第10話 魔術の煌めき
感覚的にわかっている…
この手品師は仰々しく、そう言った。
……いや!こんなのでわかるわけないじゃない!ちゃんと、わかるように説明しなさいよ!
ミリアは、頭の中で抗議する。
まだ身体が動く気がしない。膝が震えている。目に写るのは揺らぐような空気を纏った手品師。
その手の中にある、紙に包まれたマナ鉱石の異様な引力。
ふと風ではない、何かが肌、いや身体を通り抜けていく。
感じるがままに、通り抜けたそれをかき集めてみる。
「……、わかるわね……」
昨日、手品師が魔術を使う手順を見せてくれたことを思いだす。確か……
重く感じる手を持ち上げ、胸の前に掲げる
「魔力でマナを集め、成形し……」
揺らめくマナが掌の中で煌めく。
できた…、と気が抜けた瞬間、霧散していった。
「難しいわね……」
再び試す。
ある程度集めることはできるが、形を整える前に霧散していってしまう。
もどかしい。何かコツがあるのか。
顔を上げ、やり方があってるのか、正解がほしくて手品師を見る。
仮面から覗く目が、優しく微笑んだ気がした。
「ほんとに優秀じゃな。ちゃんと憶えておったか。」
手品師は、よいしょっと膝を曲げ、ミリアと視線の高さをあわせ、続ける。
「何でもいい。何かの身体動作と一緒にやるといい。魔力を意識しやすくなる。」
身体動作か…。
正直動くのは億劫だ。なら、小さく、でもイメージしやすい動作を。
ミリアは、再び魔力に意識を集中し、胸に掲げた右手の中指を、クルッと回した。
「できた…」
掌の上でマナが煌めく光とともに綺麗な球体となってまとまった。
目の前から、ぼやくような声が聞こえた。
「ありゃぁ……儂のお気に入りの動作…、とられた…」
ふふっと笑いが溢れる。気が抜けてマナが微かな光を残して霧散した。
名残り惜しく掌を見つめる。
手品師の荒療治によって鋭敏になった感覚は、周囲のマナの存在を知らせる。
……ほんとうだ、世界はマナで溢れている…。
目を閉じていても、マナの濃さと動きがわかる。ひときわ大きい2つの塊は、マナ鉱石と手品師だろう。
離れた貴族街で、マナの収束や霧散するのも感じられる。誰かが魔術を使っているのかもしれない。
……すごいわ、これ……
「感慨に耽っておるところ、悪いがの。」
いつの間にか、手品師はアンナを連れている。
アンナは、手にいっぱいのお菓子を持って、困惑しているが嬉しそうだ。視線が、お菓子と手品師を行ったり来たりしている。
「今日はここまでじゃ、帰ってはよ寝ろ」




