第19話 漆黒の死神
突然の海上戦に見舞われた亮達であったが、幸いな事にその戦いによる被害は少なく、彼らはほぼ万全な状態でアルガリオ島へと駒を進めた。
亮達はすぐに出撃出来るように、整備ドックの中で戦いの幕開けを待つのだった。
「質素な食事ではあるけど、肉があるだけマシか。食べるとしよう」
亮はあらかじめ用意していた、パンやフライドチキンを頬張った。
「亮、もう飯食うのか? 早いな……」
ジェフは、じろじろと食事をする亮の顔を見る。
「ああ、早めに食べておけば後々困らずに済むと思ってな……。駄目か?」
「いや、むしろ良いと思うぜ。結構よく考えてるじゃねぇか。俺も食べた方がいいかな?」
「お前がそう思うなら、損は無いはずだ」
「オッケー、じゃあ飯を食うか……」
ジェフも少し早めの昼食を摂ることにした。
「リック達はなんで食べないんだ?」
「うん、僕はあまりお腹が空かない方なもんでね…」
「私も時々一日二食になりがちってのもあって食べなくてもいいかなぁって思ったから……」
「俺も食事に関しては、最低限の物だけで足りる……」
ジェフは三人の話を聞いて意外だと思ったのか、驚嘆する。
「おいおい、マジかよ……。まぁいいよ。俺は止めたりしねぇから……」
そう言いつつ、ジェフはフィッシュフライを食べた。
それから一時間後、ついにアルガリオ島近辺までやって来た。
「アルガリオ島が見えてきたぞ!」
「艦長、どうします? 艦載機のMUは降ろしましょうか……?」
クルーの一人は、ここぞという時の判断に迷う。
「いや、このままでいい……。状況次第で降ろすとしよう」
「了解!」
そして、地球軍の艦隊はようやくアルガリオ島に接近。
しかしながら、先程既に戦闘をしていた為、兵士達は少々疲弊状態になっていた。
「ハァ…、まだ戦わなくてはならないのか……。今回ばかりは……」
鎧は、暗い表情をして自らの機体を見つめた後に乗り込む事にした。
こうして、アルガリオ島の方にいる駐在部隊との対決が始まる。
亮達が艦内で上陸の時を待つ中、地球軍の艦隊は海岸沿いにいる駐在部隊と激しい砲撃戦を繰り広げた。
「二連装ビーム砲、撃てェーッ!!」
無数のビームが飛び交う中、次々に砲台は潰されて不利な状況を強いられる火星軍側は、この時の為に開発された試作兵器である“サーチビーム砲”を使用することにした。
「サーチビーム砲、早急に撃てェーッ!!」
その時、突如としてビームが湾曲し、その攻撃により地球軍の小型艦が一瞬にして爆散した。
「何だ!? 一体どうしたと言うんだ……」
「どうやら火星政府軍の新兵器のようです」
「新兵器だと? そんなのに怯まず撃てェ! それと、機動部隊に早く出撃命令を出せ!」
「はい、承知しました」
そして、この戦いは凄まじい程に激化した。
亮達はヤマト隊などといった他の部隊と共に攻撃を開始した。
「亮君、撃つぞッ!!」
“はい!”
機銃で一斉掃射を行って敵艦に攻撃するが、とても効いているようには見えなかった。
そこで亮は、一旦アーディック艦を離れてより接近した上で攻撃を行うことにした。
「何だあれは!?」
「あれは以前、我が軍のジンを苦戦させたロードブレイダーではないでしょうか?」
ラルフは、敵機データベースを確認した。
「何ィ!? じゃあ早い内に潰せ!」
「はい!」
近接攻撃を繰り出したのは亮だけではなかった。
“亮、私も加勢するよ!”
「玲! ありがとう……。よし、一気に攻撃するぞ!」
“うん!”
そして二人は、驚く程軽快な動きで敵艦を翻弄した。
「何てスピードだ……! とても狙えそうにないぞ……」
「弱音を吐くんじゃあねぇ! さっさと撃墜しろ!」
艦長は部下に対し怒り、発破をかける。
だが、それも虚しく敵の艦は次々に砲台を潰されていく。
「えぇぇいッ!!」
亮は火星政府軍のバルビック艦の主砲をいとも簡単に潰していった。
「まずい! 主砲がやられた! ミサイルで撃墜しろ!」
「わかりました!」
焦燥に駆られる中で、亮たちの攻撃は続く。
「これで決める!」
「うわぁぁぁっ! ブリッジがァッ!!」
玲は、すぐさま敵の小型艦を撃沈させる事に成功した。
「玲、やるじゃないか!」
“私だってやるときはやるんだから!”
「俺も負けてはいられないな!」
亮も艦を沈めるべく、ビームマシンガンをチャージモードに切り替えて狙いを定める。
「そこだッ!!」
彼はバルビック艦のブリッジに一撃を放ち、見事沈める事に成功した。
「何とかやってやったぜ…」
“亮、もう火星の連中の艦は潰したみたいだな”
「ジェフ! 大丈夫だったのかよ?」
“ああ、小型艦を2隻程デカいスクラップにしてやったよ”
「マジかよ…、すげぇな…」
亮はジェフの戦績の凄まじさに思わずハッと驚いた。
そして、ついにアルガリオ島に上陸した亮達はそこにいる敵部隊に攻撃を仕掛けることにした。
巨大な軍港を越えると、そこには大型粒子砲の残骸がそこら中に散らばっていた。
「これも味方の艦がやったのか……。すげぇな……」
“亮、驚いている暇は無いようだぞ”
「何だって!?」
鎧の想定していた事は正しく、敵部隊が亮達に迫り来る。
「倒せェ! 何としても倒せェ!!」
“はいッ!”
「やはり来るのか……。ならばクナイで!」
鎧は3本のクナイを投げ、全て敵機に命中させる。
「グオォゥッ! 切り裂いてやる!」
敵の兵士は頭から血を流しながら接近戦を試みる。
「まだ来るか! タァァァッ!」
そして鎧は、自らの刀で横一文字に一刀両断した。やがて、機体の残骸は爆散。
「俺も頑張らないとな……」
すると、奥の方から見覚えのある白い機体が見えて来る。その正体は、白き猟犬こと、レックス・ギルダーである。
「おぉっ、ロードブレイダーが来やがった!! ズタボロのガラクタにしてやるぜェ!!」
彼はビームクローを展開し、ロードブレイダーを撃墜しようと試みる。
「ここは飛んで避けるか……」
亮は空中へと舞ってレックスの突進を回避する。
「少佐ァ! 助けに来ましたよォ!」
“おっ、ウェイン! コーディー! 来てくれたのか! じゃあ後方支援頼むぜ!”
「はいッ!」
そして、ウェインとコーディーは砲撃を始めた。
「何だと!? 部下を連れて来たなんて…」
亮は思わず立ち竦んでしまいそうになる。
“亮、部下の方は俺に任せろ”
「分かった、鎧さん!」
そして鎧は、部下の一人であるコーディーと対決した。
「こんな派手でワケの分からん赤い奴なんて倒してやる!」
コーディーは鎧に接近戦を挑もうとする。
「そう来たか……。ならばッ!!」
鎧は、ビーム刀を素早い動作で構える。
「倒してやるゥ!!」
敵機は、驚異的な速さで鎧の元に接近して来た。
「タァァァッ!!」
鎧はまず、コーディーの機体右腕部を斬り落とす。
「あぁっ、しまった!」
コーディーが呆気に取られている内に、鎧は更にもう一撃加える。
「ハァァッ!」
彼は機体を真っ二つにして、コーディーを見事撃破。
「うわぁぁぁっ!!」
機体は体勢を崩した後、轟音と共に爆裂した。
「コーディーッ!! テメェよくもコーディーをッ! 絶対許さねぇ! 粉々になるまで切り刻んでやる!」
レックスは怒りに我を忘れて、亮の元を離れた末に、鎧を倒そうと試みる。
「死ねぇぇッ!!」
「うりゃぁああッ!!」
互いに光の刃は激しく衝突した後、レックスが機体の出力をフルにして押し出す。
「うわぁっ!」
「コーディーの仇だァッ!」
「クナイを使うか……。喰らえッ!」
鎧はビームクナイを投げて機体のコックピット付近に命中させる。
「ヌオオォッ!! 痛い……、俺の顔が、俺の顔が……」
レックスは顔に傷を負ってしまい、その傷みに苦しむ。
「ウェイン、撤収だ!」
“はいッ!”
そして二人は向こうへと去っていった。
「くそっ、逃げたか。鎧さん、大丈夫か?」
“あぁ、俺は何とか無事だ……。心配するな”
「そうか……」
すると、亮の元に通信が入った。
“亮、今黒い機体の奴と戦ってるの! 早く来て!”
「何だって!? あ、ああ、わかったぜ……。鎧さん、玲達が危ない!」
“それは本当か!? 分かった、早急に行こう……”
そして二人は、玲が戦っているエリアへと向かった。
その一方、玲たちはグリムリーパー隊と交戦中にあり、苦戦を強いられていた。
“何て火力! これじゃ死んじまうぜ!”
「ジェフ、大丈夫!?」
“ああ、一応な。盾で何とか防いでるからいいが……。万が一壊れたら一巻の終わりだな……。待てよ……。リックは大丈夫なのか!?”
「僕はジャベリンを回して防いでいるよ!」
“へー、そうなのか……。って、感心してる場合じゃあねぇ! 早く倒さねぇと……”
ジェフはミサイルランチャーを構えて、一掃しようと考えた。
「させるかよッ!」
ガズベルは銃撃を行い、ジェフのミサイルランチャーを破損させる。
「まずい! ランチャーが壊れちまった……。ならばビームキャノンで倒すまでだ!」
ジェフは2丁のビームキャノンを両手で握り締め、彼らにとっては得体のしれない敵機を撃墜しようとする。
「喰らえェッ!」
彼は光弾を放ったものの、盾で防がれてしまった。
「効かねぇよ、雑魚が! てやぁッ!」
ガズベルはビームサイスを振りかぶってジェフの機体を切り裂こうとするが、突然遠方から光弾が直撃する。
「ジェフ、死なせはしないぞ!」
ジェフの目の前に映ったのは、亮と鎧の二人だった。
「ふぅん……、いくら新型機が束になろうと、我ら革命軍の高性能MUにかなう訳が無い……。ウィザルグ、早いとこ仕留めておけ」
“了解です……”
ウィザルグはゆっくりと亮の元に迫り、サイスを振りかざす。
「グアッ!! 何とか盾で防いだはいいが、今のはとてつもない衝撃だったな……。こっちだって!」
亮は自らの機銃で敵を狙い撃つ。
「くっ……、やるじゃないか……」
“ウィザルグ、大丈夫か?”
攻撃を喰らったウィザルグに対し、グリィパーは心配そうな顔を見せる。
「大丈夫ですよ。これぐらい!」
“そうか……、ならいいんだが……”
「まぁ、私の活躍を戦いながら見てて下さいよ!」
そしてウィザルグは、サイスを背面にマウントし、ビームガンで鎧に攻撃を仕掛ける。
「喰らえッ!」
「させるか! このォ!」
次々に攻撃が繰り出されるが、鎧は怯む事なく、ビームクナイを投げていく。そしてそれは、
ウィザルグの機体腕部にダメージを与え、攻撃を出来なくすることに成功した。
「グリィパー少佐、先に爆弾を仕掛けに行きます……」
“そうか……、分かった。しくじるなよ”
「はい」
そしてウィザルグは去っていった。
一方で玲はレリィナの相手をし、非常なまでの苦戦を強いられていた。
“何て強さなの……? どこをどうすればいいのかしら……”
玲はあまりの強さに悶えていた。
「玲、ここはチャージショットを使ってみたらどうだ?」
“そうだ! それなら倒せるかも……。ありがとう、亮!”
「どういたしまして」
彼女は銃口をレリィナに向けてビームを放った。
「何をする気かしら……? とりあえず避けましょう……」
レリィナは即座に避け、玲の後ろに回った。
「えっ……? ちょっと、噓でしょ!?」
敵に蹴りを入れられ、玲が姿勢を崩した隙にそこからビームガンで攻撃を喰らわせた。
「きゃあぁぁっ!!」
“玲、今の内に逃げるんだ…”
「え? 鎧さん…? ありがとう、先に艦に戻ってるね……”
そして玲はアーディック艦へと戻っていった。
「よくも玲を……。許さん! 切り裂いてやる!」
鎧は、怒りをあらわにする。
「この赤いの、やたらと前に出てくるわね……。まぁいいわ、このサイスで首を切って……、そこから殺してあげましょう。フフッ……」
レリィナは鎌を取り出し、鎧の元へと振りかざす。
「何ッ!? グアッ!!」
鎧は機体の装甲が分厚かった為にほぼ無傷だったが、倒れ込んでしまうものの、即座に立ち上がる。
「やってくれたな……。ならば二刀流で!」
彼は二本の刀でレリィナに挑み、それでレリィナの機体腕部を切断した。
「アァッ! 何すんのよ……。これじゃ撤収するのみね……。グリィパー少佐、私は撤収します。これ以上ダメージを与えられたら死ぬかもしれませんので……」
“分かった。上空にある艦に戻れ”
「はい……。申し訳ありません……」
やむなくレリィナは島から去っていった。
一方でリックは、ガズベルと戦いを繰り広げていた。
「くそっ、何としても倒さなくては……」
リックは既に機体左腕部と左脚部を損傷し満身創痍の状態だった。
「この野郎、ただじゃあおかねぇぞ…。喰らえッ!」
ガズベルは怒りに燃え、サイスを振り回す。
「隙ありッ!!」
刹那の動きでガズベルの機体右脚部を切断した。
「野郎、やりやがったな……。背中のスラスターで行くか」
ガズベルもまた、大きな痛手を負ってしまい、その場から去っていった。
その一方で亮は、グリムリーパー隊のリーダーであるグリィパーと接近戦を行っていた。後方では八島率いるヤマト隊が後方射撃をしていたが、全て避けられてしまう。
「この黒いの…、まさか火星革命軍のやつか!? 肩の紋章が火星政府のやつじゃないし……」
亮は何とか冷静さを保ちつつ戦うが、既に盾が斬られ、後戻り出来ない状況に陥っていた。
「流石はロードブレイダーだ……。あのジンが苦戦したというのも無理は無いな……」
グリィパーはニヤリと笑みを浮かべながら自らの鎌を振り回した。
「来たか……!」
彼らが戦っている最中に、突然遠方が爆発した。
「何だ!? まさかさっき逃げた奴が仕掛けたのか?」
「上手くいったようだな……。よし、私も逃げよう……」
また、グリィパーも上空にある味方の艦へと向かっていった。
「くっ、逃げたか……」
“亮、心配だから来たんだが…。追わねぇのか?”
「ジェフ……、そんな事よりこの島が爆発してるから、早く逃げるぞ!! このままじゃ死ぬ!」
“確かにそうだな。早く逃げるか……。玲、リック、鎧! それと八島少佐! 早く逃げましょう!”
「分かったよ、ジェフ!」
そして地球軍の部隊は島から即座に去った。
また、この時にいたレックス達駐在部隊も宇宙機動艦に乗り込んで、その場から離れたという。
戦いが終わり、日本に帰った亮達は、戦いに疲れてぐったりとしていた。
「よし、寝よう……」
リックはそのままベッドで眠りについた。
「亮、疲れたなぁ。早いとこシャワー浴びて寝ようぜ」
「おお、そうだな……」
亮とジェフは、シャワールームへと向かう。
そして、鎧と玲の2人はソファーで眠たそうな顔をしていた。
「鎧さん、今日はありがとう……。助かったよ」
「どういたしまして……」
鎧はにこやかな表情を見せるものの、思わずうたた寝しつつも起きようと我慢する。
「ああ、眠たいね……。寝よう」
玲は眠たそうな目をしながら立ち上がる。
「そうか。俺も自分の部屋で寝るか……」
そして二人も各々の部屋で眠ったのだった。




