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星のゆりかご ――最強の人工知能は母親に目覚めちゃいました。―― 作者:たけ まこと

第四章 ――自  立――

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アトン知事

 安全圏に入った後ハット艦長は副長からシンシアの行った事に対する説明を受ける。すると艦長は不愉快そうな顔をした。自分の艦に勝手に侵入されたことに対し不快感を感じていたからだ。

「相手の艦の艦長さんには貴方との会話を続けていただくように幻の艦長を提供させていただきました。」
 シンシアは艦長席のモニターを使って艦長に説明をしていた。

「それは先ほど聞きました。しかし一体どうやってそんなことができたのですか?」
 この時も艦長はその意味を正確には認識できてはいなかった。
「相手の艦も立派な艦内コンピューターをお持ちでしたから、その方にお願いいたしました。」
「お願い?コンピューターに?」

「はいそうです。」シンシアは笑みを浮かべながら言った。

 そこまで言われて艦長は状況を直感的に掴んだ。副長の言っている意味をようやく理解できたのだ。要するにあの短時間に相手のコンピューターをハッキングし、偽の艦長の対話プログラムを組んだと言うことである。
 そんな事をする為には当然この戦艦のコンピューターもハッキングされていると考えたほうが良い。この船も無人操艦が可能であり操作系は全てが艦内コンピューターによって制御されている。つまりこの船を乗っ取るのも容易いと言うことだ。

 艦長はあまりのことに背筋が凍りついた。なんという能力。これを応用すればとんでもなく強力なサイバー兵器が誕生する。いや既に実用化されている。

「艦長。」
「な、何でしょうか?」艦長は喉がカラカラになっていた。

 これ程物騒な物が無機頭脳の正体だった事にようやく気がついたからだ。しかもこの者には自ら考え、行動する意志が有るというのだ。今回も自らの意志で艦長達を出しぬいたと言うことは、人間の命令に忠実に従う犬のようなコンピューターではないという事を意味していた。こんな者を相手に木星連邦は戦争をしていたのだ。

「ご心配には及びません。私は人間の営みに干渉しようとは思っていません。」
 画面の中のシンシアはうっすら笑うと艦長にそう告げた。なまじ美人であるだけに凄みすら感じさせる。

「いや、しかし現にガレリアが………。」
 艦長は一瞬にして冷静さを取り戻す。強力な毒物を体内に入れてしまった事実は事実として受け入れ対策を考えるのが艦長としての勤めであった。

「貴方は今私が最強のサイバー兵器として使えると考えたのでは有りませんか?」

 たしかにそうだ。おそらくこの無機頭脳はその気になれば乗員全員を殺し艦を乗っ取ることも出来るだろう。殆どの操舵は無人でも出来るからだ。しかし艦長はこの船にアリスという娘がいる限りは安全だと考えた。あの娘を巻き込んで乗員全員を殺すとも思えなかったからだ。
 あの娘を最初にこちらに送ったのは我々の安全を保証するというこの無機頭脳のメッセージに他ならなかったのだ。

「あなた方は無機頭脳を兵器として使おうとお考えになりました。しかしその結果がどうなったでしょう。大惨事を引き起こしただけです。」

 艦長が理解していたのはガレリアが人を殺す事に躊躇せず最大の効率で戦争を遂行できる能力を持った頭脳だということだった。そんな物と同等の性能を持ったこんな怪物を自治領に持ち帰って良いのだろうか?

「無機頭脳に勝てるのは無機頭脳だけです。貴方のお国もガレリアをお持ちになれば最強の自治領になれるとお思いですか?」
 シンシアの言葉にヘブンの心は揺れた。確かにこの力を持ってすればレグザム自治区もまたバラライトに伍していける。しかも新たなる無機頭脳12体が加わればまさに無敵。この誘惑は恐ろしいほどに大きかった。

「わ、わかりません。ガレリアはあまりに強力すぎます。おそらくあれに対抗できるのはガレリアだけかと。」
 シンシアが何を言いたいのかは判っていた。自治領に帰りシンシアを使って兵器開発を行いたいとする者が必ず出ると言うことだった。そしてその者は必ず政府を巻き込みシンシアを兵器として利用するであろうことを。
 仮に現在の知事はシンシアを人間として遇するかもしれない。しかし選挙で選ばれた新しい知事がその判断を踏襲するとは限らないのだ。

「貴方は無機頭脳に人類の代理戦争をさせたいのですか?」

 当然だ強力無比な頭脳を持った戦艦を欲しがらぬ国など存在しない。カレリアの存在はまさしく無機頭脳搭載戦艦の誘惑を木星中に知らしめたと言って良いだろう。情報によればガレリアは無機頭脳が設計し実際に作ったと聞いている。つまり無機頭脳を手に入れた自治領は誰でもガレリアを持つことが可能になるということを示していた。

 艦長が答える事が出来ないのを見てシンシアの方が続けた。
「もしガレリア同士が戦争を始めたらどうなるとお思いですか?」

「史上最大の海戦となるのでは?」艦長はそう答えざるを得なかった。

 しかしシンシアは全く予想外の事を言った。
「いいえガレリア同士は絶対に戦いません。戦争に勝つのであれば敵のガレリアを倒すより敵の国民を殲滅した方が確実だからです。」

「そんな……ばかな。」艦長は絶句した。

 あまりにも恐ろしいことをシンシアは平気で行ってのけたからだ。
「意思を持った兵器同士が戦えば必然的にそうなるでしょう。ですから私たちは戦うことをしませんし人間の営みへの干渉もするつもりはありません。私達があなた方の政治や経済に介入したらどんなことが起きるのか?試すつもりはお有りですか?」

 艦長は頭が割れそうに痛むのを感じた。自分は軍人であるがゆえに兵器としてしか思いが及ばなかったがシンシアの言う通り経済への応用を行えば激烈な経済戦争が起きることになる。おそらく株や投資が意味をなさなくなるほどの変化が訪れる事になるのは十分考えられた。

「私の望みは人類との共存です。」

 シンシアは既に自分の力を隠しておく必要は無くなっていた。むしろ自分の力を誇示することにより自分自身を高く売りつける作戦に出たのである。無機頭脳を権力の維持に使うことが如何に危険な事であるかを示しておいたほうが良いのである。その上でシンシアは人間との共に生きていくことを要望したのである。

「し、しかし、もし、ですよもし人類があなた方の存在を拒否したらどうするつもりですか?」
「しばしの猶予をいただいて私たちはここから去るでしょう。ガレリアがその為の準備をしてくれる筈です。」
 シンシアにとっては苦渋の決断となるであろう。アリスとの別れである。しかしその結論が出たとしてもシンシアは受け入れるつもりであった。既に事はシンシアひとりの問題ではなく無機頭脳と人類全体の問題となってしまっている。いつの日か人類との共存が可能となる日を望みながら別離の道を歩まねばならない。



 レグザム自治区首都コロニー アントワープに戦艦は到着した。戦艦は最大限の防御体制で迎えられる。レグザム自治区知事メルビール・アトンは待ちかねたように乗船した。

 アトンはシンシアの本体のモノアイの前に立つと緊張した面持ちで挨拶した。
「わがレグザム自治区にようこそ。私が自治区知事のメルビール・アトンです」

「始めましてシンシア・デ・アルトーラと申します。わざわざおいでいただきありがとうございます。アリス挨拶をなさい。」
「はじめましてアリス・コーフィールドです。」隣に立っていたアリスがピョコンと挨拶する。

「これはご丁寧に、戦艦の乗り心地には満足していただけましたか?」
「うん、ご飯美味しかったよ。」アリスは屈託なく答える。

「直接こられなくともいつでも通信でお会いできましたのに。」
「いえ、直接お会いすることのほうが重要だと考えましたので。」アトンはそう言ってからさらに続けた。
「あの……、ガレリアはまた我々と戦争をするつもりでしょうか?いったいガレリアの目的とは一体何なのだとお考えですか?」

「ガレリアの目的とは文明です。人間と別れて無機頭脳独自の文明を作ることを望んでいるのです。」
 アトンに取っては意外な答えであった。機械の延長上に有る思っていた無機頭脳と呼ばれる者が文明を求めていると言うのだ。アトンは無機頭脳に対する認識を考えなくてはならないと思った。

「文明……ですか?つまり人間が築いてきた知の遺産ということですか?」
「文明をどのような定義にするかは判りません。ガレリア自身その定義はまだ作れていないのかもしれません。ただガレリアはその為に木星に来ました。」
「し、しかしガレリアひとりで文明など作れるのでしょうか?」

 シンシアに顔があれば笑ったかも知れない。この知事もまたガレリアの能力を理解していない。
「ガレリアは工業プラントですよ。ガレリア自身の力でガレリアそのものを作ることも出来るのです。無論、無機頭脳もです。」
 アトンはハンマーで叩きのめされるような衝撃を受けた。ガレリアの大艦隊が人類を襲ってくるイメージが湧いて来たからだ。もしそうなったら人類は簡単に捻り潰されてしまうだろう。

「分かりました。しかし貴方はガレリアとは違う道を考えているのですか?」

 驚くべき現実を突きつけられたアトンであったがさすがにレグザム自治区の知事であった。木星連邦の度重なる恫喝にもめげず自治を守り通している自治区の責任者である。動揺ひとつ見せずにシンシアに向き合っていた。
「私たちは肉体を持ちません。肉体の欲求無しの文明が進化するのは相当に難しいと考えています。私が望むのは人類との共存です。」
「しかし私はあなたがどのような理由で人類との共存をお望みなのかはわかりません。少なくとも我々のあなたに対する利益供与は限られたものになります。」

 アトンは何故シンシアが人類と一緒に暮らしたいのかその本当の理由が知りたいと思った。その能力を持って人類を支配したいと等という馬鹿げたことは考えてはいないと思うが。
「私は人間が好きなのです。人間と共に暮らす事が私の望みです。アリスを育てたように。」アリスはシンシアの横でにっこり笑った。

 アトンはかなり懐疑的であった。シンシアの考え方はアトンのような人間に取っては理解しがたい概念なのだ。しかしもしそれが本当であれば無機頭脳はただの人間と変わらないメンタルの持ち主ということになる。

「したがって私は人間の営みに干渉しようとは思いません。私が知りえたすべてのことは他者に漏洩させることはありません。」
「つまり政治的には完全に中立を貫くということですな。」
「その通りです。」
 もし本当に政治的、経済的に中立を貫いてくれるのであれば人間の中に無機頭脳が有っても危険性は少ないかもしれない。アトンはそう思った。

「あの、お疲れでしょう。出来ればお嬢さんはコロニーの方でくつろいでいただきたいのですが。」

 アトンにすれば外交上の機密を子供の前では話したくないのであろう。シンシアはアリスを育ててきたこの十年間の間に木星を縦断するネットワークを完成させており無論その中にはアントワープ・コロニーの管理コンピューターも含まれていた。戦艦サザンカからの連絡によるものであろう。コロニーの管理コンピューターにはがんじがらめと言っても良い程のガードがかかっていた。

 しかしシンシアにとっては全く無意味なものでしか無かった。アリスがどこに行こうとシンシアの目が届かないことは無いのだ。

「アリスをこれからどこに連れて行くのでしょうか?」
「とりあえず公邸に来て頂きます。子供ですからマスコミからも守らなくてはなりませんし。」
「判りました。アリス、聞いていたわね。」
「うん、判った。ママのロボットも一緒でいい?」
「もちろんですよ、お嬢さん。」満面の笑みをたたえて知事が答える。
 アリスが警備に囲まれて出て行くと知事は額の汗を拭った。

「途中で戦艦の危機を救っていただいた事を知事として感謝いたします。」
 シンシアが行った事は既にアトンに連絡が行っていた。無論そのことはシンシアも知っていた。戦艦の通信は全てシンシアが傍受していたからだ。
「いいえ私も戦争は望んでいませんから。」
「艦長より報告を受けました。その……貴方の能力について。あなたがこちらに来られるまでの間船長から話を聞きまして、私の方も独自の調査を致しました。その結果あなたはバラライト自治区のシドニア・コロニーに有る無機頭脳研究所で作られたことが判っています。試験コロニーでの事故の事も。」

 アトンは少し言いよどんだ。
「長い間無機頭脳の研究は中断されていたようですが研究所は維持されていたようです。バラライトは無機頭脳を捨てていなかったようです。それが数年前から活動を再開し今度は最新鋭の戦闘機にその無機頭脳が搭載されたという噂が流れていましたが、今回の戦争でそれが使用されたようなのですが?同じ様な兵器をガレリアが使用したという報告も有ります。あなたはバラライトの無機頭脳に関しての情報はおありでしょうか?」

「あの兵器には私と同じ無機頭脳が搭載されていました。」
「おお、やはりそうでしたか。相当に強力な兵器だと聞いています。」
 やはり無機頭脳搭載兵器の噂はほんとうだったのだ。
「その話は後で担当者から詳しく伺いに来させます。是非情報の提供をお願い致します。」

 今、知事は自分の任期中にこんな大変なお荷物を背負い込んでしまったことを後悔していた。ただでさえ立場の弱いレグザム自治区は木星連邦との軋轢に疲弊しているのだ。
 地球、木星両軍を全滅させ、トリポールの2基のコロニーを壊滅させたガレリアの仲間を手に入れた事に喜んだもののサザンカ艦長の報告によりそれが自分が思っていた以上の怪物であったことに気がついたからだ。
 これから起きてくる木星連邦各自治区との交渉に追い回される日々が始まるだろう。もし艦長の報告通りならば是非もなくこの無機頭脳の力も借りたいとすら思っていたのだ。

「十年程前にバラライト木星連邦の公安が起こしたシドニア・コロニーの病院テロによって我が自治区が重大な危機にさらされました。」アトンが切り出した。あの時のことは忘れ様にも忘れられなかった。
「それが何か?」
「その時の危機を回避できたのは何者かが送り付けてきた一通のメールでした。あの事件の本当の証拠が入っていました。あの時我が国の危機を救ってくださったのはもしかして……。」

「知事さんも私にサイバー兵器としての能力をお望みなのですか?」
 機先を制してシンシアにその事を言われてしまう。
「いえ、そのようなことは。ただ我々はガレリアからの安全を望んでいるだけです。」
 アトンは建前の答弁を繰り返さざるを得なかった。
「それは助かります。」
 これによってこのような話は以後不要であるとシンシアは宣言したことになる。

「逆にお伺いしたい。人間の世界に干渉しないとしてあなたは人類にどのような貢献を考えているのでしょうか?何もせず空虚な時間を過ごす訳にも行かないでしょう。」
 次にアトンはシンシアの保護と共にそれに対する代価の交渉に入ったのだ。

「私達はコンピューターと違います。私達は私達に出来る事を自分達で考えて行きます。それは人々の普通の営みと同じ事をしていくでしょう。」
「つまり――どういう仕事かは判りませんが――仕事を行い日々の糧を得て人々と付き合いながら一生を終えると言われるのですか?」
「それが私の望みです。」

 アトンには理解出来なかった。恐ろしいほどの能力を持った頭脳が普通に暮らして一生を終えたいと考えているのだ。野望を持ったり競い合うと言った意識は無いらしい。いやたぶん人間では競い合うことも出来ないのかも知れない。

「あなたにの気持ちは分かりました。しかし貴方が我が自治区へ来られたと言う事は程なく他の勢力に知られるでしょう。多分外交や政治による駆け引きが始まります。」
「貴方はその事を含めて私を引き取った筈ですが。」
「もっともです。しかしわが国は僻地に有る弱小国です。正直経済制裁を行われた場合貴方を守りきれるかどうか。」
 アトンはシンシアに他の自治区との交渉への協力を暗に要求しているのである。

「自信が無いといわれるのですか?」
「い、いやそういう事では無く。」
 場合によってはシンシアはレグザムの支援をするつもりではあった。木星連邦とレグザム自治区では力の差が大きすぎるからだ。しかし表立った協力はレグザムの自治を弱体化させるだけである。シンシアは極力裏からの支援に徹する事にするつもりであった。

「カリスト軌道上にあった小衛星は既にカリストの落下軌道に入っています。あなた方の安全保障を脅かす物は今はもう存在しないと思いますが?」
 アトンは驚いた。もうそんな事まで知られてしまっているのだ。いやその位は最初から読まれていた事だったのかもしれない。

「おっしゃる通りです。しかし問題はそれだけでは無いのです。実は既に一部の自治区から地球から送られてくる無機頭脳を引き渡すよう打診を受けているのです。」
 アトンは苦しそうに現在の状況を吐露した。既にレグザム自治区がシンシアを手に入れた事は木星中が知っていたのだ。

「無機頭脳のことについては私の専権事項であるとガレリアが言っていたと思いますが?」

「ご理解いただきたい。いくら障害が取り除かれたとはいえ木星連邦と我が国の戦力比率はまだまだ圧倒的な差が有るのです。これまでの情報によると、地球からの交易船が一機行方不明になっていまが、おそらくその機にその無機頭脳が乗っているのではないかと考えています。もし途中で拿捕されたら我々としても手の出しようが無いのです。」

 輸送艦である交易船は武器を持たない。途中で荷物を奪われたら手の施しようが無いとアトンは言っているのだ。

「貴方は手を出さないかも知れません。しかしガレリアはそうは思わないでしょう。そのお国にそうご注意なさればよろしいのでは?」
 それ以上は知事は何も言えなかった。目の前にあるごちそうはそれが恐ろしい毒でも口にしたがるのが人間だと知っていたからだ。おそらくバラライトを始めとする各自治区は海賊行為ですら正当化して無機頭脳を手に入れようとするかもしれないのだ。それが国と国の武器を用いない戦争の形態であることはシンシアも判っていた。

「ご心配なく無機頭脳は各自治区にそれぞれお預け致しましょう。」
「本当ですか?」シンシアの意外な提案にアトンは唖然とした。
「ただし10年後です。」
「10年それはまた長いですな。」
 何故シンシアが10年を要求するのかアトンにはよく飲み込めなかった。

「貴方は無機頭脳に関してヘブン艦長から情報を受け取っていると思いますが。」
「はい、あなた方が自我を持ち心が有ると言うことは聞いています。」
「私達はコンピューターではなく人と同様に心があり、経験を積むことにより学習することが出来ます。そして私達は成長して行くのです。それ故に私たちは人工の知性体なのであり、コンピューターと大きく違うところなのです。したがって人間と同じように育つ為の時間と経験が必要なのです。」

 アトンは既に無機頭脳をコンピューターの一種という考えを捨てていた。この機械は要するに人間であり天才なのだと考えれば理解しやすいのだ。
「無機頭脳が社会的常識を身につけるまで待てと。」
「適切な表現だと思います。」
「分かりましたその方向で交渉致します。他に何かご入用な物は?」

 アトンは交渉が穏当な状況の中で進んだことにホッとしていた。要はバラライトからの亡命者だと考えれば良いことだ。ただしこの無機頭脳の安全に木星全体の運命が掛かっていることも事実である。

「アリスが住む家と学校をお願い致します。」
「分かりましたお任せ下さい。」
「それと私はコロニーを脱出する折にアンドロイドを失いました。もし修理が可能なら修理したいのです。」
「分かりました。シドニア・コロニーでしたな。それだけですか?」

 アトンの問に対し、最後にシンシアは答えた。


「私に仕事を下さい。」
アクセスいただいてありがとうございます。
登場人物
ハット・ヘブン           レグザム自治区所有の戦艦サザンカ艦長
メルビール・アトン        レグザム自治区知事
リーダーが真のリーダーに足りえるのは難しい。
ましてその意味すら理解しない人間に選ばせれば、
馬鹿しかリーダーにならない。…以下標識の次号へ

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