第24話
――翌日
「もう行くんだね」
公爵様は少し寂しそうに悠陽達を見つめた。
「もっといてよぉ……」
セシルも名残惜しそうに声を上げる。
「ふふ、また会う時はお兄さん達みたいに、強くなってないとね」
夫人が優しく微笑むと、セシルは元気よく頷いた。
「うん!!お兄さん達に負けないくらい強くなるよ!!」
「あぁ!楽しみにしてるよ!また遊びに来るからな!!」
悠陽は笑顔でそう答えた。
こうして公爵一家に別れを告げ、悠陽達は王都を後にした。
「行く場所決まってる?」
王都を出てしばらくすると、優佑が皆に尋ねた。
悠陽と凪は、以前ダンジョンで妖精から聞いた鍵や異世界人についての話をした。
「戻れるかもしれないのですか?」
美稀が驚いたように尋ねる。
「何万年も前にも異世界から来た人がいたのか」
紫苑は、耳を傾けながら剣の手入れをしている。
「うん、そうらしい。でもその人が作った妖精のいるダンジョンは、妖精のリーダーならわかるかもって」
「リーダーの手がかりは、レグルスって名前なことと、植物が好きだったってこと。基本的に妖精のいるダンジョンは、普通のダンジョンよりもモンスターが強いということくらいで」
凪が補足すると、紫苑は少し考え込んだ。
「今まで来たところまででも、ダンジョンあっただろうけど戻るか?」
「行ったことない所まわりたーい」
「そうするか。いつでもお前ら兄弟の魔法で戻れるし」
「うん!!」
「では情報集めつつ、ダンジョン探しですね!」
「地図にダンジョンの位置は書いてあると思うので、まずは地図集めですね」
凪の言葉に皆が頷いた。
次の目的地は、国境にある街だ。
悠陽達はその街を目指して歩き始めた。
「一応王都でこの国の地図を手に入れておいて良かったね」
「そうですね。でもこの地図変なんですよね」
美稀が地図を見つめながら呟いた。
「なにがだ?」
紫苑が尋ねると、美稀が地図の一箇所を指さした。
「この地図、一箇所だけ空白なんですよ」
悠陽以外の三人は美稀が広げた地図を覗き込む。
悠陽は何も考えず、美稀の腕を引いて歩き始めた。
「次の街で聞いてみようぜ!」
「は、はいっ!そうですね、こんな所で考えてても仕方がありませんね!!」
美稀は顔を真っ赤にして、悠陽に引かれるまま足を動かした。
ひとまず地図のことは次の街で調べることにした。
しばらく歩いていた悠陽は、ふと思い出したように優佑へ声をかけた。
「そうだ兄ちゃん!」
「なんだ?」
「鍵!兄ちゃん持っといてよ!」
「そうだね。空間魔法も使えるし、それに優佑兄なら悠陽より安心です」
凪が賛成すると、美稀も笑いながら頷いた。
「そうですね」
紫苑もつられて笑った。
「ん?そう?でも自分の好きな時に鍵使えなくなるよ?」
「いいよ!ずっと一緒にいるし!」
「きゅーん❤︎そうだよね!うんうん、ずっと一緒だよ〜❤︎」
優佑は嬉しそうに悠陽を見つめた。
「なんか久しぶりな感じだな」
そう言って紫苑が笑うと、凪も頷いた。
「そうですね」
そんなやり取りをしながら、悠陽達は旅を続けた。
道中は特に問題もなく、無事に国境の街へと到着した。
「情報集めつつ少し別行動でいいかな?」
街に着くと、優佑が皆に声をかけた。
「はい、もちろんです」
「こっちで宿探しとこうか?」
「じゃあお願いできる?」
「はーい」
「じゃっ夕方、広場に集合で」
紫苑の言葉に皆が頷いた。
「兄ちゃん、どっか寄りたいとこあるのか?」
「あぁ、うん。ごめんね、後で合流しよう」
「うん?」
悠陽は不思議そうに首を傾げたが、優佑はそのまま悠陽達と別れていった。
「あの、私雑貨屋さん行きたいので、お兄さんみたいに後で合流でも良いですか?」
今度は美稀が遠慮がちに尋ねた。
「もちろん、気をつけてね」
「はい!」
美稀も雑貨屋へ向かい、残されたのは悠陽、凪、紫苑の三人になった。
「お前らはなんか行きたいとこあるか?」
「うーん」
「うーーん」
二人が揃って考え込む様子に、紫苑は思わず笑った。
「はは!じゃあ俺らは三人で情報収集でもするか!」
「うん!」
「まずはギルド行ってみるか」
「そうだね」
三人は冒険者ギルドへ向かい、周辺の地図や、この辺りで起こっている出来事について情報を集めた。
その中で、三人は気になる依頼を見つけた。
最近、この街の近くでは人攫いが多発しているらしい。
これまでにも何度か冒険者達が依頼を受け、人攫いを捕まえて被害者を救出しようとしたが、その度に返り討ちに遭っているそうだ。
そのため、依頼の難易度だけがどんどん上がっているという。
「俺達だけで言ってみるか?まだ時間あるし」
「そうですね。でも万が一もあるので、行くのは明日にしませんか?」
「それもそうだな」
三人は依頼を受けることにし、受付へ向かった。
「お姉さん、この依頼受けるよ。行くの明日でもいい?」
「えぇ、それはもちろん。ですがあなた達三人だけで行くつもりですか?」
「仲間は一応後二人いるけど、二人が用事あれば三人で行くけど」
「でしたら了承しかねます。子供達がみすみすやられに行くのを見て見ぬふりはできません。
この依頼はAランク冒険者含む二十人以上のパーティでも返り討ちに遭うような任務なんです」
受付嬢は心配そうに三人を見つめた。
「俺たち、みんなSランクだけど」
「えぇぇぇぇえええすっ!?もぉう!お姉さんをからかうのはやめてください!!」
「はい、ギルドカード」
悠陽は自分のギルドカードを差し出した。
受付嬢はカードを受け取り、記載されたランクを確認する。
「Sだぁ……」
「信じてくれた?」
「うっ……信じます。信じます……で・す・がっ!流石に危険すぎます!少人数では認めません!!」
「えーーー」
「五人でもダメですか?」
凪が尋ねると、受付嬢は少し困ったような表情を浮かべた。
「うぅ。君たちもう一度ギルドカード見せてくれる?」
悠陽に続いて凪と紫苑もギルドカードを差し出した。
三人のカードを確認した受付嬢は、小さくため息を吐いた。
「わ、わかったわ。あなた達の実力は認めます。なので承認します。ですが!!危ないと思ったらすぐ逃げること、わかりましたか?」
「逃げる?攫われた人達は?」
「攫われた人達も助け出します。けれど、君たちまで人攫いに遭っては元も子もないのです」
「わかりました。気をつけます。じゃあ明日一度行ってみます」
凪がそう答え、三人は依頼を受注した。
その後も街で情報を集めながら過ごし、夕方になると約束していた場所で美稀と優佑に合流した。
皆で酒場へ向かい、夕食を済ませた後、予約していた宿へ向かった。
「良かったね。丁度、二部屋空いてて!」
「そうだね」
凪の言葉に優佑が頷いた。
部屋に入ると、悠陽は優佑の様子が気になり、声をかけた。
「兄ちゃん、なんかあったのか?」
「そうだぞ。お前戻ってきてからなんか変だぞ」
紫苑も不思議そうに優佑を見つめた。
「いや、なんでもない」
「僕たち明日受けた依頼行くんですけど、優佑兄も一緒に行きませんか?」
「僕、明日も用事あるんだ。ごめんな」
「えー、兄ちゃん明日も別……?」
悠陽は不満そうに頬を膨らませた。
「わ〜❤︎ごめんね?弟の為に早めに終わらせるから❤︎拗ねた顔も可愛い❤︎」
優佑はそんな悠陽を見て、嬉しそうに笑った。
「明日、美稀ちゃんにも聞いてみよっか」
「まぁ、元々三人で行こうとしてたけど」
「優佑兄が居ない分、少し紫苑君に負担かかるけどいけますか?」
「大丈夫よー!」
紫苑は明るく答えた。
――翌日
翌朝、美稀にも依頼について話し、一緒に行かないかと誘ってみた。
しかし、美稀には気になることがあり、それを調べたいとのことだった。
「結局三人ですね」
「おぅ!がんばろぅ!」
「美稀いないならポーション買っとくか?」
「そうだね。僕回復系は苦手だからある方がいいかも。サポートは任せて!」
「わー、頼もし〜い!」
三人は必要なポーションを買い揃え、街を出発した。
向かったのは、人攫いが多発しているという街の近くの通りだ。
悠陽達はまず、周囲の様子を確認しながら、小型カメラを設置していった。
この小型カメラは、以前ダンジョンで入手した素材などを使い、凪と優佑の知識、そして悠陽の魔法を組み合わせて作ったものだった。
元の世界で監視カメラというものを知っていたからこそ、思いついた道具だ。
「ほんと優佑と凪はすげーよな。こんな世界でカメラつくっちまうんだもんな」
「そうだろ!兄ちゃんも凪も頭良いからな!でも!俺の魔法もないと作れなかったぞ!」
悠陽は少しむっとした様子で紫苑を見つめた。
「おぅ、お前もすごいぞー!」
紫苑は笑いながら悠陽の頭を、わしゃわしゃと撫でた。
「ほんと、悠陽の魔法便利だよね。なんでもできちゃう」
「えっへん!」
二人に褒められ、悠陽は得意げに胸を張った。
カメラを設置し終えた三人は、映像を確認しながら人攫いが現れるのを待った。
しばらくすると、カメラに怪しい者達の姿が映った。
三人は人攫いを捕らえるため、身を隠しながらその場所へと向かった。
相手に気づかれないように近づくと、一気に人攫い達を倒し、逃げられないよう縄で縛り上げた。
そして、攫われた人達が乗せられていると思われる荷車へと近づいた。
悠陽が荷車の扉を開けた、その瞬間――
中から突然、ナイフを握った少女が飛び出してきた。
「っ!」
悠陽の服が切り裂かれ、腹部に少し切り傷がついた。
少女は身を守ろうと必死だったようだ。
目の前の悠陽達が、自分達を助けに来てくれたのだと気づくと、表情を変えた。
少女は悠陽に怪我をさせてしまったことを何度も謝った。
悠陽達は少女を落ち着かせると、荷車の奥にいた他の子供達の縄を解き、一人ずつ外へと連れ出した。
助け出された子供達は疲れ切っていたため、三人はその場で少し休ませることにした。
そして、皆が落ち着いてから街へ戻ることになった。




