↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/44

第31話 尋問。異議ありっ!! 大爆発っ!?

 キィッ……。


 あたしの叫びが届いたのか、軋んだ音を立てて、扉が開かれた。

 外は暗く、部屋の外の回廊には明かりが灯されていた。

 「出ろ」

 そう短く告げたのは……。

 「アウリウスさま……?」

 その背後には、白い法衣をまとった神官さまたち。

 助かったの? 出られるの?

 そう思えたのは一瞬だった。

 「ローゼリィ・カルティミラ。これより、お前を異端審議する」

 え? どういうこと?

 異端? あたしが?

 「ちょっ、ちょっと待ってくださっ……、痛っ!」

 強引に腕を、身体を引っ張られ拘束される。手枷と胴に巻き付けられた縄。手枷は、鍵を回されると同時に、不思議な紋様が浮かび上がった。これ、おそらく魔法を封じる拘束具だ。

 「歩け」

 グイッと縄を引っ張られ、回廊に連れ出される。

 「あっ、セルヴェッ!」

 ボトリとセルヴェが手の中からこぼれ落ちた。踏まれはしなかったものの、その弱った身体は、床のうえで身じろぎ一つしない。

 「アウリウスさま、セルヴェがっ!」

 縄を持つアウリウスさまに訴える。

 「ぐずぐずするな」

 床に落ちたセルヴェを一瞥しただけで、立ち止まったあたしを強引に引きずっていく。

 いつものアウリウスさまじゃない。アウリウスさまは、怖いところもあるけど、そんな冷たい人じゃない。こんな乱暴に人を引っ立てるような人じゃない。

 それなのに。

 「セルヴェッ!」

 よろけながら、転ばないように歩くしかないあたしは、その名を呼ぶことしか出来なかった。


 あたしが連れてこられたのは、神殿の中にある、大きな空間。

 たくさんの紋様が描かれた白っぽい壁。立ち尽くすあたしを取り囲むように設けられた階段席。すり鉢の底にも思える場所に立ち、上から見下ろしてくる聖職者たちの視線を浴びれば、自然と身体が震えだす。

 ――怖い。

 血液が足元で滞っているような感覚。違う誰かの目を通してみているような世界。口の中の味がおかしい。吐きそうなほど気分が悪い。

 あたし、どうなるの?

 何も悪いことなんてしていない。守護獣を隠したりなんてしていない。

 女神さまを信奉しているし、異端な考えを持ったこともない。

 それなのに。

 

 「これより、カルティミラル公爵令嬢、ローゼリィ・カルティミラの異端審問を始める」


 厳かに告げられてしまった宣告。

 そして、壇上に佇む見知った人の姿。

 ナディアード殿下と傍に控えるルッカさま。

 殿下は、最高位の神官さまと並んで、こちらを見下ろしている。

 (助けてくださる……んじゃないの?)

 感情の読み取れないお二人の視線に、恐怖を覚える。

 あそこにいるのは、本当にあたしの知るお二人なんだろうか。すぐそばで、縄を持ったままのアウリウスさまもそうだ。

 お三方とも、どうしちゃったんだろう。

 神官さまと変わらない、ううん。神官さまより恐ろしいお顔をされている。

 「単刀直入に訊ねる」

 神官さまが口を開いた。

 「聖女の守護獣、セルヴェスティをどこに隠した」

 え?

 「その方が、魔術を使い監禁していることは、調査済みである。おとなしく答えることが、身のためであるぞ」

 「あたし、隠していませんっ!」

 「偽りを申すでない。そなたが、聖女と王太子殿下の仲を不満に思い、聖女を貶めようとしていること、すべて調べがついている」

 「そんなっ!」

 「守護獣を監禁し、聖女の力を削ぐつもりか」

 「そんなことしませんっ!」

 「だが、実際、守護獣は姿を現さない。それはお前が魔術で監禁しているからだろう」

 「違いますっ!」

 「大人しく守護獣を解放し、殿下と聖女の結婚を認め身をひくならば、まだ赦されもしよう。だが、このまま反抗を続けるのであれば、破門、そして厳しい処断が待っていることを心しておいた方がいい」

 それは、確実なる脅し。何を言っても認めてもらえない。

 守護獣が見つからなければ、あたしは処刑される。

 そして、殿下はミサキさまと結婚される。

 ……って、え? ミサキさまとの結婚話は無くなったんじゃないの?

 信じられなくって、殿下を見上げる。

 ウソだ、とおっしゃってください、殿下っ!

 それじゃあ、お嬢さまのお立場はどうなるんですかっ!

 その眼差しに、いつもの優しさは感じられず、冷やかで、すがるものは何も残っていなかった。

 「さあ、聖女に赦しを請い、守護獣を返すのだ」

 神官の言葉と同時に、ミサキさまが壇上に現れる。白の法衣をまとい、そっと殿下に寄り添うように立つ。

 一瞬、殿下とお二人で、柔らかな視線を交わし合う。その姿は、どう見ても仲睦まじい恋人同士。

 もうそこに、「きみとローゼリィを守る」とおっしゃってくださった殿下はいない。あの舞踏会の時、あたしを護ってくれた力強い腕もない。

 お嬢さま。あたし、何か間違ったことをしたようです。あたしたちを助けてくださるとお約束くださった殿下が、あのようにミサキさまと仲良くされて。ルッカさまも、アウリウスさまも、お二人のご様子に驚かない。それどころか、それを当たり前のようにほほ笑ましく見ていらっしゃる。

 まるで、足元の床が崩れて、自分だけがその下に広がる闇に呑み込まれたような感覚。もう、あたしたちには、誰の味方もいない。

 恐怖よりも絶望に、膝から崩れ落ちる。

 そこへアウリウスさまが近づいてくる。

 無言のまま、首に手が伸びる。掴まれたのは、銀の鎖。

 「いっ……!」

 力任せに引っ張られ、細い鎖が肉に食い込む。ブチッと鈍い音を立てて、鎖が切れペンダントが弾け飛ぶ。ムーンストーンが、乾いた音とともに床に転がる。

 同時に光が溢れ、あたしが元の姿に戻る。

 

 「これは、いったいっ……!」

 「ローゼリィ嬢は偽者かっ?」

 

 居並ぶ神官さまたちがどよめく。

 異端なのは、お嬢さまなのか、それとも成り代わっていたあたしなのか。神官さま同士、顔を見合わせ、意見を交わし合う。

 

 「その女は、魔女よっ!」


 鋭く、ミサキさまが叫んだ。

 「ローゼリィさまを亡き者にして、すり替わっていたのよっ!」

 ざわめきが一段と大きくなった。

 真実を知っているはずの殿下たちも、何も言ってくれない。あたしとお嬢さまの事情を、誰よりもご理解いただいていたはずなのに。それどころか、殿下はミサキさまを抱き寄せられ、あたしから彼女を守るように立つ。

 「正体を現したな、魔女め」

 その言葉は、誰が発したの? 殿下? ルッカさま? それともアウリウスさま?

 すべてを認められない、受け入れられないあたしは、その認識すら出来ない。

 「魔女」とされてしまえば、あたしは処刑されるしかなくなる。魔女は、火あぶり。それが常識。

 「や……。イヤ……」

 唇がわななく。瞼は閉じることを忘れ、カタカタと身体が震えだす。

 誰か。誰か助け……て。


 ――イイダロウ。 

 (えっ……?)


 ドオオオオンッ……!

 

 驚く暇もなかった。

 背後から爆風と轟音に襲われ、身体が前へと転がされる。

 一面に広がる土煙。呻き声と、怒声が入り混じる。

 

 「我が乙女を『魔女』呼ばわりとは。覚悟は出来ておるのだろうな。『偽りの聖女』よ」


 誰?

 第三十一話です。

 そんな簡単に助けてもらえるわけがないじゃないですか、の回。

 敵もさる者引っ掻く者。一筋縄ではいきませんよ。

 殿下たち、どうしちゃったんでしょうね。アウリウス、ヒドいですよ。首、痛そう……。

 まあ、そのあたりは後々、シッカリ反省してもらいましょう。うん。

 これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。