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最終話 気持ちを伝える勇気

 ジグが好きすぎて書類婚をしたというユーリと、ユーリが好きでその身を差し出したジグ。

 ジグは、自分が遠回りしていただけなのだと、この時初めて理解したのだ。

 自分のやらかした恥ずかしい行為に、ジグは死ぬほど恥ずかしいと全身を真っ赤に染めていた。

 両手で顔を覆ったジグは、素直に真実を口にしていた。

 

「わたしも、殿下が好きです……。ごめんなさい。イヴァンは、殿下とわたしの子です……」


 小さくそう口にするジグの告白に、ユーリは目を丸くする。

 

「俺もジグリールが好きだ! でも……、俺は、お前とそういう行為をした覚えがないのだが……。俺との子とはどういうことだ?」


 身に覚えがないと言いつつも、ジグの言葉を信じてくれるユーリ。そんなユーリを好きだと思いつつも、ジグは、震える声で恥ずかしそうに呟くのだ。

 

「えっと……。殿下は覚えていないと思いますが……。魔王は消え去る前に、最後の力で殿下に呪いをかけたんです……。それで、暴走した殿下と……」


 そう言って、顔を赤くするジグを見て、ユーリは頭を机に打ち付けるようにして叫ぶように言ったのだ。

 

「ごめん!! 覚えていないが、俺が無理やりジグリールの処女を散らしたんだな! ごめん! ちゃんとやり直そう! 今度はやさしく―――」


 ごちっ!!

 

 鈍い音とともに、ユーリは床に崩れ落ちる。

 オーエンが、興奮していろいろ欲望を垂れ流そうとするユーリを黙らせたのだ。

 そして、疲れたように言うのだ。

 

「はあ。お前たちは、お互いに言葉が足りないんだよ。ちゃんと、話して、気持ちを伝え合え。たくっ」


 そう言われたジグとユーリは、お互いに恥ずかしそうに視線を合わせた後に、微笑み合い、同時に言うのだ。

 

 

「殿下。お慕いしております」


「ジグリール。好きだ。愛してる」


 思いを伝えあった二人は、照れくさそうに微笑み合ったのだった。

 

 

 その後のユーリの行動は早かった。

 次の日、目を覚ましたイヴァンに、自分が父親だと名乗りを上げたのだ。

 しかし、イヴァンは、ユーリを嫌そうに見た後に、ジグに抱き着いて言うのだ。

 

「まぁま、へんなおじんがいる~」


「へ、へん?! おじん?!」


 イヴァンに拒否されるだけではなく、おじさん呼ばわりに傷ついたユーリはその場で膝を付いて項垂れるのだ。

 そんな、イヴァンを抱きしめたジグは、恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに言うのだ。

 

「イヴァン。今までごめんね。パパがいなくて寂しい思いをさせてしまって。殿下がイヴァンのパパなのよ」


「ううん。イヴ、まぁまがいればいいの!! ぱぁぱもおじんもいらないの!!」


 そう言って、ジグにびったりと抱き着いたイヴァンは、足元で悲しげに見上げてくるユーリにだけ見えるように、べっと舌を出したのだ。

 

 それを見たユーリは、いろいろと理解していた。

 利発な我が子が、母親であるジグを愛していることを。

 ユーリは、予感したのだ。この先、息子と愛するジグを取り合う日が来ることを。

 いや、ジグ争奪戦がすでに始まっていて、自分が劣勢に立たされていることに気づいてしまったのだ。

 

 それは、思いが通じ合い、離れて暮らすことはないとユーリがジグを王都に連れて行こうとした時だった。

 イヴァンは、友達と離れたくないと泣いたのだ。

 それを見たジグは、引っ越しを躊躇ったのだ。

 そんなやり取りが続き、ジグが王都に来たのは、だいぶ後になってからだった。

 その間ユーリは、何頭もの馬を乗り換えて、何度も遠い王都とハジーナ村を行き来していたのだ。

 

 結局、ジグとイヴァンがユーリの元で暮らすようになるまで、一年ほどの月日を要したのだ。

 

 その後、ジグとユーリは周囲に祝福されながら正式な結婚式を挙げたのだ。

 そして、ジグを愛するユーリとイヴァンの間でのジグ争奪戦は、王宮での名物となっていくのだ。

 

 ジグは、思いを口にすることの大切さを知ってからは、恥ずかしくても思ったことを口にするようになっていた。

 それは、ユーリも同じだった。

 お互いに言葉が足りず、行き違いをして遠回りをしてしまった二人は、今ではなんでも言い合うようになっていた。

 その所為で、喧嘩をすることもあったが、そのたびに仲直りそして、前よりもその絆を深めていったのだ。




『聖女様から「悪役令嬢竹生える」と言われた男爵令嬢は、王太子の子を身籠ってしまったので、全力で身を隠すことにしました。』 おわり



最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 聖女様は四天王最弱と言われた彼を無事ゲットしているのかな? もう皆がそういやそんな人もいた…みたいに忘れてるのがまたいいですね。 一人で出産したのか…と思うとすげぇパワーだな~誰か手伝いに来…
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