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偽物が生まれた日

その日は、あまりに美しい快晴だった。いまこの大陸で人と魔族の覇権をかけた争いが行われているとはとても思えなかった。

 麦の穂が黄金色に揺れ、村の子供たちが笑い声を上げて駆け回る。ニルスもまた、その平和な風景の一部として、平凡な未来を疑わずに生きていた。

ニルスの住んでいる村は魔族との争いの前線からは遠く離れていた。ここまで平和ボケしているのもある程度は仕方がないのだろう。


だが、そんな日常は唐突に終わりを迎えた。

いきなりの襲撃、それは死を覚悟する時さえ与えてくれなかった

燃え盛る故郷の村。幼いニルスの目の前には、絶望そのものの化身である魔王軍の軍勢がひしめいていた。逃げ場はなく、熱風が肺を焼き、人々の悲鳴は段々と聞こえなくなる。

 

魔王軍は淡々と虐殺を行っていた。楽しむそぶりもなく。淡々とただ命令に従っているだけのように。

ニルスは恐怖に震えていた。そして魔の手がニルスにも及び剣が眼前に突き付けられる。


(ふざけるな...こんなところで終わるのか、父さん母さんそして俺も、何もできずに)


その時、唐突にニルスの手の甲が明るいというには生ぬるい程の光を放つ。

あまりの眩しさに視界が爆ぜる。  

ニルスは悲鳴を上げて両目を覆い、地面を転がった。瞼の裏まで焼き尽くすような神聖な白。その光の中にいたのは、わずか数秒。


だが、視力が戻った時、そこには「奇跡」という名の不気味な光景が広がっていた


「……え?」


数百の魔王軍。すべてが、跡形もなく消え去っていたのだ。

そこにあるのは、ただ静かに燃え続ける村の残骸と、降り積もる灰だけ、断末魔すらも聞こえない。まるで、誰かが物語のページを強引に破り捨てたかのような、不自然すぎる静寂。


ニルスは一人でたった一人で立ち尽くしていた。

(何が起こったんだ、魔王軍が...すべて...消えた?)

混乱するニルスの耳元でとろけるような甘い声が発せられる。


「大丈夫ですか?神の声を聴いて来たのですが遅かったようですね」          

ニルスは混乱している頭でできる限り思考し、すぐそばにいる自分と同じぐらいの年の女の子に尋ねる。

「君は誰?」 

女の子は少し考えながら、しかし甘くささやくように答える

「誰と言われても...アルバ教団の聖女ですかね?」


だが答えたときのその目はニルスではなく手の紋章を見ているようだった。


その後ニルスはアルバ教団と名乗る者たちに保護され村で起こったことをすべて説明した。

聖女たち教団の者たちはこれを『神の奇跡』と呼んだ。 神の加護が発動し、哀れな村の生き残りを守るために魔王軍を消し去ったのだと。そして、その紋章はその証だと。

そしてニルスは伝説の紋章を持ち神に救われた、魔王を倒すことができる勇者としてあがめられるようになった。

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