第20話 手品師見習いの抵抗
妙な迫力があるな…さすが、近衛の隊長と言ったところか…。
ギースはライネルを前にして感じる。
「フレアベット卿、王都で異変が起きた。何か存じあげないか?」
「審問官殿、当方、下位貴族とはいえ、このような時間に訪いも無く面会とは、些か礼を欠いているのではないか?」
ライネルは、気怠げにいう。
「フレアベット卿、ここで異端の術が使われたと疑いがかかっている。これは王都の秩序を乱しかねんのだ。知っている事を話せ。」
ライネルは、大きく欠伸をする。実にわざとらしい。
「寝てましてな。騒ぎで起きてみれば、皆が花だ光だと言っておる。私も何が何やら…。」
ライネルの目には何か強固なものがある。これは一筋縄ではいかない。
「では聞く、ミリア・フレアベットはどこだ。」
ほんの一瞬、目が揺れる。…当たりだな。
「適性無しと判別されましたのでな。どこぞの妾になることも、神に帰依することも拒否しましたので、本日、勘当いたしました。今頃、絶望して川に身を投げていてもおかしくないでしょうな。」
嘘…に違いないが…、なるほど、のらりくらりと時間稼ぎか。
「そうですか…。おやすみのところ申し訳なかった。これで引き揚げることにする。」
ほんの少し眉を動かしたライネルを一瞥し、ギースはフレアベット邸を立ち去る。
門を出て、周りを見回すと、貧民区に向かう方角で魔導具の光が上がる。
「捕捉したか!」
ギースは、群衆を抜けるように駆け出した。
ミリアは、家を出てすぐに自分の選択を後悔し始めていた。
これからどうするべきか。
知識では知っている。宿をとるのだ。
知らないこともある。どこに宿があるのか。
比較的治安のいい王都とはいえ、夜に1人で出歩くのは怖い。舐めつけるような目線に、思わず
身を逸らしてしまう。
少しでも治安が良さそうな商業区に向けて歩いていく。
ん…?マナが動いてる…。
そう遠くない場所にマナが収束しているのを感じる。
何か呟くような声。
ミリアの左、マナの流れが歪む。
這うように近づいてくる。
咄嗟に振り向いた。
そして変質。
足が震える、いや地面か!
爆ぜた。
??なんなの!?!魔術!え?どこ!…ッグ!
ミリアは、吹き飛んできた土砂を受けて、壁に叩きつけられる。思考が混乱する。
視界がちらつき、息も苦しい。
「…意外と簡単だったな。異端者ミリア・フレアベット。間違いないか?」
2人の男が倒れたミリアの前に立つ。
ああ、もう来たのか…。
名前を聞かれたことで、ミリアは少しだけ落ち着く。
…異端者…、そういったわね。
ふふ、手品師さんと同じ扱いなのね。
相手は2人、警戒するような足の運び。マナの流れは2人に向いているから、多分2人とも魔術師。武器は抜いてないけど、囲むように立っている。
何かを確認するように、帽子が取れた頭と、顔を確認してくる。
一方で、私は、壁に打ち付けられて、倒れてる。背中痛い、左手も痛い。脂汗が身体中に浮かんで気持ち悪い。喉もカラカラ。
でも、手品は使えるのよ?
右手は動く。いったん身体の痛みは無視する。
中指を素早く2回。
絶対優位と思っていた2人の男は、突如発生した光の奔流に目を潰された。




