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第9話 ご協力、ありがとうございます。

 「とりあえず、ローゼリィが帰ってくるまで、リュリにはもうしばらく彼女のフリをしてもらうしかなさそうだね」

 殿下の言葉に、レヴィル先生がれいのペンダントを返してくれた。

 「大変だと思うけど、やれるかい?」

 「あ、はい。大丈夫です」

 手のなかのネックレスを見る。これさえ身に着ければ、ドレスの似合う容姿にはなれるのだけど。

 「う~ん。でも触ると正体がバレるっていうのもなあ……」

 殿下も同じところを心配したらしい。

 「先生、なにかいい魔法はありませんか?」

 「ふむ。そうですな。一時的に時を進めておきましょうか」

 時を?

 「長いことかけておくと、元に戻りづらくなるので、この学園にいるときだけと、限定させていただきますが」

 それでも、触ってバレなくなるのなら、ありがたい。

 「お願いします」

 完ぺきな身代わりをするためにも、是非。

 あたしが頭を下げると、さっそく先生が詠唱を始めた。

 ブツブツと、あたしにはよくわからない言葉。

 そして、ブワッと現れた虹色の光があたしを包む。

 光が消え、あたしの姿に変化が……あれ?

 

 ポコン。


 ドレス、特に胸の部分、へこむんですが。

 前みたいに、「ボコン」ではなく「ポコン」だけど。

 顔も触ってみても、さほど変化した気がしない。手足がスラッと伸びた印象もない。おチビちゃんのままのような……。

 「あの、先生、あたし、どれぐらい年齢を重ねたんでしょうか」

 これでは、一日、二日程度なのでは? よくて一か月。

 「ローゼリィさまと同じ、18歳まで進めたが……」

 先生も絶句している。

 「……変化ないな」

 ルッカさまが呟いた。

 アウリウスさまは、あさっての方向を見て、肩を震わせている。あれ、きっと笑っていらっしゃるわね。珍しく表情を崩したってことにはなるけど。

 「大丈夫だよ、リュリ。少しは変化しているから」

 殿下が慰めてくれた。

 けど。

 (あたし、三年経ってもほとんど変化しないってこと?)

 結構、傷つく。

 あたし、今はまだお子さま体型だけど、いつかは、お嬢さまのような、出るとこ出てへっこむ所はへっこんだ、そんな素敵な容姿になれると思ってた。味気ない、砂色の髪だって艶やかに輝いて、誰かに好きになってもらえる容姿になるんだって。

 それが、それが、それが。

 三年経っても変化なしなの?

 いつか誰かにっていうのも、夢のまた夢?

 突きつけられた未来の現実に、かなり落ち込む。

 「女の子は恋をすれば変わるっていうし。リュリだって、いつかは僕たちが驚くぐらいキレイになるよ」

 そう? そうなの?

 殿下、その言葉、信じてもいいのですか?

 泣きそうになるのをグッとこらえて、ペンダントを自分の首にかける。

 光に包まれ、お嬢さまへの変身完了。

 「さて、と。じゃあ、しばらくは、リュリにローゼリィのフリをしてもらうとして。アウリウス」

 「はっ」

 「きみに、リュリの護衛を頼むよ。リュリ一人じゃ、なにかと心細いだろうからね」

 無言のまま、アウリウスさまが頭を下げる。

 「ルッカも、手の空いた時はリュリを助けてやってくれないか」

 「わかりました」

 「ああ、それと、先生。今後の魔術の授業なのですが」

 「ああ、承知してます。リュリに参加させることは控えておきましょう」

 「そうしていただけると助かります」

 そもそもの魔力の量がお嬢さまとあたしでは違いすぎる。そのあたりのことを考慮してのことだろう。

 「さて、あとは僕のやることだけど……」

 殿下が紙をたたんで、あたしに返してくれた。

 「ミサキの行動に気をつけるよ。狙われているのは、僕とアウリウスみたいだからね」

 「はい、お願いします」

 このお二人がミサキさまと「らぶらぶ」にならなければ、お嬢さまが危険に晒されることはない。……はず。

 「さあ、ローゼリィ。教室に戻ろうか。立てるかい?」

 「え? 大丈夫です。すみません」

 一人で寝台から降りる。すると、グイッと腰を抱き寄せられた。

 「ほら、危なっかしいからちゃんとつかまって。ローゼリィらしくね」

 ああ、そっか。お嬢さまらしく、殿下に寄り添わなくっちゃ。

 こういう場合、一人でスタスタと歩いちゃいけないんだわ。間違っても、殿下やアウリウスさまの後ろをチョロチョロとついていくなんて出来ないし。

 「大丈夫なのかな、あれ」

 医務室を出る間際に、ルッカさまの呟きが聞こえた。

 「仕方ないだろ。あれをオレたちがかばっていくしかない」

 ため息混じりのアウリウスさまの声。

 「魔力に関しては、少し気になるところがあるんだがな」

 そう言ったのは先生か。

 殿下の完璧なエスコートで廊下を歩いていく。

 お嬢さま。

 とりあえず、バレましたけど、なんとかなりそうです。

 皆さま、協力してくださるそうですし。

 この調子なら、卒業パーティで何があっても、ヒドいことにはならなさそうですよ。

 大丈夫、平気……ですよ、ね?

 なんとなく不安になって、思わず胸のペンダントを握りしめる。

 ホッと出来るはずなのに、なぜだろう。

 心がザワザワする。

 第九話です。

 案ずるより産むがやすしだったね、リュリ。

 周囲は意外と優しいぞ……!?

 昔、中学のころは自分も胸が大きくなりたかったなあ。(遠い目) え!? 今!? 結果!? ……想像にまかせます。(女は胸じゃないのよぉっ!!)

 これからもよろしくお願いします。

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