第2話ーー最下層の現実
私はここに昨日来たんです。
「は? 昨日とはどういうことだ?」
「その言葉通りです、昨日来たんです。昨日までは貴族の家庭にいました……」
「なんで、なんでフィネアみたいな人がここに来るんだ、ここはギャンブルなどで借金を作った人が来るところではないのか?」
俺はホームレスの人と言ったら借金を作ってなる。という固定概念からそう言った。
「いいえ、それもありますが、ここは貴族にお気に召されなかった人が送られるところでもあります」
「は? それだけで、そんなことだけでここに、こんなところに来るのか?」
どうやら俺は前の世界よりゲスな世界に来てしまったらしい。
「はい、貴族にも身分があります」
上から
皇帝
王
大公
公爵
準公爵
候爵
準候爵
伯爵
準伯爵
子爵
準子爵
男爵
準男爵
といって13階級あります。
「それで私の家は男爵家庭でした……そして、私は伯爵のベルト様という方と父に婚約するように言われたので、婚約をしていました」
「それはわかったが、なぜここに来ることになったんだ?」
「それは、ベルト様が……っっ。なんでもありません……」
何か言いたそうだが、言えない。そんな表情を見せた瞬間、俺の視界にいるフィネアの顔に、顔が隠れるほどの×印が映った。
「なんだこれ、なんだ、何が起きたんだ?」
俺は、新しい何かわからない現象に動揺した。
「ケンジさんどうかしましたか?」
「もう消えたか……で、なんでここに来ることになったんだっけ?」
「も、もう一回言うのですか?」
「ああ、聞いてなかったんだ、もう一回言ってくれ」
「なんでもないですってっっ」
フィネアは俺の聞いてないそぶりに怒ったのか、強く言った。
その時、また顔に×印が見える。
(普通の会話ではこれが起きないってことは、何かあるってことだよな……)
「おい、フィネア。なんか隠してないか?」
この現象がなんだかわからない俺は、なんでもいいから動揺を誘う。そうな行動に出た。
「いえ、隠してませんよ……」
まただ、また×印が顔に出た。これは相手が嘘をついたら出るんじゃないのか?
俺は確証もないこの能力を信じ、フィネアに聞いてみる。
「おい、フィネア。お前嘘をついてるだろ……俺には嘘は通じない、はやく白状してみな」
「つっ、どこが嘘だとお思いで?」
フィネアは嘘を通じないってことを嘘だと思い、俺にカマをかけてきている。
「ああ、なんでもないがだよ!」
そう言った途端、フィネアはいっぱいに入れていた肩の力を抜き、ため息をついた。
「はぁぁぁぁ、わかりました、全てをお話ししますよ、ですがこれから貴族たちに追われても知りませんからね」
やっぱりこの能力は嘘を見破る能力でいいみたいだな。
「おう、言ってくれ、俺は嘘が大っ嫌いなんだ、真実を知りたいんだ」
わかりました、そう言ってフィネアは微笑んで、俺に喋り始めた。
「ベルト様はこの国では法律で禁止されている、獣族の奴隷を地下で飼っていました……」
「私は、地下に入ってはいけない、と言われていたのですが、ベルト様にお客様が来ているということで、地下に呼びに言ったんです。そしたら地下で女の獣人を痛めつけ、そして、高笑っているのをこの目で見てしまったんです」
フィネアは思い出したくない婚約者の顔と、痛めつけられ、泣いている獣人を思い出し。少量の涙が目に付着している。
「無理はしなくていい、話せるところを話してくれ」
俺はこの国がどのようなところかを知りたかったが、この話を聞いて、よくわかってしまった。
「そして、そのことをベルト様に聞いたら……ここに送られてしまいました」
「そういうことか、ここに送れば意見を言っても通らないからな、ベルトが、獣人を飼っていると言っても最下層の人間なら、「何言ってるんだよ」「なわけねーだろ」っと見向きもされないからか……」
「飛んだクズだな」
お家に帰りたい……
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