俺の婚約者(ウォーレン視点)
本日1話の投稿です
「ウォーレン、お前に婚約者ができる」
兄である現バレンシア侯爵に、執務室に呼ばれ、開口一番言われた。
「わかりました」俺の感情は動かなかった。
勝手に決められた怒りもなく、婚約者ができる喜びもない。
婚約者ができた事実でしかない。
俺は、前バレンシア侯爵の末息子、現バレンシア侯爵とは母親が違う兄弟となる。
前バレンシア侯爵は、すこぶる仕事はできるが、女癖が悪く、俺の母はそんな侯爵に、美貌を武器に自分からアプローチ、第2婦人の地位を手に入れた。
小さいころから、容姿が優れていた俺は、母親にいろいろな茶会に連れられて行った。
始めは、わからなかった俺も、物心ついてくると、いろんな人間がいることがわかってくる。
やさしい目、好奇心の目、嫉妬の目、野心的な目、いやらしい目。
第2婦人の子でも、一応バレンシア侯爵家の末息子の俺は、従者や、護衛のおかげで直接的な被害は回避できたが、怖い目にたくさん合って来た。若干の人間不信。
そんな俺に気を配り支えてくれたのが、兄である現バレンシア侯爵。兄の采配で俺は五体満足に生きていると言っていい。
13歳で王都の学園に入学してからは、身の危険から、宗貞の危険に変わり、人間不信(特に女性)を加速させた。
同級生からの、過剰なアプローチにうんざりし、教師からの特別扱い、同性の同級生からの嫉妬、いろんな事件や、未遂があり、平穏とは程遠い学園生活を送っていた。
そんなおり、今や、婚約破棄をやらかし、ふわふわピンク頭の男爵家へ婿入りした元皇太子の側近として仕えるように、兄のバレンシア侯爵に指示された。
13歳の頃の皇太子は文武両道とはいかなかったが誠実で、女性からのアプローチが激しく、俺と同じ悩みを持つ、若干、人間不信気味の同級生だった。
そんな皇太子が、ふわふわピンクの頭の男爵令嬢にほれ込み、婚約者である現バレンシア侯爵の娘に婚約破棄を宣言したことは記憶に新しい。
側近として皇太子を止めれなかった事、バレンシア侯爵令嬢に恥をかかせたことで、俺の株は下がり、第1近衛部隊所属から、第2近衛部隊所属へ降格。
兄である現バレンシア侯爵が俺を見る目・・・。信頼を無くした。
そんな、現バレンシア侯爵からの指示。
この婚約、結婚。必ず成功させなければならない。
現バレンシア侯爵から、婚約者であるゾルトラーク家3女12歳の話は聞いた。
10mはある丸太を3本入れることができるほどの大容量アイテムボックス持ち。
しかも時間停止で生き物を入れられる稀な逸材。
食べ物に目がなく、今、バレンシア侯爵令嬢と一緒に隣国バクシューレツ国に滞在中。
13歳で、王都の学園に入学予定。
稀な逸材をみすみす他の家に奪われる前に、学園入学前に婚約してバレンシア侯爵家に取り込みたいらしい。
今まで、恩を仇で返して来た俺にとっては、またとないチャンス。
俺のこの美貌なら、必ず成功するはず。生まれて初めて母に感謝した。
ゾルトラーク子爵家から、ユパ国へ3女が帰ってくる連絡を受け、俺は素早く動いた。
早めに顔を売っておくに越したことはないだろう。
早馬を走らせ、従者と共に10日間かけてゾルトラーク子爵家へ移動した。
門前で待っていた、ゾルトラーク子爵家の面々。
その中で、ひときわ小さい、12歳に見えない女の子を発見。
多分、女の子。ピンクのドレスを着て、軽く化粧をしている。
が、真っ直ぐな黒髪は短く、日に焼けた肌は浅黒い。
顔は、はっきり言って、どこにでもいる田舎娘。決して美人ではない。
女の子は、俺の顔を見て、ほおけた。
少しがっかりしている俺がいる。容姿に自信があり、女の子を虜にできた事は成功だ。
だけど、生涯の伴侶となる女性には、容姿ではなく、内面をみて欲しかったと心が訴えていた。
この子も、他の女性のように、嫉妬し、いがみ合い、自分の欲求を涙で通そうとするようになるのかと思うと、すこし憂鬱だ。
俺は、そんな事を考えているとは、表情に微塵も出さず、好青年を演じて、好感触でゾルトラーク子爵家の滞在を終えた。
次は、キスグ王都へ向かいます。




