第18話 夜の帳
自宅での夕食。食卓に並んだ好物の青椒肉絲をもごもご食べながら話をするタイミングを伺っていたが、埒が明かない。思い切って切り出す事にした。
「ばあば。姫子から聞いちゃった」
「何を?」
「本当は両親なんて居ない事とか。私の出生とか。姫子の正体とか。協会の事とか」
「へぇ」
へぇって。ばあばは箸も止めない。なんかこう…なんかあるでしょ!?
「別に何も変わりゃしないだろ?」
「そりゃあ!…そうかもしれないけど」
ばあばは箸を置いた。姫子は我関せずといった具合で青椒肉絲を乗せたご飯をもりもり食べている。
「いままで通りでいいのさ。結合も、姫子も。いつも通り学校行って、ここに帰ってくりゃあいい」
「でも、私、命を狙われてるんでしょ!?知らない間に私の事守ってくれてたって…。また迷惑かけたりしたら」
「あたしたちが迷惑なんて言ったこと一回でもあったかい?」
「…ないけど」
「じゃあいいじゃないか。それにね、アイツらとは昔からやり合って来たんだ。あんたらがここに来る前からね」
話はおしまい、とばかりにばあばは箸を取りたくあんをぼりぼり齧った。姫子もばあばも、何も無かったようにごはんを食べる。なんだか私だけ騒いでバカみたいじゃないか。でも戦ってみて、死にかけてみてわかった。こんなの全然当たり前じゃない。私が知らないところでそんな目にあって、私に知られないようにしてくれていたんだ。
「ばあば、姫子。その…ありがとう」
照れくさいが、ここで言っておかなきゃ。
二人とも返事もなければ箸も止めなかったが、少しだけ口元が緩んだ気がした。
「姫子、もう寝た?」
「寝た」
「起きてるじゃん」
今日も姫子は私の部屋のベッドに潜り込んで来た。目を瞑って寝たふりをしているが、眠ってはいないようだ。そもそも睡眠が必要なのかどうか。
「機関って何?」
「機関は古来、地球にやって来て地球人に紛れてる宇宙人。奴らは地球を自分達のものにしようとしてる。でも、強行派も居れば友好派もいる。難しい」
「あまねと李はどうなったの?」
「協会が監視、尋問中。もしかしたら奴らの情報が得られるかもしれない」
「私も戦おっかな」
「だめ」
姫子は目を開けた。
「危ないことしないで。結合は私が守る」
姫子が私の手を握り、指を絡めた。細い白魚のような指は柔らかくて暖かく、人間と変わらないように思えた。




