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赤いクラゲと天使  作者: 鈴原 仁
2/4

いつかが来るのは突如だった

次の日

 

「みんなが使えるリヴェロンっていうのは、今から80年前の研究で生まれた戦争の副産物で、・・・」

 

今日は通常の授業だ。昼ごはんを食べ終えて眠たいが寝ないように耐えている。

 

日本史の担当教師は金森先生だ。

 

金森先生はリヴェロンの歴史をたまに雑談に入れてくる。

 

もう2か3回は聞いた気がする。

 

思わず欠伸をして空を見た。早く刀研究部に行きたくてソワソワしている。

 

「神門くん?聞いてますかー?」

 

「はい!」

 

「終礼がおわったら職員室にきて下さいねー。あとでお話があります。」

 

「えぇー。」

 

ちょうど終わりのチャイムが鳴った。まるで狙いすましたかのようだ。


(めんどうだなー)


とりあえず終わりの挨拶をした。

 

「運が悪かったな」

 

「先生俺のこと見すぎじゃない?」

 

「気にしてくれるんだろ」

 

「そうかなー。ただ厳しいだけな気もするけど。」

 

信哉はバカな俺とは違って頭がいいから楽観的なのがムカつく。

 

自分も頭がよかったらこんなに苦労しないのにと思う。

 


終礼が終わった。先生は来ないと言っていたのでテキトーだった。

 

胡桃坂と信哉にお先にと言って職員室に向かった。

 


職員室と言っても生徒数の多さからひとつの校舎が丸々職員室になっている。


「えっと金森先生は3階だったはず。」

 

1年生の教室はは3階にあるからそのまま連絡通路を渡って職員室に入った。

 

「金森先生いますか?」


金森先生はすぐ近くにいたので気付いて駆け寄るのも早かった。

 

「神門くん。ちょっと別の教室行こっか。」

 

ついて来るように促されたので後ろについて行った。

 

 

小さな教室に着いた。入れて10人くらいの補習室だった。

 

「単刀直入に聞きます!神門くんは執行者を目指していますか?」

 

金森先生は真剣な眼差しでこちらを見た。

 

「ええ、もちろんです。そのためにこの学園に入ったんですから。」


「でも、神門くんは進化細胞の覚醒はおろか、リヴェロンも使えないですよね?」

 

核心を着く質問が心に刺さってきた。

 

この質問で、この間書いた進路希望表のことを言っているのだと確信したが、本当のことなので言葉に詰まる。

 

「いや、でももしかしたらがあるかもしれないですし。普段から鍛えてるから力もありますよ!」

 

「でもね、神門くん。執行者になるってことはこの国のためもっと言えば、君の進路希望先の治安維持部門は能力が使えるのが前提なんだよ。それだったら民間警察官を目指したほうがいいと思うの。こんなこと言うのは嫌なんだけど現実を見て。自分の理想がなんでも実現するわけじゃないのよ。」

 

先生は優しい。それにお人好しだ。俺のこともよく気にかけてくれる。

 

だからこそ先生が自分からこんなことを言うのは嫌なはずなのに・・・。


金森先生の言葉をまにうけてうつむいた。

 

そして、力を持たない自分を呪った。

 

「けど先生。時間はまだありますよね?2学期にある学園対抗大会まで待ってくれませんか?それまでにリヴェロンを発現させますから!」


自分に課す最後のチャンスを提案した。

 

自分でもらしくないほど真剣だった。

 

学園対抗大会は2学期に行われる東西学園対抗の大会のことで、東原学園とついになっている西島学園で対抗戦を行う。

 

生徒は力量を<善の執行者>にアピールしてリクルートを狙いそして、学園同士で親睦を深めることを目的としている。

 

「ふぅー。もう何を言ってもダメなようですね。気持ちは伝わりました。──でも、期限はそれまでです。もし、それまでに成長が無かったら、諦めて就職のための勉強をしてもらいますから。」


こちらの提案を飲んでもらって喜んだのは勉強という言葉を聞くまでの数秒だった。

 

「えっ?就職のための勉強って、ご冗談ですよね?」

 

「いいえ。ほんとです。神門くんはあんまり言いたくないですが、頭がちょっといい方ではないのでお友達の信哉くんを超えるくらい頑張ってもらいます。」

 

まさか金森先生から頭が悪いと言われるとは思わなかった。

 

それだけならまだしも就職勉強で信哉を超えろって?

 

(無理ゲーすぎる。)

 

自慢じゃないが頭の悪さはクラス1だ。

 

だが、定期テストでは赤点を取ったことはない。

 

土壇場で頭が回るタイプなのだ。


けど、もう引き下がれない。

 

「分かりました。2学期には成長した姿を見せてあげますよ。」

 

「期待してます。」

 

先生はにっこりと笑って先に部屋を出ていった。




 


教室に戻り、荷物を持って部室に向かった。

 

やはり遠い。自転車でも買おうかと思った。

 

昨日と同じようにけもの道をたどった。昨日通ったせいか見やすくなって助かった。




部室周りの地面がキラキラ光っている。なんだろうか。

 

「なんだよこれ──」

 

ガラスの破片が辺りに飛び散っていた。また、向かって右側のガラスだけが割れていたのがより気になった。

 

割れた箇所から入るのは危ないので正面から入ることにした。

 

扉は無事なようだが開いたままだった。


室内では倒れている人影がすぐに目についた。

 

「近衛先輩!大丈夫ですか!」

 

近衛先輩は向かって右手に飾ってある刀の間で倒れていた。

 

右腕から血が出ていた。刀で切られたような傷口だ。


周りを見渡すと、昨日とは違い全ての刀が透明な箱に液体とともにに入っている。

 

血と液体の混ざった床が争った後を写している。

 

「う・・。神門・・くん?」

 

「先輩!気がついたんですね。すぐに助けを呼びますから!」

 

「いや、その前に・・私を・・ここから出して。・・あいつが来る!」

 

近衛先輩は震えていた。まるでなにかに怯えるように。

 

持っているサブバックからスマホを出した。

 

「あいつって誰ですか!もしかして先輩にこんなことした──」


 

突然、左肩に激痛が走る。


思わず右手からスマホを落とした。

 

「あ゛あ゛あぁぁぁぁぁーーー!」

 

痛い。痛くてたまらない。

 

思考が出来ない。

 

「はあ、はぁ、はぁ。」

 

呼吸が荒い、血が沢山出ているのが分かる。

 

肩を触ったが何も刺さっていない。突然縦に傷ができた感じだ。

 

ザッザッザッ


こちらに向かって誰かが歩いてくる。

 

「助けを呼ばれると困るんだよ。で、いいかげん早く刀の場所を教えてくれないかな?じゃなきゃ君の大事な後輩が目の前で死ぬ事になるよ。」

 

痛みが続くが、振り向いて声の主を確認した。

 

大きな男だ。武骨で力強い覇気を感じる。

 

既に抜刀し、右手に刀を持っている。

 

本物の殺意に圧倒されて、動けない。

 

「お前のような・・やつにっ、教えるわけが無いだろう!」

 

先輩のいかれる声が聞こえる。

 

「そうかい。じゃあこれでどうかな?」


「やめろ!神門くんに手を出すな!」

 

大男は刀を振り下ろした。

 

「神門くん、逃げて!」

 

大男が構えた瞬間光る刀身が頭上から反射して見えた。

 

その時、反射的にけ反った。

 

ザシュッ

 

何かが切れた音が聞こえた。

 

それが何か、すぐに分かることになった。

 

「ぐぅぅぅぅぅあ゛ぁぁ。」

 

左肩から一直線に切られた。

 

だが、臓器には達していなかったらしく出血が多くはない。

 

肩の痛みとは違いズキッと強い衝撃を受けたような鋭い痛みが体の中心からひびいた。

 

「ほお、反射的に身体を後ろにやって致命傷を避けたのか。だが、次はない。リヴェロンで確実に殺す。」

  

大男が何か言っているが聞き取れない。痛みがまさっている。

 

だが、俺を殺すのだと察した。

 

「はぁ、はぁ、なあ、教えてくれ。なんでこんなことするんだ!?どうして先輩を狙うんだよ!」

 

血が減ってきているせいか意識が少し朦朧もうろうとしてきた。

 

「そうだな。殺す前に特別に教えてあげようか。俺は上からの命令で、ある方の刀を破壊しに来たのさ。」

 

「なんで・・刀なんかを?」

 

「刀ってのは力の痕跡なのだよ。刀は作り主にリンクしている。つまり刀を解析すれば作り主の情報を知ることが出来る。」

 

「つまり、情報を知られちゃまずい人間の刀がここにあるって事か。」

 

「そういうことだ。知りたいことは分かったろう?すぐに楽にしてやるよ。」

 

大男は再び構えた。今度は確実に殺すためにリヴェロンを使うのだろう。

 

 

目を閉じて死を覚悟した。

 

 

「待って!あなたが欲しい刀の場所は黒板のすぐ右にある物よ!・・これで神門くんを殺す必要はないでしょ!?」

 

近衛先輩の声だ。刀の場所を叫ぶように教えている。

 

近衛先輩はある程度回復したらしく、俺に膝枕をしてくれている。

 

こんな時になんだがとても柔らかい感覚が伝わって、なんだか気持ちいい。

 

殺されそうなのに心は何故か落ち着いている。

 

「その情報は正しいのかい?君が嘘をついている可能性もあるだろう?」

 

「こんな状況で嘘なんかつくわけないでしょ!」

 

大男は黒板に近づき刀の入った箱を壊し、刀を持った。

 

大男は自らが持つ刀と同時に十字になるように刃を重ねた。

 

刀同士がぶつかる音がした。

 

すると、突如強い風が部室に吹いた。

 

「ふむ、私のリヴェロンを拡散させるこの能力は確かにあの方のものだろう。」

 

大男は近衛先輩に刃を向けて、刀を差し出した。

 

時間固定タイムロックを解除してもらおうか。時間がないのでね。」

 

近衛先輩はゆっくり、ゆっくりと刀に手を伸ばした。


「どうした?早く解除するんだ!」

 

この男は刀の消滅を確認した瞬間に俺たちを殺すつもりなのだろう。


(死ぬならせめて近衛先輩を守りたかったな)


死を悟り、急に身体の力が抜けた。




『ねえお母さん。』


男の子は上を向いて話しかけたが“お母さん“らしき人の顔はよく見えない。


『なーに?治くん』


『どうして僕はみんなと違うの?』


『さあねえ、お母さんにはわからないけど、そんなことは気にしちゃダメよ。みんなはみんな、治くんは治くん、そうでしょ?』


『うん、でも僕もみんなみたいな力が欲しいよう』


男の子は少しべそをかいた。


『じゃあ、お母さんがおまじないをかけてあげよっか!』


男の子はおまじないと聞いて顔を上げた。


すると、“お母さん“が急に抱きしめてきた。


『ねえお母さん、苦しいよう』


急に左肩に痛みを感じた。


『はい!これで終わり!』


『なんか、こっちの方からチクってしたよ。』


男の子は左肩を指差した。


『いつか治くんが誰かを守りたい!とか救いたい!ってなった時にお父さんみたいに守ってあげれる?』


男の子は急な質問に戸惑ったが、すぐに返事をした。


『もちろん!僕がみんなを守るんだ!そんでもって父さんを超えるんだ!』


男の子がそう言うと“お母さん“は微笑んだ────









ビキビキッ


右手から血が絞り出されるような感覚がした。

 

(痛っ!・・・これが・・・抜刀か)


右手を見ると薄い灰色の刀を持っていた。黒さがない未熟な刀だ。


近衛先輩は既にリヴェロンを解除したらしく大男は刀を床に突き刺して朽ちる瞬間を待っている。

 

今だ!このタイミングしかない!

 

迷わず男の身体に向かって刀を突き刺した。

 

刀は薄い灰色をしていた。

 

「なっ」

 

大男は突然のことに驚き、呆然としていた。

 

それを見逃さず先輩を連れて外に出た。

 

もう既に夕暮れで空が赤く染っていた。

 

少し薄暗い。

 

ここに来る前職員室の時計は5時くらいだった。

 

先生との会話とここまでの移動時間とさっきまでのやり取りの時間を考えると今は6時30分くらいだろう。

 

(血を絞り出す感覚)

 

再び抜刀したが、さっきの薄い灰色の刀とは違い純黒の黒刀が現れた。

 

いや、そんなことはどうでもいい。

 


先輩は昨日理事長が来ると言っていた。


だから、とにかく今はあいつを何とかして足止めしなければならない!


この場所に絶対(とど)めなければ!

 

部室から刃のようなものが飛んできた。

 

刀を横に向けて受け止めた。

 

「くっ」

 

刃ひとつに押される。

 

リヴェロンの攻撃1撃で格の差が分かる。

 

あの男はヤバい。

 

「はあああぁぁぁ!」

 

刀に力を込めると刃は吸い込まれるように消えていった。


すると刀はひびが入りピキピキッと音を立てた。

 

「なるほど。吸収ストレンジとはまた珍しい能力だがまだまだ未熟だ。まるで発現したてのように脆い。」

 

あの男が部室から出てきた。


「せっかくのレア能力も使い手が弱いと形無しだな。」


大男は軽く笑った。


そして、こちらをみて何かに確信したように訪ねてきた。


「その顔、面影がある。もしかして暴食鬼と呼ばれたあの男の息子か?」

 

「親父を知っているのか?」


「やはりそうか憎らしいその目がそっくりだ。虫唾が走る。」

 

「親父とどんな仲か知らないけど、息子ってことで見逃してくれるとありがたいんだけど。」

 

武者震いが自然に起こる。

 

「私にそんな慈悲はない。むしろ殺す理由が増えたから感謝したいくらいさ。だからこそすぐに終わらせてやろう。こちらはついさっき目的を達成したばかりでね。あとはお前たちを始末して帰るだけだ。」

 

目的を達成したということは刀が消滅したということか。

 

(正面だとさっきみたいに力で押される。ここは一旦先輩と逆の方へ逃げるべきか。)

 

一度先輩の位置を確認して左方向に走り出した。

 

大男が刃を放つ。今度は2本だ。

 

後ろで木がなぎ倒される音がする。

 

本気だ。殺しに来ている。

 

大男は次々と刃を放ち辺りの木をなぎ倒す。


 

(ちっ、こう薄暗いと狙いが定まりにくい。距離を詰めるか。刃を吸収して戦わないところを見ると使える回数に制限があるはずだ。そこを突く。)


大男は刀を持ち替えて剣劇に戦いを切り替えようとした。


 

刃の雨がんだ。


多分あいつが来る。


予想通り大男は構えたまま突っ込んできた。

 

無我夢中で刀を交える。

 

突進の力も加わり圧倒される。


(まずい!)

 

大男の刀が光る。

 

刀に力を込めた。飛ぶ前の刃を吸収した。

 

刀が悲鳴をあげたように甲高い音を発してひびが全体に入った。


っつ!

 

右足で腹を蹴られて後ろに大きく吹き飛んでいった。

 

また刃が飛んでくる。これ以上吸収すると刀が壊れる予感がした。

 

刀が壊れれば死だ。

 

横向きに飛んでくる刃を上に払った。

 

刀はまだ原型をとどめているが刃がえぐれた。


真後ろの大木が倒れてくる。

 

身を翻して避けた。



「ちぃ!クソ!」


大男も身を翻した。



倒れた大木は部室を巻き込んだ。


大男の姿がない。

 

どこだ──右方向に近衛先輩が見える。


近衛先輩がヤバい!

 

予想通り大男は近衛先輩に刃を放っていた。

 

身体が動かない。

 

身体は既に限界だった。

 

カキンッッッ

 

放たれていたはずの刃が消えていた。

 

そして、そこにはどこか大人びた少女がいた。

 

「遅くなって済まない。ここからは私に任せなさい。」

 

美しい。少し暗くて見にくいが、白く長い髪がなびいて凛々(りり)しい顔が見えた。

 

「クソ!もうアンタが来ちまったか。」

 

大男は何故か悔しがっている。


大男の知り合いのようだ。

 

「久しぶりだな霧島きりしま。ボスは元気か?」

 

「はっ!俺たちを裏切ったお前が何を偉そうに。」

 

「それは昔の話だろう?今となっては古い話さ。」

 

「黙れ!お前はボスから──」

 

突如大男の腹が裂けた。血が辺りに飛び散る。


大男は血を大量の血を出しながら倒れた。

 

「ふう。これで一件落着。」

 

少女は既に刀を消滅させ、近衛先輩に駆け寄っていた。

 

見えなかった。

 

あの大男を殺す瞬間を。


だが、物凄い実力者なのは素人でもわかる。

 

バタン

 

ここで意識は途切れた。

 

後で聞いた話だと死んだあの大男はこの学園の卒業生だったらしい。

 

<善の執行者>治安維持部門に入隊してすぐに退職し、行方が分からなかったとか。

 

さまざまな謎を残したが俺は『いつか』がやってきたことに感謝するだろう。

 

目覚めた時に。

 


 

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