切ない時間
その日、アツムからの電話もメールもなかった。
アタシは何もやる気がおきなくて、
ベッドに腰を下ろしながら、ぼんやりとテレビを見ている。
見ているといっても、ただ画像が目に映っているだけで、
番組の内容なんて、全然頭に入っていない。
――この前アツムの家に行くって話が出てから、アタシはどこか浮かれてた。
アツムはアタシと違って、社会人なんだから仕事が大切ってのも、
分かってるつもりだった。
でも――本当に『つもり』だったって、思い知らされた……。
『私と仕事、どっちが大事なの? 』って言う女の人の話をよく聞いたりする。
今までのアタシだったら、そんなの仕事に決まってるジャンって思ってた。
だって、何をするにもお金は必要だし。
仕事してなかったら、収入ないし。
将来にだって希望のきの字も見つからないって思ってたから。
でも、今はそういう女の人の気持ちがちょっと分かる。
『どっちが大事なの? 』の言葉の裏には『私のこと、愛してる? 』って言葉が隠れてるんだ。
面と向かって聞けないほど相手のことが好きなんて、かなり盲目の愛なのかも。
でも、男の人は言葉通りに捕らえちゃうから、言葉も気持ちもすれ違っちゃう……。
切ないな――。
アタシは付き合うってもっと楽しいことだと思ってたけど、
恋愛は切なくて、苦しくて、辛いこともあるんだって気が付いた。
――ねえ、アツム。
アツムはアタシのこと、どれくらい好きなのかな?
鳴らないケータイに問いかけても、答えなんて見つかるはずもない。
アタシはそのままベッドに仰向けになって倒れこむ。
白い天井がぼんやりと滲んで、アタシは静かに涙を流した。




