第36話 東京壊滅作戦
10月5日、火星革命軍親衛隊GHOSTは、前哨戦として火星第三住居区・ロンバルダを攻撃し、敵軍の勢力弱体化と降伏させる事に成功した。
しかしながら、隊長のアンフォーンはこの結果に満足していたものの、やはりどうしても気になっていたことがある。
それが、ブレイダー隊の存在だ。
彼らは、アンフォーン達にとって目の上のたんこぶのようなものと思っていた。
「地球政府軍を叩くのであれば、まずは厄介な輩どもから片付けておかないとな……」
「アンフォーン中佐、やはりあの連中が気がかりなようで……」
「ガウル…、よく来てくれた。他の部下も呼んでくれ。これから作戦会議を行う」
「分かりました……」
そして、他の部下が集められ、作戦会議が開始された。
「今回の作戦では、日本政府軍本部を狙う。ここに大量の人員を用いて奇襲を行う事になっているが、指揮は我々が行うぞ。そして、肝心の作戦内容だが、まずは圧倒的火力で敵を圧倒し、敵を少し倒した所で次に、敵軍のレーダーをハッキングし使用不能にする。そしてその間に全員で、慌てている残った敵を全滅させるという訳だ。ちなみに、その間には施設を破壊していく予定だ」
「なるほど……。で、それを行うのはいつでしょうか」
「明後日だ。明日では流石に準備が間に合わんからな……。バルファー、他に聞きたい事はあるか?」
「いえ、大丈夫です」
バルファーは軽く頷いた。
「他に質問がある者はいるか? いるなら手を挙げてくれ」
アンフォーンが周りを見渡すが、手を挙げる者はいなかった。
「分かった。作戦内容をしっかり理解した所で、作戦の準備を行うとしよう」
「了解!」
部下全員は、一糸乱れぬ動きで敬礼を行った。
その一方、革命軍が秘密裏に作戦を計画している事をまだ知らない鎧達五人は、各々で思うままの時間を過ごしていた。
鎧は、いざという時の戦いのために仮眠をとっていた。
その最中、リックが彼の部屋に入って来る。
「鎧さん……、寝てるな……」
すると、リックに応えるかのように鎧は目を覚ました。
「なんだ……、リックか」
鎧は開けたばかりの目を擦る。
「もうすぐ昼食の時間だからさ。呼んできたんだ」
「そうか……。ということは二時間ほど寝ていたことになるな。よし、食堂へ向かうか……」
そして二人は、昼食を食べに食堂へ行った。
二人が食堂に向かうと、そこで省吾達三人と偶然居合わせた。
「省吾、美奈、アンナ、奇遇だね。まさか隣のテーブルになるとはね」
「とりあえず……、飯を食べ始めようじゃないか……」
五人は、昼食を食べつつ話をしていた。
「そういえば、亮さん達、あれから元気にしてるんですかね……。音沙汰が全く無いですけど……」
省吾はどこか心配そうな表情をしていた。
「少なくとも大丈夫だと思うわよ。もし何かあったら、江川長官が何かしら言うだろうし…」
アンナは今の状況を前向きに捉えていた。
「私はちょっと心配ね……。何しろ何も連絡を寄越さない訳だし……」
「美奈、それはもしかしたら戦闘で忙しいから
なんじゃないかな?」
省吾は連絡が来ないことに何らかの理由があるのだと捉えており、そうでなければおかしいと思っていた。
「まぁ……、心配することはない。彼らなら元気にやっているだろう。いつか連絡が来ることを気長に待っていよう……」
鎧は、三人を安堵させようとした。
彼もまた、亮達が無事であって欲しいと思っているのだ。
特に彼が気にしていたのは、玲のことである。
彼女は自分が愛している存在だからだ。
「とにかく、亮達はきっと無事に帰って来れるはずだよ。あの四人はどんなに過酷な戦況でも、必ず生還して来た。今まで行動を共にして来た僕達が証人じゃないか。亮達を信じよう……」
「うむ、確かにその通りだな、リック……」
彼らは、仲間の無事をひたすら祈るのだった。
そして翌日、既に革命軍の機動艦隊は火星圏を離脱し、刻一刻と地球に近づいていた。
「何としても……、何としてもやってやる……!」
アンフォーンは拳を強く握り、感情の昂りを抑える。
「中佐、この作戦を必ずや成功させて見せましょう」
ガウルはアンフォーンの元に近寄り、ニヤリと笑う。
「あぁ、そうしなければ我々のプライドが許さんからな」
「まさしくそうですね。我々は革命軍の中でも指折りの戦績を誇る部隊ですからね。奴らを必ず駆逐しましょう。そうしないと我々の」
アンフォーンは、それを聞いてゆっくりと頷いた。
ガウルに和まされた事もあり、先程よりもアンフォーンはどこか穏やかな表情になっていた。
「とりあえず……、作戦内容の再確認をするが、他の奴もいいか?」
「はい、いいですよ」
彼らは、念には念を入れて作戦内容のチェックを行うのだった。
やがて、地球圏へあと少しという所で到着する頃、
アンフォーン達は出撃準備を行っていた。
「さて、武装は全て装着されてあるな……。見る限り大丈夫そうだが……」
「アンフォーン中佐、機体の動作の方も大丈夫そうです。いつ出撃しますか?」
バルファーは、心なしか少し焦っているように見えた。
「出撃するのはもう少し地球に近づいてからだ。まぁ、上空2km圏内程度といったところか……。だから、もう少し待っていてくれ」
「了解です」
そして彼らは、出撃の時を待った。
それから一時間程経過し、ついに日本政府軍が革命軍撃退のために動き出した。
鎧達は大至急出撃し、敵部隊を迎え撃つこととなる。
「よし……、行くぞ!」
“了解!”
鎧たちに続いて、リック達四人が群がる敵に立ち向かう。
“鎧、俺達も同行しよう!”
「八島少佐、ご協力ありがとうございます」
そこにさらにヤマト隊も加わり、こちらが有利になるかと思われた。
「馬鹿め! かかったな!」
アンフォーン達は装備している機銃やバズーカを用いて集中砲火を行い、基地周辺の施設を見境なく破壊し、周りにいた地球軍の機動部隊も次々に撃墜されていく。
「まずいッ! ウワァァッ!!」
「何て火力なんだ……、あっ、やられるッ!」
鎧よりも早く敵の元に接近していた部隊は撃破される。
“鎧、少し下がった方がいいぞ”
「分かりました!」
八島達は、一旦引き下がりながら攻撃するように
鎧に指示を行った。
「何だあの連中……、凄い数だ……」
八島は襲撃して来た敵の数に圧倒されつつあった。
そんな中、思いもよらない事態が起こった。
「ん……、何かおかしいと思ったらレーダーが使えない! 何があったと言うんだ!」
鎧は思わず焦燥に駆られ、操縦桿を握る手を震えさせる。
“鎧さん、こっちもレーダーが使えないよ! もしかすると何者かが手を加えたんじゃないかな?”
省吾も小型艦のレーダーが使えず、驚いていた。
「手を加えた……、とすると、内部の人間がやったのか?」
“いや、内部じゃなさそうだよ。恐らく、革命軍がやった可能性が高いだろうね”
「何!? だとしたらハッキングか……。それは困った……」
思わず頭を抱えそうになる鎧。突然の出来事に錯乱状態となったのか、操縦がややおぼつかなくなる。
“鎧、慌てるな! カメラアイを使って目の前の敵を倒す事に専念しろ!”
「了解です、八島少佐!」
しかしながら、レーダー無しでの敵への攻撃は難航した。だが、少しずつは撃墜出来ていたため、一概に悪いとは言えなかった。
「手応えはなくもないが、イマイチ釈然としないな……。ま……、待てよ? アイツら、司令部の建物も破壊しようとしているぞ! 早く撃墜しないと、ここは基地として機能しなくなる! 八島少佐も!」
“分かった……。お前達も行くぞ!”
“了解です!”
彼らは、急いで基地中枢エリアへと向かうが、その道中を見る限りだとかなり荒らされているようで、鎧達はそれを見て心が傷むも、そんな暇は無いと思って現場へと駆ける。
「いたぞ! 皆、逃がすなよ!」
八島は意気揚々と指揮を執る。
“任せてください!”
ヤマト隊は後方から攻撃を行い、司令部を狙う敵部隊を撃墜していった。
「なんてこった! 機体が爆発する……」
敵機は光弾を喰らい、爆発四散していく。
“鎧、敵が逃げようとしている。追撃するぞ”
「分かりました」
鎧はビームライフルで残った敵を確実に仕留めていった。
そして残り一機となり、鎧は高速ホバー走行で追い詰め、刀で斬りかかった。
「てやァァッ!!」
素早い動作で敵を袈裟斬りにした鎧。
彼は安堵するも、まだ別のエリアには敵がいると知り、即座にそこへと向かうことを決意した。
一方、アンフォーン達は補給基地の護衛部隊を殲滅し、手当たり次第に基地を破壊していた。
「日本政府軍を壊滅させるためにも、ここまで追い打ちをかけてやらないとなァ!」
アンフォーンはガスタンクを破壊し、気がつけば辺りは荒れ地と化していた。
しかし、そこに鎧たちが駆けつけた。
「くっ……、遅かったか。リック、アンナ! 攻撃頼む!」
“了解! 任せておいてくれ”
“分かりました”
「美奈と省吾は、援護射撃をしてくれ」
“私達に任せて下さい!”
“僕らがやってみせます”
二人は自信満々な表情をしていた。
“鎧、俺達も忘れないでくれ”
「八島少佐も援護お願いします」
“分かった……。部下にも伝えておく”
こうして、ブレイダー隊とヤマト隊は掃射を開始した。
「あれが噂に聞いた親衛部隊か……。倒してやる!」
鎧は急速に接近し、アンフォーンに斬りかかった。
「かかったな! 馬鹿な奴め!」
アンフォーンはアームドブレイダーに目掛けてグレネードを投げ、一時的に鎧を怯ませる。
「ウワァッ!! なんて奴なんだ……。ならばクナイで!」
鎧はクナイを四本投げて、アンフォーンに軽く
ダメージを与える。
「くっ……、右肩部にダメージか……。だがこんなもので怯む訳にはいかんのだよ」
しかし、アンフォーンが動こうとすると、八島達がそれを許さなかったのか、援護射撃を喰らい足止めされる。
「何をッ!! ならばこっちも応戦してやろう! ガウル! バルファー! 他の部下を率いて奴らを包囲するぞ!」
“了解!”
アンフォーン達は敵である鎧達を包囲しようとするが、美奈と省吾が全砲一斉掃射を行い、何とかそれを阻止する。
「邪魔者め! ゼイラン、あの後ろの小型艦を叩け!」
“分かりました……”
アンフォーンの部下の一人、ゼイランはビームバズーカを巧みに用いて、小型艦の砲台を潰していく。
「まずい! 砲台が二箇所やられた! アンナ、済まないがバズーカを持ってる奴を撃墜してくれないか?」
“分かったわ、省吾。やってみせる……”
彼女は操縦桿を強く握って、ゼイランを執拗に狙う。
「何だ、コイツ……。邪魔するな!」
ゼイランは即座にバズーカを使いビームを放った。
「キャアァッ!! まずいわ……、でも、やられる訳にはいかないんだから!!」
アンナは鋭い目つきでゼイランを狙い撃つ。
「クソォ……、しつこい奴だな……」
彼女の猛攻により苦戦するゼイラン。
しかし、そこへとさらに予想外の事態が彼の元に起こる。
「よし……、この時を待っていたんだ! アンナ、少し下がってくれ!」
“了解!”
そして、リックはナパームミサイルを発射し、ゼイランに致命傷を与えた。
「まずいッ! ウワァァァッ!!」
巨大な爆風に巻き込まれて、ゼイランは機体もろとも塵と化した。
「ゼイラン! 貴様よくもゼイランをッ!! 絶対に許さん……。切り裂いてくれるッ!!」
ガウルは戦友であったゼイランの仇と言わんばかりの猛攻を繰り出し、リックを追い詰めようと試みる。
「たァァァッ!!」
ビームソードを素早い動きで振りかざすガウル。
だが、リックは上手く間合いを取って回避する。
「させるもんかッ!」
リックはジャベリンを勢いよく振り回し、ガウルの機体右腕部を切断した。
「しまった……。アンフォーン中佐、利き腕をやられたので撤収します……。力になれず、本当に申し訳ありません」
“そうか、なら仕方あるまい。戻れ”
こうしてガウルは、撤収を余儀なくされた。
その後、アンフォーンはターゲットを鎧に絞り、彼に接近して、勢いよく斬りかかった。
「死ねェェッ、アームドブレイダーッ!!」
「何ッ!? くっ……!」
鎧は出力をフルにしてアンフォーンの攻撃を刀で押し切る。
「何とか耐えた……。よし、ここからはお返しだッ!」
鎧はクナイを三本投げ、アンフォーンを足止めし、そこから追い打ちをかけるようにビーム刀で凄まじいスピードで斬りかかる。
「まだ来るかッ! 俺は絶対に負けたりなど……、しないッ!」
アンフォーンはビームライフルで鎧を牽制する。
「この程度の攻撃……、アームドブレイダーの装甲なら十分耐えられる! 今だッ、喰らえェェッ!」
遠距離攻撃に夢中になっていたアンフォーンの隙を突くかのように、接近攻撃で敵機の右腕を斬り落とす。
「何ということだ……。俺としたことが。お前達、全員撤収だ……」
“りょ、了解です……”
そして、GHOSTは撤収し、これを受けて革命軍はここから完全撤退した。
しかし、その代償となった犠牲は、余りにも大きかった。
基地の施設は半分近く破壊され、状況は見ていられないほど凄惨であった。所々、戦死した兵士達の赤い血で染まっている箇所もあり、生き残った兵士らは彼らの死に涙する。
「基地がここまでやられるなんて……、江川長官、食い止められなかった事に後悔しています……」
鎧は、自分たちのやるせなさを悔しく思い、体を震えさせた。
「確かに、五割程の施設が失われたが、これは君たち全員の責任ではない。元はといえば革命軍が元凶なのだよ。憎むべき存在は、あの連中だ……。また襲われた時は、何としてもここを守るんだ……」
「了解……」
一部が荒れ果てたこの基地の上で、どこか寂しく
漆黒の夜空に月が浮かぶ。




