第13話 令嬢メイドの脱出
「ほら、早く脱ぎなさいよ」
ミリアは、すでに下着だけの姿になって、仁王立ちで先輩メイドを見下ろしている。
一方で、先輩メイドは恥ずかしさと、ミリアに対する恐怖心で、肩を晒したところで、へたり込んでしまっていた。
『ベッドに』、『声を出すな』を、変な意味で解釈したのかもしれない。
アンナは、顔に手を当てて、はわわわ…と動揺している。目は隠れていない。
「別にあなたには何もしないわよ!その服がいるの!はい!きびきび脱ぐ!」
ミリアは待っていられず、先輩メイドから服を剥ぎ取った。
「ハヒィッ!」
一気にメイド服を取り上げられ、先輩メイドはベッドへ転がるように滑り込む。
「ほら、ベッドに入ってていいから、言った通り、おとなしくしててもらえるかしら?」
そう言ってミリアはメイド服を身につける。
「…あなた…、胸、大きいのね…」
ぶかぶかな胸元に、戦ってもいないのに負けた気がしたミリアだった。
着替えが終わり、髪型も変えて、アンナとともに部屋をでた。
心なしか気分が高揚する。
「アンナ、奥の階段を降りて、裏口にいくわよ。」
そう言って角を曲がろうとすると、行く先の方から、クロヴィスとハンスが向かってくるのが見える。
反射的に壁に寄り、頭を下げた。
冷や汗で背中が滲む。
確か、この作法でよかったはずよね…。
横目にアンナを確認すると同じような姿勢だ。
一歩近づいてくる度に、心臓の鼓動が早まる心地がする。話声が少しずつ聞こえてくる。
「…リアを、外に出すなというのは、父上の命令なのか?」
「はい、早まった真似をしないようにと…」
「それならば、もっと別の道を考えてくれれば…」
二人が前を通り過ぎていく…。
ミリアは、生唾を飲み込み、緊張をとく。
「行くわよ、アンナ」
アンナに声をかけ、足早に階段を降りていった。
「ハンス、新しいメイドをやとっていたのか?」
クロヴィスが振り返った時にはもう、ミリアはそこから離れていた。
裏門に向けて歩いていくミリアは、立哨する使用人をどうやって躱すか思案する。
さすがに顔を見られるとバレてしまう。かといって、顔を隠して通ろうとすれば怪しまれる。
いい案が浮かばない。
もう裏門に着いてしまう。
その時、アンナが窓際に置いてあった花瓶を取り、抱えて先に駆けていった。
「アンナ!」
何をする気なのか、慌てて追いかける。
裏門の前にでたとき、アンナが不意に転んだ。
転ぶ瞬間に目が合う。
アンナの目が「行ってください」と語りかける。
周りを鋭く切り裂くような硬い音が響いた。
「ああああ!ごめんなさい!」
アンナの叫びと惨状に立哨する使用人が駆け寄る。
ミリアは胸を押さえ、涙を堪えながら裏門を抜けた。
「ごめんなさい、ありがとう、アンナ!」




