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特殊部隊BLADER-FORCE  作者: 藤沢マサト
それぞれの戦い
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第34話 リスボン危機一髪

 9月25日、火星政府軍は革命軍の前線基地を襲撃し、見事作戦に成功した。その中でも特に手柄を上げていたのはシャドー隊やハウンド小隊、ヴェスタ小隊であり、彼らの活躍はメディアに取り上げられた。

 また、これらの事には火星住居区民への戦意高揚を扇動する半ばプロパガンダ的な側面も少なからずあったのだ。

 その中で、ジンは過剰なまでのプロパガンダにやや呆れ気味になっていたが、口に出せずにいた。


「戦争で有利になっているのはいいとして、ここまで我々を持ち上げる必要はあるのか……?」


 一人で悩んで頭を抱えていると、そこにラルフが来る。


「ジン少佐、お悩みのようですが……」

「ラルフ、いいところに来てくれた!」

「どうされたのです?」

「それがだな……」


 ジンは、最近になり自分達がメディアによって必要以上に御輿を担ぎ上げられている今の現状に対しての不満を、ラルフに漏らした。

 部下のラルフもまた、彼同様に今の状態に疑問を抱くようになる。


「確かに……。ほんの数年前までは反戦争派の記者達が戦争はやめようと言っていたのに、今は手の平を返すかのように彼らは真逆のことを言っているのは、矛盾しすぎているように思えますね」

「やはりそう思うだろ……。しかし、上層部にこの事を聞かれたらただでは済まされないだろうな」


 二人がこのような会話をしていると、さらにそこへとたまたま通りかかったアルカディーもそれに加わった。


「アルカディーは、今の現状をどう思うんだ?」

「私も少佐の言うように、戦争を好意的に捉えるメディアの考えはどうも好かないですね。国民の中には、戦争が嫌いだという人間もいるというのに……。これじゃあまるで、私達はメディアの傀儡ですよ……」


 彼もまた、今の火星のマスコミのやり方に疑問を抱いていたのだった。


「だが、今後も我々はメディアのいいように弄ばれるのだろうな……」


 ジンはどこか辛そうな表情をしていた。

 少なくとも彼のプライドがマスコミの傀儡となることを許さなかったのだろうか。


「そうでしょうね……」


 ラルフとアルカディーもまた、今後もメディアの操り人形となることを嫌いながらも、そうなることを覚悟した。



 一方、日本政府軍基地では大規模な戦闘演習が行われており、当然ながら鎧たちもそれに参加していた。また、この演習は戦略演習も兼ねており、五人はどのような作戦で挑もうか試行錯誤していた。


「さて、いくら演習とはいえど……、これも実戦だと思ってるやらなくてはならないな」


 鎧は、真剣な表情で立体地図のコントロールパネルを操作する。


「鎧さん、どうするつもりだい?」


 リックはその様子を不思議そうに見る。


「この作戦は基地襲撃を想定したものになっているからな。二手に分かれて行う事にしよう……。メンバーは以前の作戦と同じ分け方でやる。ひとまず遠距離から攻め始めて、そこから二方向から挟み撃ちにして殲滅……、という形で行く」

「そうですか……。私と省吾は、アンナの援護をすればいいわけですね」

「うむ、その通りだ、美奈……。それと省吾に頼みたいことがある……」

「な、何ですか?」


 省吾は突然の質問に驚く。


「省吾、今回はアンナの援護だけでなく、バリアーの制御もしてくれないか。今日は運悪く艦の制御担当の兵士の方が急病で基地の中で安静にしているそうでな……。知識があるのが省吾しかいないから、教官から指示が出ていたんだ。出来るか?」

「もちろんです。任せておいて下さいよ!」

「まぁ、省吾は真面目だから少なくとも大丈夫だろうね」


 リックは、微笑みながら省吾の顔を見つめた。


「鎧さん、私は数少ない小回りの利く航空戦力なのでね……。頑張りたいです……。必ずこの演習でもいい結果を出して見せます!」

「アンナ、その意気だ。任せたぞ」

「はい!」


 アンナは、満面の笑みを見せた。


「さぁ、作戦内容を全員頭に入れたところで、早いところ出撃するぞ!」

「了解!」


 こうして彼らは、戦闘演習を本格的に開始した。

   ︙

“いいかね君たち! これは演習でないと思え! 常に心を引き締めておかねば、それは死に繋がるぞ!”

「はい! 神山教官!」


 画面越しに兵士達に警告をしている人物は、白髪混じりで逞しい体つきをした教官・神山弦二である。彼はこの日本政府軍内の兵士の間では鬼教官と揶揄されている。しかし、その反面飴と鞭をしっかり使い分ける名教官としても信頼を置かれているのだ。


“では、訓練開始だ! AIを搭載した旧式メタルユニット部隊を只今より出撃させる! 覚悟して挑めよ!”

「了解!」


 兵士たちは、機銃を構えてAI部隊に攻撃を開始する。


「皆、掃射開始ィッ!」


 圧倒的な量の光弾が、AI戦闘部隊を襲う。この攻撃により、次々に対戦相手側の機体は破壊されていく。


「あっちも攻撃を始めようとしているぞ……。早く挟み撃ちにして倒すぞ!」

“分かった、鎧さん! よしッ、ミサイル発射!”


 リックはミサイルを全弾発射し、鬼神の如く攻撃を喰らわせて、周辺にいたAI戦闘部隊を半ば壊滅状態に追いやる。


「これで攻撃は手薄になったな……。一気に接近するぞ!」

“了解! 任せておいてくれ!”


 リックと鎧は、接近戦で果敢に攻めていった。


「アンナ、そっちはどうだ?」

“もうすぐ敵を全滅出来そうです”


 アンナはすっかり勝利を確信したかのような表情をしていた。


「そうか……。だが、油断は禁物だ! 攻撃の手を休めるなよ!」

“はい!”

「省吾、美奈! 主砲を使って殲滅してくれ!」


 鎧は必死な表情をしていた。


“分かりました! 行くよ、美奈!”

”オーケー! 任せといて!”

「アンナも攻撃頼む!」

“了解です!”


 後方から美奈と省吾は、艦の主砲から強靭的な威力のビームを放った上に、更に追い打ちとしてアンナの放った光弾により、さっきまでそこにいた敵のAI部隊を完全に殲滅することに成功する。


「やった! やりましたよ!」


 省吾は作戦成功に歓喜した。


“省吾、喜ぶのはまだ早いぞ。まだAI部隊は他にいる……。何としても駆逐してやろう……”

「は、はい!」


 そして五人は、まだ敵と戦闘中の味方の部隊の方に向かっていった。


「八島少佐! 大丈夫ですか?」


 鎧は、ヤマト隊が苦戦している様子を見て加勢する。


“援護してくれるのか! 頼んだぞ”


 そして鎧たち五人は、彼らの援護に専念し、AI部隊に集中砲火を浴びせた。


「さぁ、喰らいなさい!」


 アンナは目を獣のように鋭くして、機銃で光弾を放ち、立て続けに撃墜していった。


「鎧さん、敵が接近してきた! 僕達で迎え撃とう!」

“分かった、リック……。任せておけ”


 リックと鎧は、接近戦用の武器を手にして、急速に近づいて来た敵に勢いよく斬りかかる。


「リック、行くぞ!」

“オーケー!”


 二人は、AI搭載機を矢継ぎ早に真っ二つにしていった。彼らは素早い動作で敵を翻弄する。


「ジャベリンで…、突くッ!」


 リックは最後の敵にトドメを刺し、演習は終了となった。しかし、一息つくのも束の間、火星政府軍では秘密裏にとある作戦が動いていたのだ。



 レックス率いるハウンド小隊には、新入隊員としてゲイリー・バウスが加入し、再び三人編成となっていた。


「ゲイリー、俺達は他の部隊よりも戦い方が少しアレだが、早く慣れとけよ……」


 レックスはいつになく優しい口調だったため、部下のウェインは違和感を覚えていた。


「さて、新入りのゲイリーが入って初めての作戦だが、今回はポルトガルのリスボン基地を狙う事にする。なぜここを狙うかというと、この軍の戦力は手薄だからだ。脆弱な箇所から少しずつ狙っていく事で、成功したらその次にスペインやアンドラの基地も叩くそうだ。何としても成功させてやろう」

「なるほど……、で、肝心の作戦はどうなるのです?」

「今回は俺が指揮を執るわけではないようでな……。伝えられている限りだと、まず、降下した直後に一斉掃射を行い、仮に成功しなくとも強行突破して小型爆弾を辺り一帯にバラ撒いて基地を焼け野原にする……、という作戦だそうだ。俺達は当然ながら爆弾をバラ撒いたらすぐに艦へと戻り、地球軍の連中が苦しむのを上で眺めるというわけだ。作戦内容は頭に叩き込んだな?」

「はい」

「私も右に同じです」


 二人は軽く頷いた。


「そうか……。では、行くとしよう」


 こうして、火星政府軍の部隊はリスボン基地へと向かうのだった。



 それから十数時間が経過し、日本ではもうすっかり日が暮れた頃、突如としてポルトガル政府軍から救援信号が日本政府軍基地の元へ入った。


「ポルトガル政府軍のリスボン基地から救援信号が入りました。ブレイダー隊を出撃させなくては……」

「そうだな。早くしないとまずいだろうな……」


 そして江川は、直々にブレイダー隊に出撃命令を出し、大至急リスボン基地へと飛び立った。



 しかし、ブレイダー隊がリスボン基地に到着した頃には既に火星政府軍と交戦状態になっており、明らかに苦戦しているように見えた。


「くっ……、遅かったか?」


 鎧は悔しそうな表情を見せた。

“いえ、まだこの戦況は打開できます!”


 省吾はまだチャンスはあると思っており、決して諦めてなどいなかったのだ。


「さっきの演習通りの作戦で行こう……」

“はい、分かりました鎧さん!”


 彼らは攻撃態勢に入り、現地の兵士達をサポートした。


「あの朱色の機体は、アームドブレイダーだな! 撃墜してやる!」


 敵軍の兵士の一人は、無謀にも鎧に接近戦で挑んだ。


「いきなり近づいて来たか! クナイを喰らえッ!」

 

 鎧は咄嗟にクナイを三本投げてダメージを与える。これにより、一時的に敵機は怯んだ。


「クソォォッ! まだ負けねぇぜ……」


 だが、諦めていなかったのか敵はビームソードを引き抜き、助走をつけて斬りかかった。


「もらった!」


 鎧は、即座にビーム刀で素早い動作で敵を切り裂く。


「そんなァッ!」


 敵機は上半身と下半身を切断された後、爆発四散した。

その後も、鎧はリックと共に機銃も併用しつつ敵部隊の殲滅を続けていくが、その途中で大きな壁にぶち当たる。


「リック、あれはもしや“白き猟犬(ホワイト・ハウンド)”じゃないか!?」

「確かに……。あの白い機体は明らかにそうだね。よし、ここは僕に任せてくれ! ナパームミサイル発射!」


 リックは背面からナパームミサイルを発射するが、レックス達三人はそれを素早い動作で回避した。


「しまった! 外した……。なら、これで!」


 リックはジャベリンを力強く振り回し、レックスの死角を狙おうとするが、なかなか上手くいかない。


「このマヌケがッ! そんなんじゃ俺を倒せねぇよ!」


 ビームライフルで光弾を放つレックス。

 この攻撃をまともに喰らい、リックは軽く吹き飛ばされる。


「ウワァッ! まずい……。こんな所でやられてたまるか!」


 リックは即座にハンドミサイルランチャーで反撃に出た。


「何ィッ! 被弾した……、だとォ!? ウェイン、ゲイリー! デプスブレイダーを包囲するぞ!」

“了解”

“任せてください”


 焦りを見せたレックスだったが、即座に冷静さを取り戻そうとした。


「そうはさせませんよ!」


 その時、空中からアンナがライフルで攻撃を行った。


“アンナ、援護ありがとう!”

「なぁに、礼には及びませんよ!」


 アンナは、どこか誇らしげな面構えをしていた。


「あのヤロォ! やってやろうじゃあねぇか!」

“私もお供しますよ!”

“もちろん、このゲイリーもお忘れなく!”

「おお、ありがてぇじゃねぇか! 細切れにしてやろうぜ」

“はい”


 そして三人は、執拗にアンナを狙い始めた。


「落ちろ、落ちろォ!」


 レックスは上手く狙いを定めて、ビームライフルで光弾を何度も撃つ。


「何てしつこい奴なの……、キャアァッ!」


 アンナは光弾を一発喰らい、機体右脚部の回路を損傷する。それにより、思うように姿勢制御がしづらくなる。


“アンナ、ここは僕達がやる!”

“私達が撃墜するから、任せておいて!”

「省吾、美奈! ありがとう……」


 これで戦況は有利になったと思われた矢先に、地球軍側にとって予想外の展開が起こる。


「もうめんどくせぇ! 早く基地に爆弾をバラ撒くぞ!」

“了解!”


 そして、敵部隊は小型爆弾をあちこちに撒いていった。


“おい! あれは小型爆弾だ! 君たちも早く空中へ逃げるんだ! いいな?”


 現地の兵士は鎧たちに指示を出していく。


“了解!”


 彼らは、なす術なく解除不可能の小型爆弾によって基地の各施設が爆破されていくのを上空から見るしかなかった。


「クソォ……、俺達の基地がァ……」

“泣くなよ……。仲間が死んだワケじゃねぇんだからよぉ”


 現地の兵士達は悔し涙を流し、より火星政府軍に対し、より強い憎悪の感情を抱いた。

 火星政府軍が撤収した後、鎧たちは兵士らが悔しがる様子を見て、気が気でいられなかった。


「力になれなくて、本当に申し訳ありませんでした……」

「いや……、いいんだ。君たちが来なかったらもっと酷い状況になっていたかもしれなかったからな。基地全部がやられたという訳ではないから……、そんな悲しそうな目をするな……」

「はい……」


 その後、鎧たちは日本へと帰還し、火星政府軍に打ち勝とうと固く決心するのだった。

 彼らが日本に帰ってきた頃には、既に朝日が登っていたという。

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