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第23話 異端の令嬢

ギースに見えたのは、碧い光を引く銀色の閃光だった。

何かが見えたと思った瞬間、鳩尾に何かが食い込む。


「ガッ!!!!クッ……ハッ!」


身体のなかの空気を全て押し出される

肺が痙攣する、息ができない

肋の骨も折れてる気がする

膝をつき、胸を手で押さえたまま、顔が地面に滑り込む

マナがぶつかり合い霧散していく

身体に纏っていた光属性の身体強化の魔術が解けていった


暗闇でなにも見えない。

でもそこに何かがいる。


そのぶつかって来たものは、息を切らせているが、痛みに呻いている感じはない。


声が出せぬまま、息を整える音のほうを見上げる。


「…こんな暗い中、走ると危ないわよ?ごめんあそばせ」


その言葉と共に、足音が遠ざかっていく。


ふふふ…、負けたよ、ミリア・フレアベット…、次は始末する…


ギースの意識は途切れた。




紙一重だった。

逆の結果になっていてもおかしくなかった。

それにまだ油断できない。


ミリアは、暗い路地を抜け、まだ街灯が灯されている街路を注意深く歩く。

身体が重い、足が震えて一歩踏み出す度によろける。

体力も魔力も疲労を訴えつづけている。

マナの流れだけは感じ続けている、不自然なマナの揺らぎはない。


ふと、懐かしい場所につく。

玉の上に乗る軽業師

華麗な踊りを見せる者

英雄譚を唄う吟遊詩人

歓声、拍手、リュートの音色

でも、いつもの場所にあの手品師はいない。


ミリアは、手品師が立っていたはずの場所に立つ。

ほんの微かな魔術の残滓

そんなものが残っているような気がした。


「私も仮面、つけようかな…」


そうしたら、私も1人も観客のいない手品を披露するのを楽しめるだろうか。


「やめておけ、似合わんぞ。可愛い顔隠すなんて勿体ないじゃろ、ふぉっふぉっ」


何処からか声が聞こえた。

はっとしてあたりを見回す。涙が噴き出す。喉がしゃくりあがり、顔が寂しさと嬉しさと安堵がないまぜになって歪む。


何度振りかえっただろう。

いなかったはずの場所に平然とたっている手品師がいた。


「派手にやったのぅ。街を離れていてもわかったぞい。」


もう消えた花を見上げ、手品師はいう。

「でも、やり過ぎじゃ、力の誇示は軋轢をうむ。異端として追われることは避けられん。」


手品師はその手を頭にのせ、ゆっくりと撫でる。


「じゃが、素晴らしい努力の賜物じゃ。誇らしい弟子をもったもんじゃ、儂は嬉しい。」


ミリアは、涙に濡れ、くしゃくしゃになった顔を隠すように、手品師に抱きつく。


「バカ…。お菓子、ちょうだいよ…」

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