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第5話 祖母襲来

 眼光だけで人を蒸発させそうな祖母をなんとか落ち着かせ、工房の中に入ってもらい椅子に座って貰った。


 そしてもう少し落ち着いてもらえる様に紅茶を出すとゆっくりと飲み始めテテノに礼を言った。


「それで、お婆ちゃんどうしたの?かなり物騒な事を言ってた様な気がしたんだけど」


「そりゃ、あんたの母親を禁忌の錬金術で若返りの秘薬の材料にしてやろうと思ってね」


「え?そんなの作れるの?」


「作れるわよ。私が若い頃はもっと世の中が殺伐としてたから少しがんばれば禁書とか読み放題だったからね~今は良い時代になったもんだよ。作り方を知りたいかい?」


 別に若返りたいとは思わなかったが錬金術で作れるものは非常に興味があったので頭を抱え悩んだが、その誘惑になんとか勝ち断った。


「聞きたいけど聞いただけで不味い気がするから止めとく……」


「それが懸命だね。ろくな物を材料にしないからね」


 そう言って笑う祖母の年齢も不詳なのでもしかして使った? のでは無いかと思ったが、テテノは怖くて聞くに聞けなかった。


「お婆ちゃん、会えて嬉しいけど急にどうしたの?」


「ん?言った通りあんたの母親を殺しに来たんだけど、気配を感じないからここにはいないんだよね?」


「うん。たぶんいないはず。たぶん」


 母親の事を話題に出すと明らかに祖母の顔色が変わるので聞くのはとてもかったが再度尋ねる。


 数日前に魔女の国にいる祖母の元にテテノの母親から手紙が届いた。


「ママ~。この手紙が届いてる頃には新しくできた旦那と逃げてるから気が向いたらテテノを助けてあげてね!きっと私の押しつけた借金で元気に困ってるはずだから」


 他にも何か書いてあった様だったがそこまで読んで燃やしたのでそれ以上の事は分からないと煙管をふかしながら怒っていた。


「それで?いくら借金があるんだい?あれだったらこの工房売って返済にあててもいいよ」


 工房を売ったぐらいじゃ返済できないんです……と思いながら嘘を言っても仕方ないので、祖母に借金の額を伝えた。


 すると祖母は咥えていた煙管を落としテテノに謝った。


「思ってた以上に耳が遠くなってたようだよ。………すまないがもう一度言ってくれるかい?」


 再度テテノが伝えるとぽりぽりと頭を掻きながら目の前の分厚い木でできたテーブルを拳でたたき割り肩で息をしてから椅子に座りテテノに話しかけた。


「それで?テテノはどうするつもりだい?暗殺者に賞金首として依頼をだすかい?」


「さっ流石にそれはしないよ」


 目の前の祖母の怒気に恐怖したが、自分を心配してくれての事なので、錬金組合やイオード商会のとのやりとりを伝えた。


 難しい顔をしながらテテノの話を聞いていたが、説明し終える頃には少し怒気が消えていた。


「あの小僧が立派になったもんだ。昔の私を褒めてやりたいよ。と言うかあの子はどうやって借金を増やしたんだい?魔女の国にも話が来るぐらいローレットやスノーベインは好景気だって聞いたよ?錬金術師の仕事も多いだろうに」


 祖母の言う通り数ヶ月前に王都が魔神達の襲撃された際に、家などはリノセス公爵と言われる貴族がどういう方法までは分からないが壊れた王都の建物等を直してくれたので生活は早く元に戻ったのだが消耗品等の回復アイテム等はかなり使われたので今でも少し品不足気味だった。


「お母さん、儲かるからって色々作ってお金作って、毎日賭け事いって全部負けてたみたい……」


「あの子は……なぜ賭け事が弱いのに賭け事をするのか……」


 祖母の問いに対する答えを持っていないテテノは苦笑する以外は出来なかった。


「額が額だけに、もっと絶望してるかと思ったけど思ったよりは元気そうだね」


「いや……感覚が麻痺してるだけだと思うけど……お母さんがこの工房を継いでから?私が生まれてから借金が無かった事がないから慣れてるのかな?お婆ちゃんの時代は王都で一番って言われてたって聞いたけど」


「私だったから一番という訳じゃないよ。たまたま環境がよかっただけの話さ。弟子捕まえてあーしろこーしろしか言った記憶がないからね。それに錬金術師が少ない時代だったからね~」


 昔の事は本や母親の話でしか知らなかったが、それでもこの大きな王都で一番と言うのは絶対に簡単な事ではないと知っていたので、テテノは祖母を尊敬の眼差しで見ていた。


「とりあえずしばらくはテテノの事も気になるしあの馬鹿娘が帰ってきたらすぐに捕まえられるようにまたこの工房に住み着くけどいいかい?」


「え?私としてはありがたいけど……お婆ちゃんも魔女の国でお仕事あるんじゃないの?」


「錬金術師はこの工房を出る時に引退したからね、薬師としては魔女の国で働いてたけど店は売り払って来たから大丈夫だよ」


 無駄に行動力がある祖母に軽く目眩を覚え私が断ったらどうするつもりだったのと声をかけるとその時は冒険者にでもなって適当に稼いで家でも買うと男前に笑っていた。


(この行動力の高さがお母さんのお母さんだ……)


「お婆ちゃんが使ってた部屋は私が使ってるけどいいかな?空き部屋ならあるけど……」


「雨風をしのげたらどこでもいよ。と言うか私がここで働いていた時はいつもこのテーブルで寝てたからね」


「……そんな大事なテーブルをたたき割ったんだ」


「何かこう殴りやすい作りなんだよねこのテーブルは」と豪快に笑いながらテーブルの割った部分にアイテムバッグから小瓶を取り出し、その液体を割れた部分に塗り貼り合わせると、根を張る様に木の繊維がくっつきテーブルが元の形に戻った。


「おおう……私が作った根張り樹液より効果が出るのがはやい……」


「へー、テテノももうこれを作れるようになってるのかい。立派になったもんだ。Bになっても作れないヤツも多いのにね」


「確かに難しいのもあるけど、これを一個買うなら新しくかった方が早いし安いからあんまり売れないから作らないんじゃない?」


「確かにそれもあるね~。という訳でこれからしばらく厄介になるけどよろしくね。テテノ」


「うん。こちらこそよろしくお婆ちゃん」


 そしてテテノが祖母の荷物を部屋に運ぼうとしたが重くて動かす事も出来なかった。


 その光景を笑いながら見ていた祖母は片手で軽く持ち上げテテノを驚かせた。


「お婆ちゃんってお婆ちゃんだよね?」


「そだね。百は軽く過ぎてるね」


 何か納得いかないとテテノが笑いながら先を歩き二階にある空き部屋に案内し扉を開けた。


 そこは確かに空き部屋だったが綺麗に掃除されており、いつでも人が入られる状態だった。


「へー。綺麗にしてあるじゃないか」


「数日前になにか無性に掃除がしたくなって綺麗にしたんだけど……今思えば神様のお告げだのかもしれない……」


 そう言ってテテノは肩を落としたので祖母は笑い、その神様もう少し気を利かせてくれて馬鹿娘が逃げる前に私を呼んでくれたら良かったのにと言って荷物を部屋に運び込んだ。


「さてと、テテノ!ご飯でも食べにいこうか!」


「え?私……そこまでお腹減ってないし、もう一仕事するつもりなんだけど」


 祖母は大きくため息をついてからテテノの頭の上からつま先まで何回も視線を動かした。


「どうせ。真面目なあんたの事だから今日のご飯もパンと卵だけとかだろう?」


「え?なんで分かったの?」


「死相が出てるからだよ!」


「はい!?嘘だよね!?」


「嘘だよ。あんたもいっぱしの錬金術師なら自分の体を大事にしな。食べるものはちゃんと食べて寝るときはしっかりねる。土台がしっかりしてして無いと物は作れないよ」


「うぐっそうなんだけど……借金が……」


「逃げたくなった時も体が元気じゃ無いと逃げられないだろ?まずは体だよ。というか久しぶりにあった祖母とご飯に行くのが嫌なのかい?」


 そう言われては何も言い返す事が出来ないテテノは祖母と夕食に行こうと決め、仕事は明日からから頑張ろうと心に決めた。


「私もお婆ちゃんとご飯に行きたいからいいけど、高い所はむりだよ?」


「借金持ちの孫に奢らせるババァが何処の世界にいるんだい。私が出すからさっさと行くよ」と男前な祖母が階段を降りて行ったのでテテノも慌てて後を追った。


 そして火の確認と工房の戸締まりをして玄関に鍵をかけると祖母が待っていた。


「よし、合格。いまので確認と戸締まり怠ってたら一時間は説教だったけどちゃんと出来てるね」


「いや、流石に急いでてもそれぐいはするよ」


「あんたの母親もそうだけど出来てない奴の方が多いんだよ」


 お母さんの代わりに私がしてたな~とか考えていると、祖母が歩き始めたのでテテノも後をおった。


「それでお婆ちゃん何処に食べにいくの?」


「ん?王都も様変わりしたけど私の時代からやってる店もまだまだあるからそこに行って見ようかと思ってね~」


 昔を懐かしむ様に辺りを見ながら祖母が嬉しそうに歩いていたので、テテノも邪魔をしない様に後ろをついて行くととんでもない所に連れて行かれた。


 その場所は王都でも有数の高級ホテルで他国から着た人にお勧めを聞かれたこの場所と答えておけば間違いはない竜の顎と呼ばれる所だった。


「いやいやいやいやいや!お婆ちゃん!ここ貴族とか王族が来るホテルだから!」


「ん?来るだけだろ?金さえ払えば無名の魔法使いや村娘が来ても文句は言われない筈だよ?夕食たべるだけだしね」


「無名の魔法使いや村娘はこんな所に来ないから!借金持ちの錬金術師もこないから!」


「あんたも私の孫ならドンと構えな!さっさといくよ!」


 何故か怒られたテテノは色々と諦め祖母の後を着いていった。


 貴族達がいるロビーの中を自信満々に祖母は歩き、受付で尋ねた。


「少し聞きたいけどいいかい?」


「はい。大丈夫ですよ」


「このホテルは泊まらなくても夕食を楽しめたと思うんだけど二人いいかい?」


「はい。ここに来られるお客様は夕食だけを召し上がられる人も多いので大丈夫ですよ。二名様ですか?」


「ああ、景色が良い場所でフルコースでお願いするよ」


「分かりました。ではこちらへ」


 テテノが建物の隅で置物になっている間に話が決まったの慌てて二人の後を追った。


 それから先の記憶は美味しい物を食べて美味しいお酒を飲んで美味しいとしか言った記憶しかないまま、どうやって工房に戻って来たのかも覚えてないまま次の日を迎えた。




「……美味しかった以外の記憶が無い。お酒も飲んだけど二日酔いもしてない……」


 いつも起きる時間に目が覚めたがいつも以上に力が漲っていたので顔を洗ってから、一階の工房に降りて行くと何か良い匂いがした。


「ん?おはようさん。私がいうのもおかしいけどテテノも早いね」


「お婆ちゃんおはよう……しっかり食べて良く寝るのが大事って意味がちょっと分かったよ」


「そういう事だね。朝ご飯も出来たから食べな」


 テーブルの上にはパンやサラダなどが置いてありいつもテテノが食べている朝ご飯より遙かに豪華だった。


「おばあちゃん、何でもできるね」


「いや、娘の育て方を間違ったからできない事はあるよ」


 多額の借金を押しつけられたが母親を特に恨んでいないテテノは苦笑しながら話の流れを替え祖母と一緒に朝食を取り始めた。


「お婆ちゃんはしばらくいるって言ってたけどどうするの?また錬金術するの?」


「いや、この国から離れる時に錬金術は止めたからしないね。また錬金術師になるのも面倒だしね」


 元Sクラスの錬金術師の祖母が手伝ってくれたら返済はすぐなんだろうな、と考えたが祖母には祖母の考えがあるのでそれ以上は深くは言わなかった。


「お婆ちゃんの錬金術が見たかったけどしかたないね」


「家事は私がやってあげるし、どうやれば効率よくやれるかも教えてあげるけど錬金術はテテノが責任を持ってやりな。もっと高見の錬金術師を目指すなら簡単な錬金でも経験値になるさ」


「がんばります。お婆ちゃんに任せたら私の仕事が無くなりそうだから錬金術は私が責任を持って頑張るよ。家事してくるだけでも凄い助かるし」


「あんたもほっとくと風呂にも入らずずっと錬金してそうだしね」


「はっ反論できない……」


 そんな他愛も無い話をしながら二人で楽しく朝食を取った。

次回の更新は18時台予定。


雨の日の犬の散歩は犬自身が行く気がないので連れて行っていいか迷う……

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