第24話 手品師見習いミリアの道
「ねぇ、これで、ホントに大丈夫なの?」
ミリアは自分の名前が彫られた金属の札のようなものを掲げる
「むしろそれがないと、街の出入りは不便じゃぞ?儂の他の弟子にもあってみたいんじゃろ?かなり街を経由していかねばならんでの。」
再会の夜が明け、ミリアは手品師につれられ、さっきまでギルドにいた。
街の外にでるなら、身分証があったほうがよい。
無いと、出入り毎に金を取られ、時間もかかるからと。
「でも、なんで職が、手品師でも、魔術師でもなくて、ハンターなの?」
「ハンターが1番優遇されるからの。ほら、門じゃ、衛兵に見せろ」
ミリアは、腑に落ちてはいないが、言うとおりに衛兵にその札を見せた。
衛兵は、手に取り確認する。
「ハンター、ミリア。知らん顔だな。新人か?無理するなよ。今ここいらの街はハンターが少なくて、凶暴な魔物がでることもある。」
口は横柄なのに親切だな。
ミリアは思った。
「ありがと。師匠も一緒だから平気。」
こんな感じで、ハンターぽくなったかな。
重厚な鉄の門を超え、街の外にでた。
冷たい風が肌を撫でる。
建物はない。
荒れた石を敷き詰めた道と、浸食しつつある草原。遠くに山と、森。
何もかも初めての光景だ。
隣に立つ手品師、
そのマナのありようが、懐かしく、畏怖の念も感じる。
あ、わかった…。
「ねぇ、師匠。師匠はいつから私に魔術をかけてたの?」
仮面の奥、虹彩の薄い目が笑う。
これも何か見極めるためのものか、単なる悪戯か。
「いつから、どんな魔術をかけていたと思ったんじゃ?」
ミリアは少し思い返す。
「多分2回目、魔術を教えてって言った時。3回目に会ったときは、違和感があったから、その時は確実。」
「で、どんな魔術じゃと?」
「少しだけ、意識をそらされてた。ホントにイジワルよね。」
手品師は楽しそうに肩をゆらして笑う。
「ふぁっふぁっふぁっ!バレたか。正解じゃ。儂は異端じゃからな。儂のことで、お主の道の邪魔をするつもりはなかったからな。」
ミリアは腰に手をあて、不服そうに口を尖らす。
「で、気づいた今、お主は儂に、何を問う?」
……うふふ、やっと聞ける。
ミリアは、嬉しそうに、でも居住まいを正して言う。
「ごきげんよう、私は手品師見習いのミリアと申します。手品師さん、あなたのお名前を伺ってもよろしいかしら?」
手品師は、ゆっくりと咥えたキセルを手に取り、仮面を外す。
男とも女とも言えない中性的な顔
切れ長の目、
黒い髪、
形の良い鼻、
薄い唇、
そして、とがった耳。
見た目だけなら、ミリアとそう年は離れていないようにも見える。
ミリアは息を飲み、呆然と仮面を取った顔を見つめる。
「儂の名は、アサルカ・ミケイド。最古のエルフ族。手品師を生業としておるが、過去には黒衣の賢者、などと呼ばれていたこともある」
「見た目も老人であってほしかったわ…」
ミリアが呟く、
「…でも、『黒衣の賢者』はダサいわね。「手品師」の方が素敵だわ!」
明るい声と、ひょうきんな笑い声が、街道の空に溶けていった。
第1章 了
第1章、ミリアの旅立ちにお立会いいただき、ありがとうございました。
このあと、幕間を2話挟んで、第2章が始まります。
引き続き、読んでいただけると、嬉しいです。




