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037:妥協無きフル装備キャンパー

4日連続更新の三回目です。

.


 まだ日が傾き始める前だが、村瀬悠午(むらせゆうご)一行(パーティー)は早めに野営する事となった。騎士達の負傷は治したが、動けるほど回復していなかった為だ。

 一晩護衛に就いて欲しいと禿頭傷の騎士に乞われ、捨て置くワケにもいかなかったのである。

 6人もの男が一晩近くにいるという事で、プレイヤーの娘さん方は言うまでもなく難色を示していたが。


 馬車は街道の脇道を少し入った所に停め、その前では火が焚かれていた。食事の準備も進められている。

 積載量に余裕が出たので、食糧は大量に積むようになっていた。今日の夕飯は丸一羽の蒸し鳥、ソーセージ、パンにスープだ。

 旅の空の食事としては、破格に良いと言えよう。


 常に誰かが周囲を見張るのが、世界を旅する際の常識だ。

 現在は、悠午とゴーウェンの野郎ふたりに、小柄な斥候、ビッパ。計三人が馬車の外に。

 王女のフィアは顔を見られると面倒な事になるので、馬車に置いたドールハウスの中にいた。従者兼世話役兼護衛のクロードも同様。

 他の女性陣も、馬車の中かドールハウスの内部にいる。


 悠午が空を見上げると、夜を前に鳥が家路を急いでいた。別方向には、謎の黒い月も見える。

 耳を澄ますと、風で草葉の擦れ合う音が聞こえた。

 念の為に周辺の“気”配を探るが、特に怪しいモノは無し。水気、木気共にバランスを欠いた様子もなく、突然の雨に降られる心配もなさそうである。


「ほう……豪勢だな。我々も相伴にあずかれるかな?」

「構わないと思いますけど。でもオレたちに会わなかったらどうするつもりだったんです?」 

「その時は晩飯の心配をする必要は無かっただろうな、ハッハッハ! 冗談だ、襲われた時に従者たちを先に逃がしたのでな。この先の町で待っているはずだ」


 少し離れた所から歩いて来るのは、騎士のひとりである禿頭傷の男だ。他の騎士は悠午達と少し離れた所で焚き火をしている。食事の用意があるようには見えない。

 通常、よほどの貧乏騎士でない限りは身の回りの世話をする者がいるが、禿頭傷の騎士たちの従者は、モンスター襲撃の際に避難させたらしい。

 よって、騎士たちが持っているのは剣か短剣、あるいは多少の金銭くらいのもの。持っている能力も、サバイバル生活には向かなかった。


 対照的に、黒い小袖袴の青年の前には、ホコホコと美味そうな湯気を立てる大鍋いっぱいの蒸し鳥がいる。

 馬車の一部を取り外してきた簡易テーブルの上には、カゴに入ったパンにスープ入りの鍋。ジュージュー焼かれるのを待つソーセージ。

 怪物の襲撃から生き延びたとはいえ、騎士たちは疲弊し切っている。

 この上でこんな美味そうな料理をチラつかされては、もはや生殺しに近い仕打ちだった。


 それから30分後。


 食事が出来た頃合いで、馬車から出て来る女性陣。

 隠れ目の法術士とジト目魔術士、グラビア女戦士と若奥様法術士は火の近くで、魔道士の王女と従者は少し離れたところに陣取り夕食を摂り始める。

 ドールハウスの中でも食べられるのだが、全員が引っ込んで食事をしていたらおかしく思われるので、外で食べる事になっていた。多少面倒臭い。

 小柄な斥候は、相変わらず馬車の上だ。パンとソーセージの組み合わせを、美味しそうに頬張っている。

 悠午とゴーウェンは、女性陣と騎士たちの間に座っていた。


「美味いじゃないか。しかしこんなに豪勢にやって大丈夫か? まぁ明日にはリットの町に着くだろうから心配ないだろうが」

「フンッ……粗野な料理だ。まぁ今は我慢してやる」


 禿頭傷や他の騎士にも、料理は概ね好評だった。偉そうな騎士だけは、文句を言いながら仏頂面で食べているが。

 塩と香辛料、ハーブを擦り込まれた蒸し鳥は、肉汁がたっぷりと含まれ軟らかく旨味も十分。

 ソーセージは中身が粗挽きで、咬み応えと荒々しい肉の味が良い。

 スープは例によって悠午謹製のコンソメ。今日はベーコン入り。パンは出来合いの物だが、何せ王女様が同行しているので安物でもなかった。騎士なら良い物だと気が付く。


「堪らん……! 怪物と戦い、生き残り、美味い飯にあり付ける。一杯やりたい気分だ」

「無くはないが……」

「おお!?」


 更に、ゴーウェンが馬車――――――のドールハウス内――――――から出して来る酒瓶に、喜色満面で湧き上がる騎士一同。役一名除く。

 ここからは未成年お断りの大人の酒宴。悠午は黙ってチーズを切っていた。

 そして、何気にお飲みになる若奥様が物欲しそうな顔をしていた。


                       ◇


 傾き始めると、日が暮れるのはアッという間だった。

 ついでに酒瓶が傾くのもアッという間だった。

 安全とは言えない野営なので深酒はしていないが、人数が人数だ。騎士6名に冒険者ひとり、ついでに若奥様もひとり。結局飲んだ。


「感謝する」

「ああ?」


 酒も減り、ツマミも尽き、会話も途絶えたところで禿頭傷の騎士がそんな事を言い出す。

 ゴーウェンなどは酒の件かと思ったが、違うようだ。


「騎士として名誉ある戦いに加わる前に、こんなプロスレジアスに近い内地で怪物に喰われるなどと、不名誉な死を迎えるところだった。我々はツイているようだ」

「街道筋で野良巨人に襲われて『ツイている』はないだろう」

「フハハハハ! そりゃそうだ」


 神妙な顔をしていたが、呆れたような冒険者の科白(セリフ)に大笑いする禿頭傷。

 気の良い男のようで、ゴーウェンの方も当初の警戒を大分解いていた。

 どうやら偉そうな貴族以外は、皆が下級の騎士らしい。

 貴族とはいえ下級の騎士爵や準男爵程度だと、感覚としては平民に近かった。習慣もまた、一般的である事が多い。

 時として無闇に貴族としての驕り(プライド)が高い者もいるが。


「いや、真実から言うが、お前達に助けられなければ死んでいただろう。皆良い腕をしている。それにしても『プレイヤー』と冒険者の取り合わせとは、珍しいな。雇われたか?」

「そんなところだな……」


 多くの場合異邦人(プレイヤー)は、プレイヤーとのみパーティーを組んでいる。また、プレイヤーの中には自分たち以外を『えぬぴーしー(NPC)』と呼び、例え相手が貴族であろうと奴隷のように接する事さえあった。

 禿頭傷の騎士の言う通り、プレイヤーとそうではない者が混じる一団(パーティー)というのは、決して多く見られる物ではない。大型パーティーが雑用の地元民を雇うのは、また別だ。


「魔法使いが多いな。護衛役はお前とあの従者風の男……それに、お前か? プレイヤーでも無手で戦う者は珍しいと聞く。それとも、お前も魔法使いの側か」


 と禿頭傷に問われるのは、後片付け中だった悠午だ。酔っ払い相手にツマミを作って食器片付けて見張りまでしているのだから邪魔するべきではない。


 パーティーに魔法職がいる場合、必然的に戦士職の者はその守りに付く事になる。魔法使いの火力は高いが、多くの場合肉体的には脆弱だ。

 ゴーウェンとクロードが守備役だというのは分かりやすいが、一方で無手で戦う小袖袴の青年に関しては分かり辛い。

 プレイヤーの中には、時々こういう変わり種がいる。

 それこそが、複数の『役割(ロール)』と『能力(スキル)』を習得(セット)し、変則的に使い分けるプレイヤーの特性だとは知る由もないだろう。

 悠午はプレイヤーではなかったが。


「…………そいつは治癒術士などではないぞ、セントリオ。我が足が壊れたかと思ったわ」


 ひとり背を向けて酒を舐めていた貴族は、戦士職とも魔法職とも知れない青年に恨み事を垂れていた。助けられたにもかかわらず。

 ちなみに、悠午の治療は傷の程度で痛さの度合いも変わるので、足を挫いただけの貴族が大騒ぎする道理が無いと治療した当人は思う。


「お前達はこれからどこへ向かう? アルギメスの前線なら、いい稼ぎになるだろう」

「いや……アストラの騎士殿には悪いが、俺たちは戦争に用はない。とりあえずナイトレアの迷宮(メイズ)で稼ぐつもりだ。仕事も多いしな」


 黒の大陸の西にある島国、アルギメスでは白の大陸からの侵攻軍と戦争を行っている真っ最中だ。

 アストラをはじめとする黒の女神の陣営は、『勇者』など強力な力を持つプレイヤーを利用し前線を押し返しているが、全てのプレイヤーが戦争に協力的なワケではない。

 悠午のパーティーはアルギメスの前線を越え白の大陸に渡る予定だが、それを親切に教えてやる熟練冒険者でもなかった。

 禿頭傷の騎士は悪い男ではないが、それでもやはりアストラ国の騎士で貴族である。

 優先すべきは王国の勝利であり、その為には成すべき事を成すだろう。


 つまり、腕を見込まれたが故に巻き込まれる、などというのは堪らないと。


「そうか……ならば途中まで我らと同道してくれんか。無論それなりの報酬は出す。どうやら怪物の動きが活発だという噂は事実のようだ。またぞろ野良巨人に出くわすワケにもいかんからな」 


 だが、少々遅かった様子。


 同じナイトレア方面に行くという事で、しばらく護衛を兼ねて旅は道連れという話になってしまった。

 騎士がそれでいいのか、などとジト目魔術士は思うが、騎士もまた超人ではない。モンスターなどに後れは取らぬ、などと言って単騎で挑み自爆する者もいるが、禿頭傷の騎士はそういった蛮勇を持たないようだ。

 パーティーの半分をプレイヤーが占めていたり、アストラの王女がお忍びで加わっていたりで部外者とは極力関わりたくなかったゴーウェンだが、ここで同道を断るのも何かあるのかと怪しまれるだろう。

 ならば、ここは禿頭傷の依頼に応えておいて、いずれ機を見て別行動に戻ろうと考えていた。



 もっとも、禿頭傷の騎士セントリオは、ベテラン冒険者の危惧したとおり、悠午達に目を付け自陣に引き込むつもりだったのだが。



                        ◇


 アストラの騎士と、南方にあるナイトレア国の途中まで一緒に行動する。

 この決定については、パーティーメンバーの皆としてもそれぞれ思う所はあったが、メリットとデメリットを秤にかけた末に皆が承知していた。


 不自然に距離を取ろうとすると、怪しまれる。特に悪い事はしていない一同だが、怪しまれた末にフィアの素性などが知れるのもよろしくないだろう。

 報酬はそれほど期待しないが、騎士が同行していると、道中での面倒を避けられるかもしれなかった。時として町や街道を守る衛兵に、嫌がらせのように足止めを喰らわされる事があるのだ。正騎士がいると、その辺がフリーパスになる事が多い。

 後は、騎士への対応はベテラン冒険者や王女の従者にやってもらえば良い、と。プレイヤーのお姉さん方は、このように考えていた。


 それより、今はもっと大事な問題があるらしい。


「あ、水回りの件、そういえばまだ解決してませんでしたね」

「死活問題だっつーの。風呂は入れるなら入りたいし」


 日が落ちて暗くなると、次は夜明けと同時に出発するので、早々に休まねばならない。

 悠午たちのパーティーも、外の見張りを野郎どもに任せ、女性陣は馬車――――――のドールハウス――――――内で休んでいる、と思われた。

 ところが、不意にジト目魔術士に呼び出されたと思ったら、ドールハウス内の水回りが未だに整備されていないというお話。


「てか常識的に考えたら、排水なんてしようがないんじゃないですかね? ミニチュアの家が大きくなったようなもんでしょ? これ」

「うん、フィアさんに訊いたら、お風呂場は飾りのような物なんだって。身体を綺麗にする時は、普通の宿屋みたいにタライに水張って布で拭くんだってさ」


 だが、このドールハウスは外から見たらオモチャのような物だ。排水管や水道管がどこかに繋がっているはずもない。

 そして、女戦士の小春が元の持ち主に聞いたところによると、悠午の予想は正しかったようである。

 風呂やトイレ、水道の類は全て見せかけの作り物。実際に使えるような物ではないとの事。

 悠午としては、荷物置きや寝床の確保が出来るのだから、それだけでドールハウスは十分利用価値がある。

 しかしジト目の魔術士は、それだけで満足できないようであった。


「浴場はあるんだから、お湯溜めれば使えんじゃね?」

「でも見せかけだけなんですよね? 穴とか開いてて地下室に水流れ込みやしませんか? それにお湯持って来るって、どこから?」

「頼むぞユルゲン」

「オレっスか。いや、ホントにそれオレか?」


 悠午に丸投げという驚異のテクノロジー。名前のツッコミはもうしない。


 仮にお湯を溜めた所で、移動中はドールハウス内も揺れまくるのだから、屋内が浸水しやしないか。

 そう思うほど浴場は大きかったのだが、その辺をジト目姉さんへ言う前に、一応悠午も中を調べてみる事とした。

 どうにか出来るものなら、どうにかするつもりである。

 自分の技を軽々に使うのは良くないと分かっているのだが、悠午も年上の女性に甘かった。


 浴場は一階左側の端にあるが、その内部は他の部分と作りが異なり、別の建物がくっ付いているようだった。

 全体が主に大理石で出来ており、湿気対策されているのが分かる。

 巨大なオモチャのような物だ、と言った悠午ではあるが、浴場といい他の部屋といい、ヒトの居住に耐えられるようしっかり作られているのが分かった。

 案外最初は普通の家だったのかも、と思いながら脱衣所から浴室に入ると、そこには先客が。


「あれ、フィアにクロードさん」

我が師よ(マスター)…………」


 8畳はありそうな浴室の中に佇んでいたのは、アストラ国の王女である魔道姫マキアスこと『フィア』と、その従者として急遽連れて来られた騎士希望の青年『クロード』だった。

 ちなみに王女という身分のフィアであるが、悠午を術における『師』と仰いでおり、礼を尽くしている。

 悠午としては、これに関して「どうしたものか」と悩みどころだったが、今は置いといて。


「どうしたんですこんな所で? もしかして……風呂に入ろうと?」

「いえ……コハルにここが使えないかと問われたので、どうなのかと…………」

「マキ――――――フィア様と私で使用に耐える物か調べていました」


 ふたりから話を聞いて、随分殊勝な事だと悠午は思う。特に、王女自らこんな事で骨を折るとは。

 あるいは、以前の件で一応罪悪感は持っているのか、または王女なりにパーティーへ溶け込もうとしているのかもしれない。

 さもなくば、単に悠午(マスター)の機嫌を損ねない為か。

 今はあまり、悠午も考えるつもりは無かった。


 浴槽は5~6人が一度に入れそうなほど広い。深さは日本の風呂に比べると、やや浅めだろうか。いっぱいにお湯を張れば、胸の少し下に水面が来ると思われる。

 中の作りも大理石だ。石材の間に隙間らしき部分は見られないが、実際に水を張ってみなければ分からないだろう。


「ここって実際に使った事あるんですか? 見せかけにしては、随分凝った作りに見えるけど……」

「申し訳ございません、マスター。私もこれが、ヒト種族の英雄『ダーカム』を捕らえようと作られた、という言い伝えしか知らないのです。中の術式は調べたのですが……」

「んじゃ、やっぱり水入れてみるしかないか…………」


 ヒト種族の英雄がどんなモノか知らないが、本人に風呂の使い方を聞くワケにもいくまい。

 ではどうしたものか、と。

 少し考えた末、悠午は黒い小袖の懐から金貨を一枚取り出し浴槽に放る。


「発気…………金生水、『神泉』」


 軽く言霊(ことだま)で呪を放つと、金貨に浮いた湿気が水滴になり、それが爆発的に増えて来た。

 水は見る見るうちに嵩を増し、何分もしないうちに浴槽の8分目を満たすほどに。

 それを確認するや、悠午はダッシュで地下室を見に行った。

 そしてすぐに帰って来た。


「漏れてなかった」


 心なし満足そうな、小袖袴の達人。

 地下室に水の漏れなどは無いようである。やはり、しっかりした作りであった。

 とはいえ、風呂の下に限らないが、地下の部屋には湿気取りに炭でも買って積んでおくべきかもしれない。

 などと考えながら、悠午は水上を歩いて水の中に手を突っ込むと金貨を回収。

 呪による摩耗具合を診ながら、懐の財布に戻した。


 そんな小袖袴の少年を唖然と見ている、王女と付き人の主従。


「……マスター、今のは……?」

「ん? んー…………」


 特に困らないで隠しもしなかったが、改めて問われると、何と答えたものか迷う悠午。

 弟子として同行を許した魔道士のフィアだが、何をどこまで教えようか、まだ考えていないのだ。

 今の五行術も大した(まじな)いではないが、これはこれで気功の秘奥に通じる技ではある。

 悠午の技術は、概ねこのように何らかの繋がりを持っていた。


「今のはー……自然の“気”を水気に誘導しただけ。魔術には水を出す物なんてないの?」

「鉄砲水を呼んだり大雨を降らせる事はありますが……マスターのように大した儀式もなく、必要なだけ水を得るなどという魔術は聞いた事がありません」


 魔道士のフィア曰く、出来る出来ない、というより、やらないという理由らしかった。

 不可能ではないが、水を桶いっぱいに得ようと思えば、通常ならどこからか水を汲んで来た方が手っ取り早い。

 少なくとも、術陣を用意して貴重な触媒を用い魔力を費やし神経を使う儀式に臨むよりは、遥かに低いコストで水を得られるだろう。


 ところが、悠午のやった事が無駄で無意味な徒労かと言えば、そうでもない。

 フィアが見ている前で、小袖袴の若き達人は、ほとんど何も犠牲にする事なく魔術と同様の奇跡を起こした。

 魔力の動きもほとんど無く、儀式らしい儀式をやった様子もない。金貨一枚を浴槽に放っただけで大量の水を生み出すと、当たり前のようにその水面を歩いてみせる。

 仮にも『魔道姫』と謳われるほどのフィアには、それがどれだけ途方もなく高度な技かを、嫌というほど理解できた。

 多少の嫉妬心はあるが、(マスター)として仰ぐ者を間違っていなかったと確信できるので良しとする。


「まぁ、五行の輪廻に通じる秘術と言えなくもないけど……。まずは“気”力を養うのが大事かな。これは五行術にしろ魔術にしろ普通に生きて行くにしろ、かなり重要だし。そのやり方から教えるよ」

「はい……よろしくご指導を、マスター」


 師の言いに、飽くまでも謙虚に頭を下げるグラマラス王女様。

 仮にも師匠になったので、悠午としても何か教えなくてはならない。

 思う所はあるし、女戦士の時同様に弟子を取れる立場ではないのだが、とりあえず当たり障りない基礎から教えて様子を見る事にした。

 

「おお!? 水入ってんじゃん! どうやったこれ!? 魔術!!?」

「わー助かるー! お湯じゃなくてもいい!」


 そんな所に、その他パーティーの女性陣もやってきた。

 現代日本のお嬢さん方――――――若奥様含む――――――は、こちらの世界ではお目にかかった事のない贅沢な水量に涙さえ浮かべている。

 女性として一カ月も二カ月も風呂無しは、本当に辛かった。小春の言う通り、水だけでも充分だ。


 しかし、仙道五行に通じた達人に曰く、


「いやまぁ……お湯には出来ますよ。ある程度土と種があれば、多分排水の方も大丈夫…………」

「キャァアアアアア! ウソー!!」

「いよっしゃぁあああああ熱い風呂ぉおおおおおおおおお!」

「ふわーん!!」


 この科白(セリフ)に、三人娘は爆発したかのような喜びようだった。あまりの勢いに、悠午も若干引き気味。

 本来ならば“気”をこのような形で具象化するのは気功の使い手としてどうかと思うが、この際仕方がないとする。悠午だって、お姉さん方の立場なら利便性を優先したいだろう。

 なお、トイレの排水もどうにか出来ると思われたが、悠午が処理すると聞いた女性陣が大反対した為、これまで通り外で行う事となった。

 ここは流石に乙女の羞恥とか矜持など、のっぴきならない危機感の方が(まさ)ったようである。



クエストID-S038:メイクアセット アッセンブリー 09/19 21時に更新します

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