休日の予定
学園での授業を終えた、ある日の放課後。
「今度の休日、一緒にお出かけしなぁい?」
あまり積極的に誘うことをしないエリンが、キリカとエリーゼに提案をしてきた。
「お、エリンからとは珍しいね。何かあるの?」
滅多にない友人からの誘いに、エリーゼは意外そうな顔をしている。
「今度王都でパレードがあるじゃなぁい? 一緒に見に行きましょう」
「そういえばそんな時期なのか」
この時期には、国を挙げての祭りが行われる。国が建立されたことを祝う祭り、建国祭だ。その日は王都の外から人が集まってくるほどの大きなお祭りで、王都の至る所でお店が立ち並び、昼間から飲めや歌えやの大騒ぎとなる。
その祭りの中で有名なのが、王都を巡るパレードである。騎士を先頭として、王族の乗る馬車が街中を回っていく。そこでは普段見ることのない王族たちを見ることができ、民衆にとっては一つの楽しみとなっていた。
「エリンって、そういう王族とか貴族みたいな煌びやかな世界好きだもんね」
「だってぇ、憧れるじゃなぁい? 私も華やかなパーティでドレスを着てみたいわぁ」
エリンは物語に出てくるような王族が過ごす生活に憧れている。いつかそんな世界に自分も行ってみたいとよく言っていた。そのため、彼女は憧れの王族を見れる機会があれば、必ず見に行っていた。
……ちなみに、エリンのあの口調は元からである。決して物語のお姫様に憧れて真似ているわけではない。
「私はいいぞ。特にすることもないしな」
「そうだね、私も――」
「ちょっといいか?」
エリンに向けて返事をしようとしたところ、エリーゼは後ろから声をかけられた。振り向くとそこにマルクがいた。
「何?」
「その……だな……。今度の休日建国祭だろ……。興味とかないか?」
マルクは気付かれないようにしているが、内心では喜びのあまり叫んでいた。
やっと彼女を誘うことができた。自分はやり切った。さぞ満足しているのだろう。
しかし、そう思っているのは彼だけ。実際にはただ興味があるかを聞いただけだ。誘ってすらいないのだが、心ここにあらずの彼が気付くことはない。
「一応興味はあるけど、それが?」
「え?」
マルクは誘ったつもりになっていたが、当然そうなる。となれば、再度彼女を誘う必要があるわけだが――
「そ、そのだな……。え、えぇと……」
終わったつもりになっていた彼にはその先を告げることはできない。勇気の貯金はすでに使い果たしていた。
「あれじゃねぇの? お前を誘おうとしてるんじゃないか?」
「私を? ああ、そういうこと」
「そ、そう。そうなんだ」
しかし、偶然キリカからのアシストが入り、何とか繋ぐことに成功する。
「でも、丁度今三人で行こうって話になっちゃったからね」
「そ、そうか……」
が、結局失敗に終わるとわかり落胆する。
「別にマルクも来たいなら、一緒に来ればいいんじゃないか?」
「ほ、ほんとか?」
けれど、まだ終わらない。女神からの手助けにより、再びチャンスが到来する。
「あんだけ人がいる中に行くんだ。女三人より、男が一人でもいた方が何かと安全だろ?」
「うーん……。まぁ、確かに……」
キリカからの尤もらしい提案に納得する。
そういった考えがキリカになかったとは言わないが、本当はマルクのあまりにもな対応を見かねて助け船を出していた。エリーゼの性格だと一生彼の誘いを受けることがなさそうに思い、彼を哀れんだためだ。
「エリンはどうだ?」
「いいわよぉ」
目を輝かせながら返事をする。彼女にとって、他人の恋愛は大好物だ。
「んじゃ、今度の休日は昼頃に集合だ。マルクも遅れんなよ」
「わ、わかった」
マルクは喜んだ。そして、同時に心の中でキリカを崇め奉っていた。
女神様、一生あなたについていきます。
キリカは神になっていた。




