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第10話 むかしむかし

「あ゛~」


1000段以上ある石段を姫子の肩を借りながら登っていく。身体中がだるい。頭痛もする。血を出しすぎたせいだろう、要するに貧血だ。私達はあの後逃げるように学校を出た。血まみれで穴が開いた制服は上着だけ脱いでジャージを着た。

辺りはもう真っ暗。蛇苺さまは心配してくれて、家まで送ってくれると申し出たが姫子も居ることだし丁重にお断りして例の駅で別れた。まあ心配というより一体何が何やら説明が欲しかったというのが本音だろう。いや、説明を求められても私にも何にもわからないんだけど。


私と姫子の家はこの長い石段を登りきった山頂にある大郁子(おおむべ)神社、その社務所を兼ねている。肝心の神社の方は正月か七五三の時期にしか人も寄り付かない小さな神社だ。その境内を走り回って私達は育った。

まだ私と姫子が小さかった頃、二人の両親達4人は姫子の祖母であるこの神社の宮司、ばあばに私達を預けて海外旅行に行き、その途中で飛行機事故で亡くなったらしい。…らしいというのは私も姫子も両親の顔すら覚えていないからだ。それ以来、私達はばあばに面倒を見て貰っている。


「今日はやけに遅かったじゃないかい。二人とも」


ばあばは夕食を用意して私達の帰りを待ってくれていた。


「あはは、なんか今度の運動会で生徒会の手伝いする事になっちゃって。これからちょくちょく遅くなるかも」


「ふうん。あんまり心配させんじゃないよ。遅くなるならちゃんと電話しな」


私ははあいと、返事して味噌汁を掻っ込んだ。姫子がご飯をもぐもぐさせながらじーっとこちらに視線を送ってくる。こら、こっちをじろじろ見るんじゃない!何かあったように見えるでしょうが!いや実際何かあったんだけど。


今日は湯舟には浸からず軽くシャワーだけを浴びて自分の部屋に戻り、電気を消してさっさと布団に入った。どっと疲れが押し寄せる。

放ったらかしにしてきいた教室の血だまりとか、穴の開いた血まみれの制服とか、謎の力の事とか、何かを察して駆けつけてきたような姫子の行動だとか、考えたい事は色々あったがどうにも頭が働かない。

うとうとしていると布団の中がごそごそしたあと、姫子の顔が飛び出してきた。姫子と一緒に寝るのも久しぶりだ。最近はさっぱりだが、昔はよく一緒に寝たりお風呂に入ったりしたものだ。

姫子は何か言いたそうな顔をしていて、私も聞きたい事はあったが強い眠気がそれを許さなかった。瞼が重い。意識はそこで途切れた。


挿絵(By みてみん)

      ▲ばあば

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