第1話 天使の宴
推しを早く登場させたいがため、第37話までは1日2話投稿致します。
私情です。
昨日午後2時頃、震源不明の大地震が発生し、××市××町が壊滅的な被害を受けました。
現在確認されているだけで、死者は1,308人にのぼっています。
そして、現在の××町上空の映像です。ご覧ください。
昨日まで、この場所に建っていた中高一貫校、××学園が跡形もなく消失しています。
まるで初めから何もなかったかのように、現在、平地となっています。
地震発生時、学園内にいたとみられる生徒や教員とは、現在誰一人連絡が取れていません。
一体、ここで何が起こったのでしょうか――
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血の海が広がる校舎を、一人の生徒が走り回る。
「悠陽!!はるっ!!!」
「おい優佑!早く出ねーと!!」
「ダメだ!!悠陽を見つけるまで俺は逃げない」
「はるには凪がいる。教室に居なかったんだ、もぉ逃げてるよ」
「でも、もし怪我してたら。悠陽が、悠陽はどうなるんだ!俺は悠陽が逃げた確信が持てない以上学校から出ないぞ!!」
ドカッ―
紫苑が優佑の頭を勢い良く殴る。
「いったぁ。なんで殴るんだよ」
「それでお前が死んだら意味ないねーだろ」
「俺は死なないよ。悠陽を置いて死ねない」
「なら今は逃げるぞ。生きてればいつか会える」
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――10月29日 午前8時半頃
キーンコーンカーンコーン――
学校のチャイムが鳴り、門を遅刻ギリギリ走って入る男子生徒一人。
チャイムの鳴り響く中階段を駆け上がり、教室のドアを開ける。
「セーーフ!!!」
「セーフじゃない。早く座れ」
伊井田先生は、教卓で名簿を開く。
「はぁーい、いだっちー」
「先生と呼べー、プリント配るぞー」
ガラッと椅子を引き窓際最後列の席に座る。
「ふぅ」
「もぅ、家出る時起きたって言ったじゃん。はる」
隣の席の、凪は幼馴染で家も隣の腐れ縁の仲だ。
悠陽は兄以外家族が居ない為、凪の家にはよくお世話になっている。
「お前が早すぎんだよぉ」
「仕方ないよ。生徒会の仕事あるから、少し早めに出ないと間に合わないんだから」
「そうだ、おばちゃんがお弁当多めにくれたから後で食おうぜ!」
悠陽は凪の母から今朝、家を出る時に貰ったお弁当を見せた。
「今日急いでて朝食べれなかったんだぁ。やったぁ、うれしー!」
「お前が寝坊とか珍しいな」
「はぃ?悠陽のせいだよ?昨日夜中まで僕の部屋でゲームしてたじゃん」
「えぇー、俺のせいかよぉ」
「お前らー、いつまで喋ってる。次移動だろう。早くいけー」
「やべっ!いつの間に!!」
「高木先生に迷惑かけるなよー」
「分かってるって!いだっちー!」
―― 9:30 理科室
「皆さん、顕微鏡用意出来ましたかー?」
高木先生は、一つ一つ机を見て回る。
「あいちゃーん。俺はさぁ、花になりたかったんだよぉ。咲いてるだけで、愛でてもらえるしー、合法で女の子とちゅーできるしー。勉強もしなくてもいいしー」
指をいじいじしながらそんなことを言う純平を、凪は冷めた目で見つめる。
「純平ちゃん……」
「でもさ、光合成とか言う仕事をたくさんしなきゃいけないのかと思ったら。花たちも頑張って生きてんだなぁって」
「そうねぇ。お花さんも一生懸命咲いているのを、純平君に知ってもらえた事をきっと喜んでるわね」
高木先生は、少し困ったように笑う。
「純平ちゃん、純平ちゃんの考えてるお花がどんなものかわからないけど、花弁は光合成しないよ。茎とかは光合成するかもだけど。葉緑体がある所だけだよ」
「なに……?よう…りょくた…い?」
「…………」
―― 11:00 音楽室
「俺さ、ピアニストに…なろうかなって」
祐希がドヤ顔で決めポーズを向けてくる。
「ピアニストなめんな。」
「なんだよはるちゃま~。はるちゃまもこの前までサッカー選手とか言ってたじゃ~ん」
「サッカー選手は、小学生男子の夢トップ10には入るんだから別に良いだろぉー」
「二人とも、ピアノもサッカーもしたことないでしょ……」
凪は呆れたようにため息をついた。
―― 12:25 1年B組教室
ぐぅぅぅぅうう……きゅるるる……
教室にお腹の音が鳴り響く。
「おぉい、腹減ったかぁ?あとちょっとだ、がんばれぇ」
先生は、そう言うと黒板に向き直し授業を再開した。
「はぁーい、すんませぇん!」
「悠陽か!腹の虫は鳴らしてて良いから、ちゃんとノート取れよー。お前いつもミミズ這ってるぞー」
「うげぇー、善処しまーす」
悠陽が横目で凪を見ると、俯いて顔を赤くしていた。
―― 12:36
キーンコーンカーンコーン――
「やっと終わったー。腹減ったぁ!」
机を二つ合わせて、椅子を寄せてお弁当を広げる。
「お前めちゃくちゃ腹の音聞こえてたぞ~」
「いやー、ちょー腹減っちゃってさー!朝ごはん食べ損ねたからなぁー」
悠陽がお弁当を机に置くと、みんなが驚いたように笑い出した。
「お前弁当多すぎだろ!!」
「そーう、朝ごはん兄ちゃんが作ってくれてたのに、食べる時間なかったから持ってきたのと、凪の母ちゃんが俺と凪の朝ごはんってくれたお弁当と、昼ご飯のお弁当ー」
「そりゃ、多くなるな!!てか凪の母ちゃんめしうめぇからな~!!」
「そうなんだよ。いくらあっても余んねーよ」
「だな~!!てか食い終わったら、狩り行こうぜ」
「おぉー!いいな!!」
悠陽達は携帯ゲーム機を出してゲームを開く。
「よっしゃ!一狩やるぜやるぜぇ!!」
純平はやる気満々で袖を捲った。
凪は生徒会の仕事へ行き、悠陽、純平、彗、祐希の四人で狩りをした。
―― 13:15
「くそぉぉお。もう一狩り!!もう一狩り!!」
「もお時間ないって~」
「また帰ってやろーぜ!純平ちゃん!」
キーンコーンカーンコーン――――
―― 13:40
「悠陽、もうっはるってば」
凪が寝ている悠陽を小声で起こそうとする。
「次ー、19番ー!読んでくださーい」
「……19番。誰ー?」
先生が名簿を開き確認する。
「19番、悠陽君ー。次読んでー」
悠陽は目をこすりながら教科書を開いて立ち上がる。
「悠陽、13行目からだよ」
―― 13:55
「じゃあ、今配ったプリント明日の授業中に回収します。後10分くらいで授業終わるから、プリント終わらせてもいいわよー」
―― 13:59
ガタッと窓が鳴り、次の瞬間。椅子に座っていられない程の地震に襲われた。
窓ガラスは割れ、本棚が倒れる。
ある子は泣き叫び、ある子は慌てて教室を飛び出し、ある子は願った「神様、女神様。お助けください」と……
「みんな落ち着いて!!机の下に隠れて!!頭を守って下さい!!大丈――」
急に浮遊感に襲われ……
―― 14:00
地面に叩き付けられる感覚と共に、全身に痛みが走った。
「ったぁ……」
悠陽は痛みを堪えながら、身体を起こした。
まだカタカタと揺れの続く中、放送がなる。
『生徒の皆さん、教科担任の指示に従い落ち着いてグラウンドへ移動して下さい』
揺れが収まり、先生が教壇から頭を出した。先生は頭から血を流し朦朧としながら、生徒を落ち着かせようと声を振り絞る。
「……み、皆さん…怪我は……ありませんか。揺れが収まったので外へ避難を――」
先生は顔を上げ教室を見渡し絶句した。
「あぁ。うそ、そんな……」
教室中に血が飛び散り、机や椅子が散乱して何人も動かない生徒が居た。
「おぃ、しっかりしろ凪。大丈夫か」
「う、うん。少しかすっただけ、大丈夫だよ」
「よかった」
「意識のある人は、みんな……肩を貸しあって、安全な所に……」
「先生、安全なところなんてどこにあんだよ!」
血が流れる頭を押さえながら、涙を流す先生に、取り乱した男子生徒が、窓の外を見て叫ぶ。
「何言ってるの、取り敢えずグラウンドへ出て、その後は校長先生の指示に従って」
「外見てよ先生、安全なところなんてないよ」
先生が外を見ると、そこにはこの世の者とは思えない生き物が人間を襲っている
そんな時、天から光が差し女の声がする
『妾は女神、エルシア。讃え崇めよ、ゴミむしども』
女神と名乗る女の甲高い笑い声が響く。
『妾の権限で貴様達に、ランダムでギフトをやろう。この世界で生き残った者になんでも褒美をやる。存分に妾を楽しませよ』
生き残った生徒や教師に、光が降り注ぐ。
『あっ、そうだ。後1時間でこの建物は消滅するから、それまでに建物からは出ておきなさいね。じゃっ!』
悠陽は血の海の広がった教室を見渡す。
「純平ちゃん……?おい、しっかりしろよ……」
「はる、どうしたの?」
凪は悠陽が話しかけている相手を見て、目を丸くした。
「純平……ちゃん?」
「純平ちゃん……」
純平の上にあった机や棚を退けると、そこには、胴と足が離れ離れになった、変わり果てた純平の姿があった。
「あぁ……」
「純平……ちゃん」
悠陽は絶望感に苛まれ、純平を見つめた。
凪は静かに涙をこぼした。
「悠陽、僕たちもそろそろ行かなきゃ」
「……」
「はるっ……」
「うん」
悠陽は純平の開いたまま、光の届かない瞼をそっと閉じた。
「はる、行こう」
――教師達が会議を始めた頃
校舎の周りには見たことのない生物がいる。間違いなく、今まで住んでいた場所とは別の世界だ。
多くの者が悲鳴を上げながら、手ぶらで逃げ出していく中、怯えて蹲る者。
嘘だろうと出て行こうとしない者や、窓から見える魔獣に襲われない建物内の方が安全だと校内に残る者。
悠陽と凪は、何があるか分からないからと、使えそうな物やあれば便利そうな物を学校中からかき集めて、鞄に入れていく。
学校がギリギリ見える所まで離れ、そこで自分たちの能力を見る事にした。
女神が言った、1時間後に学校が無くなるというのが本当か確認する為待機する。
1時間後、大きな爆発音がして学校は見る影もなくなった。学校にはまだ結構な人数の生徒達がいたはずだ……
「悠陽、取り敢えず街へ行こうか。この世界の情報が欲しい」
「うん」
悠陽と凪は、何も無い森に囲まれた草原を歩き続け、街が見えてくるのを願った。
二人は、ゲームが好きだったためこんな時でも自分がどんな魔法が使えるのかに、ワクワクしていた。
凪は結構簡単に火や水を出せるようになった。
凪は四属性の魔法を扱え、味方へのバフ魔法を得意とするようだった。
魔術を練習している時に、急に魔物が森から出て来て驚き、手元で魔法が暴発して2人で顔を見合わせて笑い合う。
初めての野宿
悠陽は木を集め、凪は寝床の準備をした。
大きな葉っぱを何枚も地面に広げ、レジャーシートを敷く。その上に荷物を風除けになるように置いて、保健室から持って来た毛布を取り出す。
「さむ……」
2人は悠陽が持って来た枝を燃やし、暖をとった。
「やべー、こんなのいつ以来だ?」
「小6じゃない?みんなでキャンプしたよね〜」
「あぁ、兄ちゃんの友達と凪んちの家族に、俺と彗と純平と……」
「うん、楽しかったね……」
しんみりした空気を打ち消すように、凪は火魔法で線香花火を作って見せた。
「すげぇ!もうそんな事出来るようになったのか!?俺は全然だぁ」
「悠陽もすぐ出来るようになるよ」
悲しみを押し殺すように、二人は楽しい事を話して眠りに着いた。
始めの街に着くまでに1週間くらいかかった。
その間、山菜やたまたま捕れる小さな魔獣、あとはカバンに入れておいたお菓子などを食べた。
合間に食べた、凪の母親の作ったサンドイッチとおにぎりは、「うめぇうめぇ」と2人して泣きながら食べた。




