第12話 発動しない魔術
寒い…
ミリアは肌寒さを感じ、覚醒する。
どうやら、かなりの時間、眠ってしまっていたらしい。もう、外は真っ暗になっている。
倦怠感はすっかりなくなっているが、空腹であることを抗議するかのように、お腹がなる。
「何か食べなきゃ…だけど暗いわね。」
手さぐりで手持ち用のランタンを取りにいこうとして、ふと、思いついた。
「マナを集めることまでできたなら…」
魔力に意識を集中し、右手の中指を回す。すぐにマナが集まり煌めく、が、本当の光ではないのか、部屋は明るくならなかった。
「精神のありようでマナを変質させる…」
マナが光り出すことを、ミリアは念じる。
「………、何も起きないじゃない!」
精神のありようってなんなの?
手品師の言ったことを思い出すが、ここから先はそれしか言われていない。
何でもいいとばかりに、水よでろ!風よふけ!火よ屋敷を燃やし尽くせ!等と念じる
掌のマナは何の反応も見せることなく煌めいている。
試行錯誤の夜は更けていく…
翌朝、ミリアの顔にはしっかりとした隈が浮かんでいた。あれから、何度となく試したが何も起きなかったのだ。まあ、屋敷が燃えても困るが。
やはり、また手品師に聞かなければ…
そんなことを考えながら、朝食を食べていた。
給仕するアンナが沈んだ顔をしているのに気づいた。
「アンナ、どうしたのかしら?そんな悲しそうな顔をして…」
もしかして、昨日の外出のことで咎められたのだろうか。アンナは顔を上げ、薄く涙が覆った目でいう。
「同じ部屋の先輩に、お菓子…、半分とられました…。」
杞憂だった。
まぁ、また貰いにいこう、と、頭を撫で慰めた。
さて、今日も行くか、とアンナを伴って外に出た時、普段とは違う光景を目にする。
見回りの数が多い…。
裏口にも立哨する使用人がいた。
明らかに、ミリアが抜け出すのを防ごうとしてる。こっそり逃亡するとでも思われてるのだろうか。
出て行くなら、堂々と表から出てやるというのに。
一度、自室に戻りしばし考える。
「アンナ、あなたの同室の娘、ここに連れてきて。」
アンナは、パタパタと軽快な音をたて、駆けていった。どこかで怒られなければいいが…。
しばらくして、アンナともう一人のメイドが部屋にきた。
よし、今から私は我儘悪徳令嬢…。
「ねぇ、ちょっと。あなた、私がアンナにあげたお菓子を取り上げたそうね…」
アンナともう一人のメイドが、硬直する。
「せっかく私が、アンナに用意したものなのに…。アンナ、泣いてたのよ?私、悲しくなってしまったわ…。」
睨みつけると、肩が震え、ヒッ、と甲高い息を飲む音がした。
ちょっと圧をかけすぎたか。
「これから、私の命令をきけば、罰は無しにしてあげるわ…。」
「はっ!はいっ!申し訳ございません!な、何でも、申し付けください!」
メイドは深く頭を下げる。
「…。そのメイド服を脱ぎなさい。そして私が戻ってくるまで、ベッドに潜ってなさい。声を出すことは許しません。」




