放課後の一幕
学園で授業が終わり、ようやく放課後になったところ。帰り支度をしていると、ふいに教師から声をかけられる。
「エリーゼさんが今日の当番だったわよね? ちょっと教員室までこれ運んどいてくれない?」
指し示す先には授業で用いられた教材。それらはクラス全員の分があり、教壇に積み上げられている。
「えぇーー!? これからスイーツ巡りをしようと思ってたのに」
「当番なんだから文句言わないで。それじゃあ任せたわよ」
と一人先に教室から出て行ってしまう。
ガックリと項垂れるエリーゼ。
「仕方ない……。さっさと終わらそ」
諦めて運ぼうと教材に手をかけたところ、エリーゼに声をかける人物がいた。
「一人じゃ辛そうだな。手伝ってやろうか?」
「ん? マルクじゃん。いいの?」
「ああ。困ってるときはお互い様だからな」
「お、助かる」
同じクラスにいる男子生徒のマルクだった。気さくな話し方のため、普段から貴族令息を相手にしているエリーゼにとって話しやすい相手だ。
彼は教材を半分持ち、エリーゼとともに教室を出る。
「お前、放課後はいつもそうなのか?」
「ん? そうって?」
「さっきスイーツ巡りがどうとか言ってなかったか?」
「あぁ、そういうこと。時間があるときはしてるね」
「甘いものばかり食べて太らないのか?」
「甘いものは別なんで大丈夫ですぅー。……というか、女の子にそんなこと聞くとか失礼じゃない?」
エリーゼだから気にしてないが、一般女子からすると気にしていることだろう。
「あ、わりぃ。つい……」
「もう少し気を付けた方がいいよ」
「他の女子なら気を付けるけど、お前だしな」
「失礼ね! 私だって女の子だよ!」
と他愛もない話をしていると、教員室まで到着する。
教材を中に運び終え、ようやくミッションを達成する。
「今日はありがとう。助かった」
「ああ。また、何か困ったことがあったら手伝うぜ」
「おぉ。さすが男子、立派な心がけだ」
それから少しの間が流れる。
「そ、それでさ、この後って時間あるか? もしよかったら――」
「ごめん、友達を待たせてるから、また今度で」
「そ、そうか……」
じゃっ、と言ってエリーゼは去っていく。教員室の前でマルクは肩を落とすのだった。
「おまたせ!」
教室に戻ってくると、待たせていた友人二人に話しかける。
「あらぁ、早かったねぇ」
「お? じゃあ行くか」
エリンとキリカは鞄を持って立ち上がる。そのまま学園を出て、三人で街中へと繰り出す。
「そういえば、マルクが一緒にいなかったか?」
どの店に行こうか探している最中に、ふとキリカが聞いてくる。
「手伝ってもらってた」
「まぁ!」
「……あいつ、よくお前に話しかけてるよな。お前に気があるんじゃないか?」
「私に?」
少し考えてみるが、
「ないない。あっちも私が話しやすいから話しかけてるだけだって」
と一蹴する。
「……てか、お前はあいつのことどう思ってるんだ?」
「マルクのこと? 男子にしては話しやすいなと」
「異性として興味ないのか?」
「えー、だって普通じゃん。顔とか」
「お前、面食いだったのか」
「え? 違うけど?」
何を言ってるんだとキリカが怪訝な顔をする。が、エリーゼはそれを説明するつもりはない。
というか、普段から貴族令息たちを相手にしているのだ。おまけに身近に王太子までいるわけで、顔だけで言えば彼は相手にならないのだ。そもそも、エリーゼとしては復讐相手を見つけるという目標があるわけで、恋愛などをしている余裕はない。
自分に好意を持っているかどうかなど微塵も興味がなかった。
「あ! あそこの店にしようか」
と、一人で店の中に入ってしまう。
その様子を見ていた二人は、彼の望みは叶うことないんだろうなと不憫に思いながら、エリーゼの後を追うのだった。




