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踊れ宇宙の輪廻

「……『降魔舞踏LV.10』」


 聞き馴染みのある声が何にもない空間から聞こえたかと思うと、重たい打撃音の後にルドラが吹き飛ばされてた。


「はっ………本当にアタシが死んだと思ったって面だねハリガネ…」


 頭からじんわりと透明化(・・・)が解除される。


 黒髪に可愛らしい顔付き、装飾の煌びやかな服に包まれた手足は細長く、それでいて力強い。


 うん、と言うかハヌさんだ。



 ……透明化はタコソードの能力か?本当便利だなお前。



「お帰り、待ってたよハヌさん…」


「アンタ…一瞬本気でブチ切れてたろ、アタシがそんなに心配だったってかい?」


「それどころじゃないからノーコメントで」


 て言うか心臓ぶち抜かれてたよね?うちのメイドすげえな。


「恐れながら旦那様……私は何もしておりません、見る見るうちに勝手に傷が塞がったのでございます」


「ハヌさん凄い生命力だね…ちょっと引くわ」


「アタシの素の力なわけないだろ!?」



「…いってぇなぁ……てめぇそうかハヌマーン……そういやぁ、あった(・・・)な、そんな神話」


「ヴァーユの野郎をぶち抜くついでに死なせちまうのは可哀想とも思ったが……随分元気そうじゃねえか」


「猿神は心停止(・・・)からの復活で本来の力を取り戻すか……だがよぉ…そんな程度で、この破壊神とまともにやり合えると思ってんのかてめえ……舐めてんじゃ……あ?」


 構えるかと思ったらハヌさんが踊り始めた…MPとか吸い上げてるのかな?


「ただ思い出したんだよ…一回死んで生まれ変わったとも言えるが……」


「アンタが破壊神?知った事じゃないね……アタシは太陽にすら食らいつく猿神……ハヌマーン様だっ!」


 ズドンと地面を踏みしめると…なんだか破壊神の重圧が多少減ったような気さえする程の柔らかい風が吹く。


「……これは」


「クソ親父が死ぬ寸前にな……アタシに権能を譲渡していきやがった」


「ふーん……それが娘への餞別なら、狼藉も許してやろうかなって気持ちが多少は湧くね」


「……さて、それじゃあ…ハヌさんも来たし元気100倍だ……ボッコボコにしてやるよ、ルドラぁぁあぁぁぁぁ!?何何!?」


 急に突き上げられるような突風で身体浮いたよ!?くっそ怖いくっそ怖い!ぶん投げられるより10倍怖い!


「待ちな、何もアタシが出てきたのは喧嘩しにじゃないんだ」


「……殴ったよな?」


「こちとら胸元ぶち抜かれてんだ、あれくらい良いだろうケツの穴の小さい男だね」


「ハヌさんの可愛い顔でそう言う汚い言葉遣いしてると何かあれだね…」


「興奮しますよね」


 黙ってなさいふしだらメイド。


「てか姿見えてんの?私普通に見えるから皆からの視点がわからないんだけど」


「この国の者ではない私達は普通に見えておりますわ」


「はっはーん、さては見えてない方が少数派だな?なんのアドバンテージにもならないけど」


「……ちなみにアタシは見える、何故か」


「……考えてる時間ないから後にしよう、見えないよりいい……さて、二人でこの神ボッコボコにしようか」


「喧嘩は終わりだってんだ、そこの舞神じゃあないが、今から踊んだよ…アンタも一緒にね」


 …っ!


 うお……なんだこれ…風が、身体を勝手に動かしてやがるね。


 強制力はないのに、不思議と抗いたくないような優しい踊り。


「……これぁ……一体…」


「おいハヌマーン…!一体何考えていやがる!」


「もう喧嘩なんざやめだ、破滅に抗うのもね……アタシが全員連れていく、皆で踊って…笑って逝こう」


 言ってることは心中の誘いなのに、なぜだか引き付けられるような言葉だった。


 どこか神秘的で……っていや神なのか。


 それはそうとしても、今までのハヌさんとは違う、暖かい…春風みたいな笑顔……


「……成程…そういうことです…か」


「わかるのかいナタラジャさん」


「いえさっぱり」


 ぶっ飛ばすぞこいつ本当に。


「踊りによる魔を払う…を拡大解釈して、世界の破滅その物を退け、有り余るリソースを使って再構築……それも蟲共も追い払ってな…そんなとこだろ」


「ありがとうルドラ、マジでありがとう!」


「敵に本気で感謝し始めたっすよこの人…」

「……まあ、佳境でも己を曲げないのは良いとこだね?」

「お気楽すぎて死にかけてるのが馬鹿らしいんだぞ…」


「そこの神3人はお黙んなさい!特に亀と引き篭もり!死ぬよ!」


 喋る余裕も無えだろ、あのレーザー食らってんだぞ。



「…ねえルドラ、もう良いので…は?」


「……沢山間違えた上で、今我々は恐らく君にとっても私にとっても……この国にとっても1番良い結果を引き出せそうな状況……協力しません…か?」


「……まあ、確かに…神々の時代まで戻るかとか、あの虫けら共がどうなるかとか……クソみたいな過去が変わるのかとかは差し引いても、悪くはねえんだよな…」


 お?


「だがなぁ、ただで引き下がるのも何かつまらん、とくに……舞神(お前)の言う通りにするのが気に食わん…!」


「……おいおい…ここでそれかい」


「嫌われたものです…ね?」



「はっ、お前ら魔王だろ、俺様くらい正面からぶっ飛ばしてけよハリガネさんにグラトニカ、踊りもリソースも民や神の分で有り余ってんだ、こっからが本当の喧嘩祭りじゃねえか!」


「は…はは……いい男だなお前」


 

 心が踊るね全く。



「……わかった……この一撃を持って終いにしよう…生きるか死ぬかもそれ次第だ…」


「半端なことしたらこのままお前ら殺して1周させて神代からやり直すからな……ドンと来い」


「……避けんなよ?」


「おいおい聖人君主でも相手にしてるつもりか…?なんてな、避けねえよ……だが、本気で迎え撃ってやる」



「うし……けむりん、来い」


「はぁい♡旦那様♡」


「キッショ、普通に喋って?」


「そんな冷たいところも素敵でございます……」


 めげねえなあこいつ。


「グラさんに纒わりついて、リソース供給しつつ空気抵抗とか諸々でかなり発熱するだろうからそれの冷却を頼む、とくに脚」


「かしこまりました……デザインは?」


「任せ…………無難なやつ」


「日和りましたわね?」


「日頃の行いだと思うなぁ…」



 結果的に全身甲冑では無いけどムカデ形態のイメージが乗っかった感じの鎧、仮面でライダーなあれみたいだな、むしろ敵側っぽいけど。


「……ハヌさん、背中押してくれない?」


「あぁ?……なるほどね……」


 民を撫で踊らせる柔らかい風が背中に当たる。


 心地良さは置いといて……なんて頼もしい風だろうね、後ろの仲間達が力を分けてくれてるみたいな気さえする……


「……最高最速でぶち抜こうか、グラさん」


『……思えばこの国に入ってから長いのう…』


『征くか……我が伴侶よ』


「……ああ……『更に先へ(プルス・ウルトラ)』」


 身体に、脚にリソースが集まる。


 心臓が跳ねる、血液が煮えたぎる。


 世界はこんなにも綺麗だ、空気すらも美味しい。


「お待たせ……行くよ……」



 空気すら粘土みたいに重い…が、気にしない…こうなったグラさんの力なら関係無い…


 ……これソニックブームとか出てね?大丈夫かな…まあナタラジャとかが守ってるでしょ。





「……はっ、いい顔してんな……俺様も行くか」



「…『無双の暴風(■■■)』」


「…ルドラ」


「今更なんだ……」


「……死ぬ前に三叉槍返してください」


「嘘だろお前」


「……俺が死んだら、次の世界じゃどの道お前に破壊神は返す、その時に勝手に持っていけよ」


「……退いてろ、巻き込まれんぞ」



「……やっと、君と一緒に居れるんだ…ここで見届けます…よ?」



 空気との摩擦により赤熱する程の速度で飛来する暴食の魔王、対するは人型までに圧縮された途方もない規模の暴風。


 この戦いの後世界は作り替えられ、新たなる時代が来る。

 この戦い意味はなく、勝者は次の世界に残る者のみが決めるだろう。


 見守る観客は万雷の喝采と共に舞踊り、その度に周囲は目に見えぬ(リソース)で溢れた。


 力を持った双方が、ただ意地のため、友のために互いの全力をぶつけ合う。


 ターハル喧嘩祭りは、今まさに最高潮を迎えた。



 ……どう?


『何やらブツブツ言っておるなとは思った』 


 あらヤダノリが悪い……折角だからモノローグをだね、ナレーターとかいないから自力なんだぞこれ。



 まあいいや、間もなく激突だ……




「行くぞルドラぁぁ!!」


「来いや虫ケラぁぁ!!」






「『踊り巡り砕け散れ(グラトニカ・)我が宿業(サンサーラ)』!!」


「『やがて潰える(サンサーラ・)終わりの破壊(プララヤ)』!!」

お久しぶりんす

インド編長いけどもう時期終わるね。


ご心配かけてるけど何とか生きてるよ。

質問お待ちしてます。

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