さあさあ始まる新世界
さて、ところでグラさんは踊れるのかい?ハリガネさんダンスの才能どこらか音楽のセンスすら無いからさっぱりリズムに乗れる気がしないのだけど。
『王宮で嗜む踊りでもあるまい……周りに合わせて身体を動かせば良いのだ』
……ひょこひょこしてるだけじゃないこれ?何か恥ずかしいんだけど。
『くく、汝にも苦手なものがあるのだな』
苦手なものだらけたよ私は…
「とーうさーん!」
あれは…ブレ子だ、お嬢ちゃんにレプンカムイ…けむりんもいるわ。
「まあ当然っちゃ当然だけど生きてたんだね君達」
「父さん大変です!急にハヌ殿が暴走しラクシュミー様及びシャルヴ殿が討死されたとレプンカムイ殿が…!」
「何周遅れの話してんだお前、ハヌさんの中身はハヌさんの父親の『風神ヴァーユ』だったし、当の本人はそこで固まってるよ」
「え、こ…死んでますかこれ」
「多分生きてるけど…さっき生えた私のスキル『絶対空間停止』を重ねがけしてからはずーっ止まったままだよ」
「……起きた時敵か味方かもわかんない、でも殺したくないんだよ……どう思う?」
「それは……最初から全てが罠だったと言うのならば討ち取るのもやむ無しですが……ハヌ殿と儂等が過ごした日々が偽りでないならば助けたいですね」
だよねえ……私も同じ気持ちだ。
「……よし、一旦置いておきましょう」
「うん、と言うかそういった経緯で物理的に置いとかれてるんだこの子は」
「いやぁ、悪かったねハリガネさん……何も守れなかったね」
「君が生きてるだろ、十分だよ……結果的にシャルヴは死んだが……ああなったし」
指さす方角に踊り狂う舞神、て言うかシャルヴって本当に死んで器になったわけ?共存できてないのかな。
「……おや?そこに居るのは沖の神ではありませんか?」
「どわあ捕捉されたね…! ご無沙汰だね破壊神」
「今は舞神ですよ、先程は礼も言えず申し訳ない……この器を守っていただき感謝の言葉もありません」
「結果的に死んじまってるから複雑だがね……」
「うーむ、まあ……踊ればどうにかなるでしょう、さあ御一緒に」
「んえ…?」
「全員揃っ……あれけむりんは?」
「……えっと…足元の」
「……꒠꒠ダヨ」
「……えこれ?」
足元にまとわりつく黒い影の帯みたいな何かがすっごく小さい声で喋ってる……変わり果てたねお前。
「……ハリガネさん、けむりんね…必死に私達や街の人を助けようとして…神様と戦ってみたり色々してたらこんな姿に」
「……ゴメンネ」
「うーむあっぱれ、ほれグラさんの手から少し吸いな…て言うか周りのリソース食えないの?今溢れてるよ?」
「……イモタレ」
「胃もたれ……枯渇寸前の身体には重いんだここのリソースって…てかなんでさっきから4文字でしか喋らないのこの子」
マスコット枠みたいな立場になっちゃうぞお前このままだと。
『しかし言いつけを完遂したのは大義であるな……汝、褒美をやれ』
「……けむりん、お前何して欲しい?取り敢えず何でも聞いてやるけど」
「……ナンデモ…?」
……っ!!?急に活性化した!?
「ちょっ!バカお前!?纏わり着くなって!うぁ擽ったいわっ!」
「……ブレさん、目塞がなくていいって」
「……良くない、これは良くない」
「んん…むんっ!!わたくし、完・全・復・活です…わぁぁっ!!」
……この野郎ぶっ飛ばすぞ…5分くらい全身くすぐりやがって
『良い…捨ておけ』
「……まあ、これくらいのことは許される程度の功績ではあるよね…よくやったぞけむりん」
「流石の私めも名のある神々との連戦に次ぐ連戦では心身ともに文字通り削り取られました……」
「ああうん……予想より大分キツかったみたいね…」
「さあさ皆さん……再会の喜びもそのくらいに……」
「あー……皆揃ったね、踊る?」
「え、踊……踊るんですか?」
怪訝な顔をすんなよ長女、私だって変なこと言ってる自覚はあるよ。
「この国の一大事に踊っている場合ですか父さん!」
「一大事…だからこそ踊るのです…よ?」
「ええと……舞神ナタラジャ殿、お言葉ですが」
「ええ、そうです踊るのです」
「いやそうではなく!」
「ほら、脚が止まっています…よ?」
「……父さん…!」
「うちの娘泣かさないでくれるかな?」
いやあれで泣く娘も娘だが、うん……神々しいまでに話聞かない人って怖いもんね。
「いいかいブレ子…よく聞きなさい……踊ると、何か良くなるらしいよ」
「父さんがいつも以上にフワッフワしてらっしゃる……!これはまずいやもしれぬ…」
「それで良いのです、踊りは全てを解決するのですから…難しく考えず、さあ踊りましょう!」
「踊って世界を組み立て直すのです…さあ調和と維持の御二方も御一緒に」
「おおう、案の定僕達をサラッと巻き込みやがるっすね」
〔おうコラ破壊神のボケナス!久々に会話が通じる状態で出てきたと思ったら僕に謝罪もなく仕事振るってんだぞ!?〕
〔お前ぇ…それはちょっと筋がちげぇってんだゾ…!?〕
やばい、亀やんが元の口調も相まって田舎のヤンキーみたいなキレ方してる、特攻って書いてブッコミって読むタイプだ。
「ふふ…何度も殴り殺して申し訳ございませんでしたとでも言えば協力していただけますか?」
〔撲殺が謝罪で済まされるなら警察は要らねえってんだゾ!?〕
それはそう、本当にそう。
「破壊神の方の事を私に言われても…まあ記憶はありますが」
「あるなら同一人物判定でいいでしょ」
「酔った勢いを本人のせいだと言うのですか…?」
「本人のせい以外の何者でもないっすね!?」
段々とこいつの神々の中での立ち位置がわかってきたな。
「…まあ、やりますけどね…国や人々の生活を維持するのが僕の仕事っすから」
〔手伝ってはやるぞ、でも断じてお前のためではねえんだぞ〕
「頼りにしていますよ2人とも…うふふ」
〔てめえ何笑ってんだぞ…〕
「元はと言えばこんだけこの国が拗れた原因の一端はアンタっすからね…?」
「……父さん、儂猛烈に頭が痛くなってきました」
「……ハリガネさん、何だかあの3人…凄く見覚えがある構図なの…不思議」
「そうだね、私達のパーティとノリが近いね、どこの世界もこんなもんってことさ」
『断じてそんな事はないと思うのだが…』
「すげえだろコイツ、あとコイツに当時耐えてた俺様」
「マジで尊敬に値するよね、どうすんだよこの国、全部上手く行ってもこいつ主神だぞ」
ぶっちぎりで強い馬鹿と苦労人達で奇跡的に成り立ってた国か……怖すぎるだろ。
「さあさあ、無駄話はそこまで……皆々様、踊りましょう…」
「……じゃあ、そろそろやるのかい暴風神…どうせこのまま…ただ見ててはくれないんだろう?」
「はっ、まあな……だがお前がやんのか?さっき負けたばっかだろう」
「舐めんな、今度は皆いる……魔王たるもの後ろに配下がいてこそ本気で戦えるってもんだろう?」
「……威勢が良いが、威勢だけじゃあな……戦士として相手する以上……あー、そういやまだ生きてたな……ちょっと待て暴食王…すぐ終わる」
構え直した姿勢から何とも面倒くさそうに手を振って……風の矢…?
「……っ!?」
この暴風神と言う男の性質上、不意打ちなんてまさかしないだろう、そんなイメージに油断していた部分はあるが、この場の全員が修羅場をくぐり抜けた猛者達だ。
だが、構えていた私達が全く反応できない速度で突き出された矢は、無慈悲にも正確に、私達の友人の…ハヌさんの胸を貫いていた。
「じゃあな風神ヴァーユ……俺の世界にお前は要らねえ…あとついでにすまねえが、悪く思うなよハヌマーン」
「お前はここで退場だ」
やっほーい。
コロナとインフルすげえ増えてんね、気をつけるんやで皆。
Q.グラさんの姉妹達は今何をしてるの?
A.急に気配が辿れなくなった暴食の因子を求めて探し回ってる。
各地で上位竜種程度なら簡単に食い荒らす化け物が大暴れしてるのでまあパニック。
その魔の手が某試される大地に向かってる。




