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催眠術師の端っこ教室  作者: ぴあす
第ニ章

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12/16

人斬りサムライ討伐作戦

 大勢の人だかりができていた先には小さな窓口がある。鬼族の女性が一人一人に丁寧に何かを説明して紙を手渡していた。


「1日の始まりだ。行くぞ」


 ブレソルはそういうと列に並んだ。列には多種多様な種族の異端者たちがいる。青白い肌をした女、左腕が溶け大きな爪を生やした異形のもの。


「面白いだろ?ここは異端の場所、普通がここじゃあ少し変わっている」


 そんな話をしていると二人の前に恰幅のいいゴブリンが横入りした。


「おい、列がわからないのか?私たちが先に並んでたんだ。後ろに並んでくれ」


「あ?バケツ野郎如きが俺様に楯突くのか?いい度胸だな」


 一歩も引かずに堂々と立つブレソルをゴブリンは見下ろした。

 フレアはどうすることもできずにただあわあわしているだけだった。


 ブレソルは剣に手をかける。ゴブリンも拳を強く握った。


(仲間同士の喧嘩っていいんだっけ?)


 フレアが疑問を抱えていると後ろから大きな影が横切る。

 立派な銀色の立髪、その持ち主はライカンスロープだった。


「おい!どっちが悪い?」


 ライカンが近くにいた仲間たちに聞くと皆こぞってゴブリンを指差した。

 またおまえかと言う感じにライカンはため息をついてゴブリンに近づいていく。


「今月何回目だよ?次はないって前も言ったよな」


 ライカンに詰め寄られたゴブリンはすっかり弱気になりそのままつれていかれた。ブレソルはため息をついて剣から手を離した。


「グレイスにはよく助けられているんだ。私の生い立ちを知って馬鹿にするものはここですらいるからな」


 ライカンの名前はグレイスというらしい。

 列が整理されフレア達の順番が回ってきた。ブレソルがカウンターの女性に声をかける。


「夏月、今日の依頼は二人で参加する。新入りに手筈を教えてやるんだ」


「へえ、そりゃ立派なことや。人好かんお前がそげんことばするとはねぇ!」


 フレアはあまり聞きなれない話し方に少し困惑したが悪い人ではないことはすぐにわかった。


「新入りにやらせるような依頼じゃあのうて悪かばってん、今日のあんたの依頼はこいつの始末とね」


 夏月は若干申し訳なさそうにフレアに頭を下げてから、少し擦り切れた紙をブレソルに渡す。

 そこには異国の帽子?を被り、額から右目にかけて、大きな傷がある人物が載っていた。


「東の剣士、サムライか。噂には聞いていたがまさか私のとこに依頼が来るとはな」


 ヘルメット越しにでもブレソルが喜んでいるのが伝わった。


「嬉しそうで何よりばい。ちゃんと守ってやんだったい?な、新入りちゃん!」


 ◇◇◇


「フレア、今回の敵はそれなりに強いだろう。私は君を守ってやれるほど強くはない。負ける可能性も視野に入れておくんだ」


 快晴の空から眩しい日差しが降り注いでいる。

 ブレソルとフレアは依頼目標が最後に目撃された場所へと向かった。


「はい、自分で言うのもなんですが対人戦闘はそれなりに慣れていますので。必ず役に立ちます」


 フレアのはっきりとした返答にブレソルは笑う。


「ははは。心強いな。流石は"火魔女"といったところか」


 二人はアジサクソウルを出て王国から少し離れた海岸に向かう。


「サムライ...楽しみだ...!」


「そんなに楽しみですか?さっきからずっとその調子ですよね」


 独り言が止まらないブレソルにフレアが問う。


「もちろん楽しみだ。文書では仁義を重んじた美しい戦いをすると書いてあった。君もそんな戦いを見てみたいだろう!?」


 若干興奮気味にブレソルは冷たい鎧をフレアの顔に近づけて言った。アーメットの隙間から見える海の景色が飛び出してきそうにフレアは感じる。


 潮風の香りがした。しかしそれはブレソルとが逆の方向からの風だった。


「ここ、だな」


 フレアが風の吹いた方を見るとそこには人気ひとけのない寂れた港があった。


「嘘じゃなかったようだな」


「え?」


「噂のサムライ、流れ着いた浜にいた漁師たちを皆殺しにしてそこを拠点にしているらしい」


 フレアは耳を疑った。目の前の港は数百人が生活しているはず。それをたった数日で皆殺しにするなど不可能だと、フレアは思った。


「ん?あれは...」


 ブレソルが視線をおいフレアも先を見つめる。そこには異国の帽子を被った何者かがゆっくりと歩みを進めていた。

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