、、、プっ!
「クッ!す、、済ま、、、ククっ、、、ちょっと咳が、、、、プクククっ。儂の事は気にせず続けておくれ、、、、ブプッ!」
必死に笑いを堪えるアザントさんを見た瞬間、ジル爺さんは堰を切ったように大粒の涙を零し慟哭とも何とも言えない叫びを上げた。
「殺せえ~!!いっそ殺してくれえ~!!!」
「ほひょ~っ!イ~ヒヒヒヒひひひひ!グハハハハハ!駄目だーっ!かんべんしてくれーっ!!」
アザントさんにつられて僕の我慢も限界突破した。
「がははははははハハッハハあ~あ~ヒ~ヒ~あか~ん。アカンやつや~コレ~ほんまもんやで~!」
こうして、地獄のおままごとはジル爺さんの尊厳と共に幕を降ろした。




