カラクレナイ#8 案外ぬるっと終わった
魔式の練習をし始めてから7日目になった。そのうち調整を始めたのが2日目の夕方ぐらいから。えーっとつまりもうかれこれ5日ぐらいここで詰まっているわけだ。ちなみに吸血鬼になって体に無理が効くようになり、睡眠などはちょっとしかとってない。体感1時間くらいだが体内時計はぐちゃぐちゃになっているからそれより長いかも。いや短い可能性もあるか。
それはさておき、現在の進捗はというと爆発の範囲が最初に比べ10分の1ぐらいには狭くなったぐらいか。つまり最初に比べ90%進んだということ……ではないか。ここからの10%が……ってそもそも可能性は無限にあるのだ。100%という単位では測れないだろう。えーあとは魔力や生命エネルギーの調節がすごく上手くなったことぐらいか。今では0.0001マリョーク(独自単位)の違いもわかるようになった。まぁ明日にはナイトメアも帰ってくるし楽勝だな。これで勝つる。
……なんて強がってみたものの、事実としてあと3日しかなくしかもこのパスワード当ては進めば進むほど魔力などの操作が難しくなる。やればやるほど弱い力でやらないといけないからな。逆に5日でここまで進めたのを褒めて欲しい。本当の地獄はこの先ってことだ……あと3日で終わるのか?これ。そもそも魔式というのが数百年単位で習得するものなのだ。できなくて当たり前だろ。
だがまぁやるしかないから今も調整を繰り返し爆発を起こしているわけだが(不可抗力である)、そういえば体の再生がだんだん早くなっている気がする。この体もだんだんこの環境に慣れてきたということなのだろうか。ただ爛れた肌が瞬きする間に治っているというのは、やはりまだ慣れないが。
肝心の魔式の調整なのだが、さっき言った通りやればやるほど弱い力でやらないといけなくなる。少し気を緩めると一定のラインを超えて力を弱めてしまい爆発が発生しないし、やればやるほどより緻密な操作が必要になるということはもちろん集中していないといけないため疲れるし、すごくめんどくさい。あと昨日とかに気づいたが生命エネルギーで電気信号を使っているため調整をしてる最中、体が思うように動かないことが多々ある。体に悪そうだしさっさと終わらせたい。もし俺に勉強ができれば数学を使って値を求めることとかできたのだろうか。少し残念だ。
「……」
うーむ、このまま調整を続けているとぬるっと終わってしまいそうだな。運が良ければすぐに終わるだろうし、言ってしまえばただひたすらに爆発を喰らい続けるだけではあるんだよな。しかもすぐ治るし痛みももう慣れたし。別に他に誰かいるわけでもないから喋るようなこともないし。独り言は基本話さないしな俺。まぁ明日にはナイトメアが帰ってくるだろうし、少し賑やかにはなるか?2人だけだが。
そう思っていると空に小さな裂け目があきそこから一枚のノートの切れ端のようなものが落ちてきた。嫌な予感がしてきた。一旦調整をやめ、その切れ端を手に取り読み上げる
「やっぱりわしの用事8日では終わらんかった。帰るのは早くても明後日ぐらいになりそうじゃ。1人でも魔式の修練はやるんじゃぞ。」
「……えっ」
思わず驚きの声を漏らしてしまった。
えっ?いや、まぁ帰ってきてもおそらくアドバイスとかはもらえなかっただろうが、話し相手がいなくなったのかぁ。もう7日も人と会っていないからか、とてつもない心細さが心にあるのだ。最近聞いた音といえば爆音と爆音と爆音と……いや全部爆音だな。悲しい気持ちになってきた。というかこいつの用事って何だよ。世の中にある大体の用事は7日もあれば終わるだろ。
はぁ。いやもう全部吹っ切れて調整だけに没頭しよう。うん俺の唯一の理解者は魔式くんしかいないのだ。ここまでずっと一緒にいてくれた魔式くんを何としても完成させなくては。そう思い調整を再開し始めた時。二つの力を混ぜ合わせいつものように爆発すると思っていたら急にオーラに包まれナイトメアが魔式を使った時のようになっていた。
……いや本当にぬるっと終わるとは。なんかもっとこう……秘密の裏ワザが!!とか、謎の人物が!!とか他のイベントはないのか?大丈夫か?こんな習得方法で数百年も得してしまって。まぁ再現できなかったら意味ないし、ナイトメアのように攻撃に転用できないとだからまだやることはあるのだが……
で魔式の検証をしているのだが再現は簡単にできた。明日には勘を忘れてるかもだが一応もう爆発を経験することはないと思う。そしてオーラに包まれている状態だが、オーラ状態だとなんかいつもより早く動ける……そして力が強い……多分。試しに反復横跳びをしてみたのだが、オーラなしとありじゃダブルスコアどころかクアトロスコアぐらい付けられていた。またその辺の岩を殴ると簡単に砕けた。岩を砕くってどんくらいのパワーが必要なんだ?リンゴを潰せるラインの握力は80kgとかだったはずだが。いや、この場合握力じゃなく腕力か。
えーっと、ナイトメアの言ってたことから考えると魔式によって莫大なエネルギーが生み出され、体にエネルギーが駆け巡っているのだろう。そのおかげで体が活性化されているって言うことか?
とりあえずこのオーラ状態を維持するとして……ナイトメアが放ったあのパンチ。あれを俺もやってみよう。見た感じ、ただエネルギーを拳に集めてから殴っているだけのはずだ。ここまでずっと魔力操作だけをしてきた俺にとってエネルギーを拳に集めるだけなんて簡単なこと……さっさと岩壁にぶち込んでやろう。意気込みながら岩壁と向き合い拳に意識を集中する。一瞬で準備は終わり大きく振りかぶって拳を叩きつける。空手とかボクシングとかはやったことないから見よう見まねである。石を砕く感覚と同時に壁が悲鳴を上げる。ちょっと手の甲が痛いがまぁ大したものじゃない。俺が残したクレーターは隣にあるナイトメアの作った亀裂と比べると随分小さいものだが大体直径4mぐらいの跡ができていた。
まぁ上出来だろう。こんなにぬるっと終わるとは思っていなかったが、習得できただけよしとしよう。本来数百年もかかる工程をたった7日で終わらせたのだ。人生をこの数百年分も無駄にせずに済んだ。これでいいだろう。そういえば魔式の検証が終わった後、血術もやってみたのだが、この前よりももっと複雑なことができるようになった。単純に強度が上がっていたり、血槍がとんでもない軌道を描くことができるようになった。血器創造も使い勝手が増したのと以前できなかった刃物の生成もできるようになっていた。緻密な魔力操作ができるようになった副産物のようなものだな。
大体検証が終わった後この修練場を見渡すと至る所がぼこぼこになっていて爆発の痕跡がわかりやすいぐらい付けられていた。ここまでぼこぼこだとナイトメアが帰ってきた時何か言われないか心配になってきた。ふぅ、やることも無くなったし今日は1時間とは言わず長く寝よう。睡眠は大事だしどうせ起きてても魔式のもっと複雑な検証ぐらいしかやることがないんだ。2日ぐらい寝てもいいな。
……いや、寝るのと検証以外やることがなくなったがナイトメアが帰ってくるまで俺はどうすればいいんだ?




