第11話 休息は甘味とともに
隣の女の子の歩調に合わせて歩く…
いや、強がってない、断じて!
私は私のペースで歩いている。アンナが早いのだ、お菓子を貰って浮かれているんだ。そのうちバテるから、私がペースを制限しているのだ。行きは置き去りにされそうになって、ベソかいていたのだから。
「ミリアさま、だいじょうぶですか?お疲れなら、少しやすみましょう。」
アンナに気遣われてしまった。泣きそう。
手品師のところで、魔力が何であるのかを身に叩き込まれた反動か、全身に倦怠感がつきまとっている。
筋力と魔力は別のはずだが、一向に言うことを聞かない。足を前に出す度に、腕を振る度に痛みを伴って、軋むような音を立てているようにも感じる。
今まで魔力で体を動かしていたに違いない。
まだ、正午くらいだというのに、とてつもなくお腹が空いてきた。
そういえば、ここには食べ物があるではないか。
「アンナ…。貰ったお菓子、何か一つくれない?何でもいいから……」
「は、はい!……」
アンナは手に持っているお菓子を吟味し始める。どれならあげても惜しくないかを選んでいるのか、真剣な表情だ。
「これ……どうぞ、ミリアさま」
アンナが差し出したのは、メレンゲクッキー3個だった。
あまりお腹にたまらない気がしたが、今この場では、食べ物を持っている者が一番偉い。アンナ様が下げ渡してくれたのだ、ありがたくいただこう。
貴族令嬢としては、はしたないと思うが、空腹には勝てない。立ったままクッキーを口にする。
口に入れると、サクっと音を立て、軽い歯ざわりと共に、溶けるように染み込んでいく。
ほのかな甘みが優しい。
心なしか、疲労感が和らいでいく。
とりとめもない思考が整理され、足取りも少し軽くなる。
疲れた時には甘味が一番ね。
そう呟き、家に向かって足を進めた。
アンナは慌てて、早足でミリアを追いかけた。
フレアベット邸では、使用人達が駆け回っていた。どうやら、ミリアが家を抜け出したことがバレたらしい。
ミリアとアンナは何食わぬ顔で、裏口から入り、手入れがされ、今まさに咲き誇っている花壇を眺めている風を装った。
「ミリア様!」
ハンスが駆け寄ってきた。だいぶ探し回ったのだろう。息が上がっている。
「どこに…おいででした…か?」
ちょっと悪いことしたかな?と思いつつも、神妙な態度で誤魔化す。
「気分を落ち着けるために、お花を見て回っていただけよ…。ちょっと…、疲れたから、部屋で休むわね…」
そう告げて、その場を離れ自室に向かった。
怪訝な顔のハンスを残して。
屋敷に入ると、どうしたのかと聞いてくるメイドたちを誤魔化して、階段を登る。地味にきつい。
自室に入った瞬間
「もう限界…」
慌てるアンナを尻目に、ベッドに倒れるように飛び込んだ。




