喫茶御伽
翌朝――。
本部の自室。輝夜は無言で荷物をキャリーケースへ詰め込んでいた。必要なものを一つずつ収めていくたびに、胸の奥が重くなる。
「はぁ……」
荷物をまとめ終えると、輝夜は立ち上がった。キャリーケースを引き、ガラガラと車輪の音を響かせながら、部屋を出る。
廊下を歩いていると、前から千鶴がやってきた。
「あ、輝夜さん! おはようございます」
「おはよう」
「昨日はありがとうございました」
「こっちこそ、迷惑かけてごめんね」
「迷惑だなんてそんな……!」
千鶴の視線が、輝夜の引くキャリーケースへ向く。
「もしかして、長期任務ですか?」
「ううん。実は、今日から支部勤務になったんだ」
「え……?」
千鶴の表情が固まる。
「それって……昨日の件が原因、ですか?」
「まあ……そんな感じ」
「……ごめんなさい!」
千鶴は深々と頭を下げた。
「私が、ちゃんと対処できなかったから……」
「違うよ!」
輝夜は慌てて首を振った。
「千鶴のせいじゃないから、気にしないで」
「でも……!」
「それじゃあ、またね」
輝夜はそう言って、キャリーケースを引きながら歩き出した。
「……輝夜さん」
呼び止めることもできず、千鶴はその背中を見つめる。その表情には、消えない申し訳なさが浮かんでいた。
輝夜は正門へ着くと、ふと足を止め、振り返った。
「……今までありがとうございました」
小さく一礼すると、前を向いた。そして、本部を後にした。
その背中を、本部上層階の一室から、司令官が無言で見送っていた。室内にイザナギの声が響く。
「……本当に、これで良かったのですか?」
「……ああ」
「輝夜は、『天照』でも屈指の戦闘能力を持っています。本部から外すのは、戦力として惜しいのでは?」
「いや……正直なところ、本部では輝夜を持て余していた。あの子は……少し優しすぎる。目の前で誰かが危険にさらされていれば、命令よりもそちらを優先してしまう。これまで何度、我らの存在が明るみに出かけたことか……」
「確かにそうですね」
「だが、乙姫のもとなら、輝夜の実力に見合ったことができるかもしれん」
「輝夜を引き入れたいという申し出があったのは、良いタイミングだったかもしれませんね。やはり、実力を見込んでのことでしょうか」
「だろうな。『天照』の中でも特に個性的な奴らを集めるつもりらしい。さて、どんな連中が揃うのやら」
「不安ですか?」
「期待と半々だな」
司令官は、輝夜が去っていった方向へ視線を向けた。しばらくの沈黙の後、その表情を引き締めた。
「それより、今回の事件についてだが……」
室内の空気が一変する。
「何か分かったことはあるか?」
「はい。企業側は、今回の暴走をシステム障害によるものだと発表しています。ですが、独自にログを解析した結果、別の事実が判明しました」
空中にホログラムが展開される。そこには、暴走したロボットの解析データが表示された。
「暴走直前、外部から不正なアクセスがあったことが確認されました」
「……外部から?」
「はい。侵入を検知した直後、管理者が強制的に接続を遮断しようとしています。その際、遮断処理と安全装置の制御が競合し、複数の制御系統に異常が生じた結果、暴走に至ったものと推測されます」
司令官はホログラムを睨むように見つめた。
「つまり……単なるシステム障害ではなかった、と?」
「その可能性が高いです」
「……犯人は?」
「特定できていません」
イザナギは一拍置いてから続けた。
「侵入経路は巧妙に偽装されており、現時点では痕跡から犯人を特定することは困難です」
「……厄介だな」
司令官は静かに息を吐いた。
「引き続き追え。今回の事件、ただのサイバーテロではないかもしれん」
「了解しました」
本部を出てから、しばらくして――。
輝夜は都心の喧騒から少し離れた通りを歩いていた。
高層ビルが立ち並ぶ中心街とは違い、この辺りは古い建物と新しい店舗が入り混じっている。人通りも少なく、車の走る音も遠い。
輝夜はため息を吐いた。
「……左遷か。クビにならなかっただけでも、まだマシかも。私、『天照』以外に居場所ないし……」
肩を落としたまま、歩き続けた。
「……いつまでも落ち込んでちゃダメだよね。起こったことはもう変えられないんだから、切り替えないと!」
気を取り直して顔を上げ、ホログラムに表示された地図を確認する。
「この辺りのはずなんだけど……」
地図を頼りに周囲を見回しながら進んでいく。やがて、足を止めた。視線の先にある建物を見上げ、小さく呟く。
「……ここ?」
そこには、一軒の喫茶店があった。木製の看板には、『喫茶御伽』と書かれている。
輝夜は地図に表示された住所と、目の前の喫茶店を照らし合わせる。
「……うん。ここで合ってる」
それでも、目の前にあるのはどう見ても普通の喫茶店だった。街並みに自然と溶け込んでいる。
輝夜は両頬を軽く叩いた。
「よし……!」
気合いを入れて、扉を押し開ける。
カランカラン、とドアベルの音が鳴る。コーヒーの香ばしい匂いと、木の温もりが輝夜を包んだ。店内には木のテーブルと椅子が並び、壁やカウンターにも木材が使われている。柔らかな照明が、その空間に落ち着きを添えていた。
「おはようございます」
店内に、輝夜の控えめな声が響いた。返事はなかったが、店の奥から人の気配がする。輝夜はその場で静かに待った。
ほどなくして、カウンターの奥から箱を抱えた少女がやってきた。青を基調とした和装の制服を身にまとい、青髪は稚児髷に結い上げられている。襟元は少し緩められ、袖も肘までまくっていた。
「イザナミー。これ、こっちに置いとくね!」
少女は店の奥へ声をかけると、ふと入口へ視線を向けた。その瞬間、輝夜と目が合った。
「あっ!」
箱をカウンターに置くと、笑顔で駆け寄ってきた。
「もしかして、キミは……!」
「……はい。本日付で異動になりました、輝夜です!」
「やっぱり! 待ってたよ、かぐやっち!」
少女は輝夜の手を握り、目を輝かせた。
「……か、かぐやっち?」
「ウチ、乙姫! よろしくね!」
「よろしくお願いします」
輝夜が頭を下げると、乙姫は「もう、かったーい」と笑いながら手をひらひらと振った。
「同い年なんだから、もっと気楽にしてよ! 敬語も禁止。あ、ウチのことは呼び捨てでも『おとっち』でも、好きなように呼んでいいからね!」
「じゃ、じゃあ、乙姫で」
「うん!」
乙姫は嬉しそうに笑った。
「あ、そうだ!」
振り返って声をかける。
「イザナミー! かぐやっちが来たよ!」
その呼びかけに応じるように、カウンターの奥から小さな影がふわりと飛んできた。桜色の長い髪に、翡翠色の瞳。背中には白い翼が広がっている。女神を思わせる愛らしい小型のロボットが、乙姫の隣に浮かんだ。
「紹介するね。ウチらのサポートをしてくれる『イザナミ』だよ」
「初めまして、輝夜様。喫茶御伽の管理・運営を任されております、イザナミです」
イザナミは丁寧に一礼した。
「分からないことがあれば、何なりとお申し付けください」
輝夜は思わず目を丸くした。
「……えっ? イザナミ……?」
乙姫に向き直り、尋ねる。
「支部のAIって、本部と同じ『イザナギ』じゃ?」
「あー、それはね」
乙姫は軽い調子で答えた。
「イザナギのあの淡々とした感じ、ここの雰囲気には合わないじゃん? だから、見た目とかいろいろウチ好みに調整したんだ。ウチら専用の特別仕様だよ! どう? 可愛いでしょ?」
輝夜は改めてイザナミを見る。
「……可愛い」
思わず本音が漏れた。
「でしょー? めっちゃこだわったんだ!」
乙姫は胸を張った。だが、すぐに少し不満そうに頬を膨らませた。
「でも、性格があんまりウチ好みじゃないんだよねー。もっと明るくて、ノリノリな感じにしたかったのに……」
「ここの管理・運営を担う以上、乙姫様と同じような性格では業務に支障が出る可能性があると判断しました」
「だってさー」
乙姫は肩をすくめる。
「……なんかさー、ウチの言うこと、あんまり聞いてくれないんだよね~」
「必要な判断は、私自身で行うよう設計されておりますので」
「まあ、イザナミがそう言うなら、ウチはいいけど」
「ご理解いただきありがとうございます」
輝夜は二人のやり取りを眺めながら、感心したように頷いた。
「へぇー……」
そして、はっと我に返った。
「じゃなくて、そんなことしていいの⁉」
乙姫はあっさりと答えた。
「大丈夫でしょ! ……多分」
「た、多分……」
(私、ここでうまくやっていけるのかな……)
輝夜は少しだけ不安になった。
そんな輝夜の心配を察したように、イザナミが口を開いた。
「私の基本性能は、本部の『イザナギ』と同等です。ご心配には及びません」
「は、はぁ……」
輝夜は苦笑いを浮かべた。
その時、乙姫がパンと手を叩いた。
「それじゃあ、挨拶も済んだことだし、早速なんだけど……」
意味深な笑みを浮かべ、輝夜を見つめた。
「……?」
輝夜が疑問に思っていると、乙姫はカウンターへ向かい、先ほど置いた箱を抱えて戻ってきた。
「はい、これ!」
箱を輝夜へ差し出した。
「これは……?」
「ここの制服だよ! ほら!」
箱を開けると、一着の制服が綺麗に畳まれていた。輝夜はそれを取り出し、目の前に広げてみた。乙姫と色違いの赤を基調とした制服だった。和の雰囲気を残しながらも、喫茶店の制服らしい可愛らしさがある。
「更衣室は店の奥にあるから、そこで着替えてね」
「……はい」
輝夜は制服を抱え、更衣室へ向かった。扉を閉め、さっそく着替える。
(任務で着るには、ちょっと動きにくそうだけど……まあ、慣れれば大丈夫かな)
輝夜はそう思い、着替えを済ませた。
しばらくして――。
「お待たせ」
制服に着替えた輝夜が、ホールへ戻ってくる。
「……どうかな?」
少し恥ずかしそうに尋ねた。
乙姫はその姿を見た瞬間、固まった。
「…………」
「乙姫?」
「…………めっちゃ可愛い」
「え?」
「なにこれ……!」
乙姫は両手で口元を覆い、目を輝かせた。
「想像してたより百倍いいじゃん! 赤、めっちゃ似合ってる! 和装も似合うし、なんかもう……最高!」
「そ、そう?」
「うんうん! マジ半端ないって!」
「あ、ありがとう」
「かぐやっち、こっち来て!」
「え?」
乙姫に手を引かれ、輝夜が隣に並ぶ。
「イザナミ、写真撮って!」
「かしこまりました」
乙姫は輝夜に肩を寄せ、ピースサインを作った。
「ほら、かぐやっちも!」
「こ、こう?」
輝夜も慣れないながら、ぎこちなくピースを作る。
イザナミが二人へ視線を向ける。顔の前で指を四角く組み、画角を合わせると、瞳の奥で淡い光が瞬いた。
「次、ハート作ろ!」
乙姫に促され、輝夜も両手で小さなハートを作る。再び、イザナミの瞳が淡く光った。
「次はこう!」
乙姫が輝夜の肩を抱き寄せ、頬を寄せる。
「え、ちょっ……!」
戸惑う輝夜をよそに、またイザナミの瞳が小さく明滅した。
その後も二人はポーズを変えながら、何枚もの写真を撮った。
イザナミが空中に撮ったばかりの写真を並べていく。
乙姫はそれらを眺めながら満足そうに頷いた。
「うん! どれも可愛い!」
輝夜もじっと見つめていた。そこに写る自分の姿が、なんだか少し新鮮だった。
その様子を見ていたイザナミが、静かに口を開いた。
「二人とも……お楽しみのところ申し訳ありませんが、そろそろ開店時間ですよ」
「……あ、そうだった! 急いで準備しなきゃ!」
乙姫は慌てて店内を回った。テーブルや椅子の位置を微調整する。イザナミはカウンターへ向かい、食器や材料の整理をした。
一方、輝夜はその場に立ったまま、小さく呟いた。
「……開店」
その瞬間、ピンときた。
(なるほど……表向きは喫茶店。でも、本当の目的は、街の人から情報を集めることなんだ。何気ない会話の中にも、重要な情報が隠されているはず……!)
拳を握り、改めて気を引き締めた。
(今日から私は、この喫茶御伽の一員なんだ。任された以上、しっかりやらなくちゃ!)
開店から数時間後――。
喫茶御伽には、すでに数名の客が訪れていた。呼び出しベルが鳴り、輝夜がテーブル席へ向かう。
「ご注文はお決まりですか?」
「ブレンドコーヒーを一つ」
「かしこまりました」
輝夜は注文をイザナミへ伝える。
「ブレンドコーヒー、一つです」
イザナミはコーヒーを淹れ始めた。
「お待たせー! モーニングセットだよ!」
乙姫が別のテーブルへ料理を運んでいく。
「ごゆっくりどうぞ!」
ニコッと笑い、軽やかな足取りで次のテーブルへ向かった。
店内は穏やかな空気に包まれていた。客たちはコーヒーを飲みながら談笑し、時折、楽しそうな笑い声が響く。
輝夜も忙しく動き回っていた。注文を取り、料理を運び、空いた食器を下げる。
そんなことを繰り返しているうちに――。
「……」
輝夜はふと足を止めた。
何かがおかしい。誰も怪しい素振りを見せていない。それどころか、耳を澄ませても、重要な情報につながりそうな会話すら聞こえてこない。
店内を見回す。
乙姫は客と談笑している。
「えー、それマジ? ウチも行ってみようかな!」
イザナミは店内の機器を操作しながら、手際よく注文を捌いていた。そして客たちは、ただコーヒーや料理を楽しんでいる。
輝夜は小さく息を吐いた。そして、ゆっくりと天井を見上げる。
「……って、これじゃあ私、ただの喫茶店員じゃないですかぁああああ!」
突然の叫び声に、店内の客たちが一斉に輝夜へ視線を向けた。
「驚かせてごめんねー」
乙姫は慌てて客たちに笑顔を向けると、輝夜のもとへ駆け寄った。そのまま背中を押しながら、カウンターの奥へ連れていく。
「いきなりどしたの? かぐやっち」
「……乙姫。ここって『天照』の支部だよね?」
「うん。そだよ」
「だったら……どうして私、ずっとコーヒーを運んでるの!」
「えっ?」
「ここは情報収集する場所で、今は任務中じゃないの⁉」
「任務……?」
乙姫はきょとんと首を傾げた。
「……あー」
そこでようやく察したように、目を丸くした。
「もしかしてかぐやっち……ずっと任務だと思ってた?」
「違うの⁉」
「うん」
「……え?」
「ここは『天照』の支部だけど、今は普通の喫茶店だよ?」
「……普通の、喫茶店?」
「コーヒー淹れたり、スイーツ作ったり、お客さんとおしゃべりしたり。来てくれた人たちに楽しい時間を過ごしてもらう――それがウチらの仕事!」
「……楽しい時間を、過ごしてもらう?」
「そそ。みんなを笑顔にしてあげるの」
「……笑顔に」
「あと、困ってる人たちの依頼も引き受けてるよ。『お客様の悩み事、何でも解決します!』――それが喫茶御伽のモットーだから!」
「……」
「かぐやっちが思ってるような任務も、依頼が来ればやるよ。でも、今日はなし。だから――」
乙姫は輝夜の肩を掴んだ。
「これから看板娘としてよろしくね! 期待してるよ!」
「…………」
輝夜の表情が固まった。
「…………ええええっ⁉」
店内に再び輝夜の声が響き渡る。客たちの視線が二人に集まった。
乙姫は口元に指を当てる。
「しーっ! かぐやっち、声が大きいよ!」
そして、客たちに笑いかける。
「あはは、何度もごめんね。新人だから、まだ慣れてないの」
わずかな沈黙の後、客たちは受け入れたように少しずつ会話に戻っていった。
輝夜は戸惑いながら口を開いた。
「看板娘なんて無理だよ! 私、斬ることくらいしかできないのに……」
乙姫は輝夜へ向き直った。
「そんなことない! かぐやっちの接客、すごくよかったよ! 丁寧だったし、ちゃんとお客さんのことを見てた。みんな、かぐやっちと話すと笑顔になってたよ」
「それは――」
輝夜は言いかけて止めた。
(情報を聞き出そうとしてただけで、楽しんでもらおうなんて全く考えてなかった)
そう思いながら、気まずそうに視線を逸らした。
乙姫は輝夜の手を握った。
「大丈夫! かぐやっちならできる! もっと自信を持って!」
「……分かった。やれるだけやってみる」
その時、呼び出しベルが鳴る。
輝夜はテーブル席に向かいながら、心の中で呟いた。
(お客さんに楽しい時間を過ごしてもらう。それが、今の私の仕事……!)
表情を引き締めた。
「ご、ご注文はお決まりでしょうか」
「ブレンドコーヒーとモーニングセットで」
「ブレンドコーヒーとモーニングセットですね。……以上でよろしいでしょうか」
「はい」
「か、かしこまりました」
ぎこちない笑顔を浮かべた。
客は一瞬だけ戸惑ったような表情を浮かべ、それから苦笑した。
輝夜は自分の接客を振り返りながら、カウンターへ戻っていく。
(よし、ちゃんとできた)
そう思っていたが――。
「もー、かぐやっち、力入りすぎ! あはは……!」
「えっ?」
「マジウケるんだけど! 急にどしたん?」
「いや……」
「さっきまで普通にできてたじゃん。もしかして、プレッシャーで緊張しちゃった?」
「……」
「まぁ、それはそれで可愛いけど!」
乙姫は満足そうに微笑み、輝夜は呆然と立ち尽くした。
それからも何人もの客が訪れた。輝夜は最後までどこかぎこちない接客を続けた。やがて空がすっかり暗くなり、閉店時間を迎えた。
輝夜はドアの看板を『OPEN』から『CLOSED』に切り替えた。ふう、と息をつき、店内へ戻る。
テーブルは片付けられ、カウンターもすっかり綺麗になっている。昼間の賑やかさが嘘のように、店内には静けさが戻っていた。
乙姫が笑顔で声をかけた。
「お疲れー、かぐやっち」
「お疲れ様」
「初日、どうだった?」
「……疲れた」
「だよねー。でも、結構いい感じだったよ!」
「そう?」
「うん。お客さんも、かぐやっちのこと気に入ってたし」
「それなら、よかった」
輝夜は安心したように笑った。
二人のやり取りを見ていたイザナミが、カウンターの奥からふわりと現れた。
「本日のお客様満足度は、九十六パーセント。高評価をいただいています」
「えっ、そんなに?」
輝夜は目を丸くした。
イザナミは空中にホログラムを展開した。そこには、アンケート結果が表示された。
「はい。ご意見欄には『新人ちゃんが可愛かった』『二人の接客が最高だった』など、多数の好意的な感想が寄せられています」
「……そっか」
輝夜は少し照れくさそうに微笑んだ。乙姫も嬉しそうに笑った。
イザナミは続けて口を開いた。
「では、明日の予定についてですが……いくつか依頼を受けていますので、午前中から外での仕事になります」
その瞬間、輝夜の表情が変わった。
「外の仕事……」
輝夜は小さく呟いた。
(今度こそ、重要な任務に違いない!)
思わず拳を握りしめた。
(油断はできない。気を引き締めなくちゃ!)
イザナミはそんな輝夜を見つめ、いつもの調子で告げる。
「詳細については、明日の朝にお伝えします」
「オッケー。じゃ、今日はもう帰ろっか。明日に備えて、ゆっくり休まないとね」
輝夜は真剣な顔で頷いた。
「うん」
三人はそれぞれ帰り支度を始めた。
「それじゃあ、また明日ねー。かぐやっち!」
「また明日」
こうして、輝夜の喫茶御伽での最初の一日は終わった。




