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第42話 現実は、げぇむじゃない。

 あたしが荒唐無稽な話をお嬢さまから伺っている間、宿坊に残ったミサキさまとライネルさんのほうでも、スゴいことが起きてきた。

 なんと。

 ライネルさんが、ミサキさまにプロポーズしたのよぉっ!

 「俺と結婚してほしい。聖女だったお前とじゃ釣り合わないかもしれないけど、俺はずっとお前が好きだったんだ」的な。

 騒ぎを聞きつけて駆けつけたあたしたちが見たのは、寝台の上で、顔どころか全身を真っ赤にしてオロオロするミサキさま。少しでも顔を冷やそうとしてるのか、頬に手を当てて動揺なさってて、すごくカワイらしい。

 「俺じゃ、ダメか?」

 ギャラリーが増えても、ライネルさんは気にせずにグイグイいく。

 「やっ、でもわたし、そんなフラグ立ててないっ……」

 ホント、ミサキさまにとって突然の、思いがけないプロポーズだったんだろう。真っすぐ見つめライネルさんに、顔を合わせられなくなってる。

 「人が人を想うのに、フラグなんて必要なの?」

 そう声を上げたのは、お嬢さまだった。

 イェルセンさまに手をとられ、エスコートされながら、その宿坊に入っていく。

 「人が人を好きになるのに、ルートも何もいらないんじゃなくって? だって、わたくしたちはここで生きている。ゲームのシナリオ通りでなくても構わない。自分の意志で思うように生きればよろしいのですわ」

 そう言い切って、またイェルセンさまと目線を交わし微笑み合う。……って、まさか。

 「まさか、あなた、イェルセンルート攻略したの?」

 先に質問したのは、ミサキさまだった。

 「ええ。先日、イェルセンからプロポーズを受けましたの」

 うええええっ! 声こそ出さなかったけど、驚き、殿下やアウリウスさまを見上げる。

 お二人も、これ以上ないぐらい目を見開いていた。目ん玉、こぼれ落ちちゃいますよ。

 「ねえ、ミサキ。アナタの知るゲームには、こんなルートは存在しなかったでしょう?」

 呆然としながらも、ミサキさまが頷いた。

 「これが、ゲームとは違う、わたくしたちが生きているという証拠よ。何かの強制力が働くなんてことはない。物語のキャラクターなんかじゃない。ここにいるのは、生きて動いて考えることの出来る、わたくしたちなんですもの。未来はシナリオ通りじゃない。いくらでも変化するのよ」

 シナリオ通りに進めば断罪される。

 未来を悲観していたお嬢さまから、そんなお言葉が出るなんて。

 イェルセンさまとの恋が、そうさせたんだろうか。だとしたらスゴすぎる。恋のパワー。

 「……よく言うわ。人の最推しを奪っときながら」

 ミサキさまが、お嬢さまを睨みつけた。

 「気づいていたんでしょ? わたしの真の目的が殿下じゃなくって、イェルセンだってことに」

 「ええ、まあなんとなくですけど。彼はアナタのやろうとしていたルートの隠しキャラ。殿下ルートの先に攻略できる相手でしたからね」

 そうだったの?

 ミサキさまの目的って、殿下じゃなかったの?

 さすがに衝撃が大きかったのか、殿下の上体がグラリと揺れた。

 「わかってて、推しを奪っていくなんて、サイテー」

 「あら。でもわたくし、ライネルも推しだったのよ。初回攻略は彼だったもの」

 話の成り行きを聞くだけになっていた、ライネルさんも固まっている。自分の名前が挙がるとは思ってなかったみたい。

 「フツー、初回攻略は殿下じゃないの? 王道だし」

 「普通なんて、面白くありませんわ。それより、アナタはライネルが嫌いなの?」

 あ、そうだ。プロポーズの答え、答え。

 「……そんなわけないじゃない。彼との恋愛スチルだって、コンプリートしてるし。生まれてからずっと一緒にいて、いいなって思ってはいたし……」

 恥ずかしいんだろう。語尾が小さく消えていく。

 「ミサキ……」

 ミサキさまの悪くない反応に、ライネルさんも頬を赤くした。

 「『君の瞳に~』以外でも、彼のスチルはコンプリ済みよ。ああ、そこのレアキャラ執事もだけどね」

 最後のは、ミサキさまの負けん気だろうか。

 「え? じゃあ、ミサキ、アナタどこまでシリーズをやりこんだの? 誰を攻略したのよ」

 お嬢さまは、別の所に食いついたみたいだった。目を輝かせてミサキさまを質問攻めにしている。

 ミサキさまもまんざらでもないようで、ライネルさんのプロポーズそっちのけで、うれしそうにお嬢さまと「げぇむ」について語りだした。

 「いや、二期に最推しは、あのリクウィエルでしょ。あの金の瞳で見つめられて、低~い声で囁かれると、たまらないもの」

 「そうね、あれはイケボよね~。ただのイケメンってだけじゃなくって、抱える闇がね~。敵との禁断の愛っ! 捨てがたいわ」

 「チョロい王道キャラの殿下より、ああいう影のある男のほうがねぇ、墜としがいがあるっていうのか」

 「あー、わかる、わかる。たまらないわよね~」

 「でも、アウリウスルートも捨てがたいわよ。あの『あなたを守る剣となりましょう』的な? いかにも騎士って感じのセリフとかっ! キュンキュンくるわよ、あれ」

 「それを言ったら、ルッカルートもヤバいわよ。健気な感じで『ぼく、頑張るね』って感じで攻めてくるんだもん。ゾクゾク来ちゃう」

 「そういえば、セルヴェスティルートには二通りのエンディングがあるって知ってた? スチルも当然二通りあるのよ」

 「あ、知ってる、知ってる。聖獣ルート通らないと行けないけど。人型ルートもあるのよね」

 「でも、オーウェンルートもヤバいわよ。だって、あの隠しスチルッ! 禁断のBLプレイよね、アレ」

 「ああ、あのオーウェンとアウリウスのヤツよね。わかる、わかるー。あれ、絶対腐女子意識してるわよねー。異母兄弟の許されざる愛ってかんじ?」

 「それもさ、アウリウスをクリアしてるのと、してないのでスチルが少し違うのよ。それもまたおいしくて」

 「ええっ、そうなのっ? どうしましょう、わたくし、片方のスチルしか集めてないわっ!」

 「追加イベントだったからね~。せっかくだから、お二人そろっていることだし、リアルにやってもらうっていうのはどうかしら」

 「あっ、それいいっ! それ名案っ!」

 なんか、お二人だけで盛り上がってる。

 イェルセンさまは、ほほ笑ましくその様子をご覧になっているけど、置いてきぼりのライネルさんはポカンとしてる。

 そして、こちらに残った皆さまは……。


 「なんか、恐ろしいことを言われてる気がするぞ」

 「ぼく、また鳥肌立ってきた」

 「チョロい王道キャラ……」

 アウリウスさま、ルッカさま、殿下、それぞれの反応。

 自分たちをネタに話に盛り上がる二人の乙女。褒められてるのか、けなされてるのか。多分、判断がつかないんだろうなあ。どっちかというと、「好き」というより、「どうやって墜とすか」に重きを置いてる感じだもんね。

 そういう状態で、「好き」と言われても、手玉に取られてるみたいで悩むんじゃないかなあ。

 う~ん。少しだけ同情します。はい。

 第四十二話です。

 お嬢さまとミサキのトンデモ会話の回。

 ゲームの恋愛対象って、まあ、こんな扱いだよね。多分。

 私の周りには乙女ゲーム好きはいなかったので、よくわからないのですが。(ゲームに関しては、ぼっちだったんだよぅ。グスン) それが好きな者同士で話すのって、きっと楽しいんでしょうね。(いいなあ…)

 今のところ、だんごの近くで好きな話に興じてくれるのは、『ガ○ダム』オタしかいませぬ。というか、毎日『ガン○ム』ネタを聞かされてます。「二次創作してーっ!!」とグイグイ押されます。(特に、『種』)……観てたけど、そんなに知ってるわけじゃないんだけど……。(平成三部作のほうが好き)

 や、やるしかないのか!?

 これからもよろしくお願いします。

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