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106/106

カラクレナイ#106 突きつけられた壁(50cmぐらい)

ライノに言われた課題というか、条件?は1週間で1km前線を押し上げろというものだった。あのバカみたいな攻撃を再現しろと言われなかっただけマシだな。1km押し上げるっていうのがどれくらいの規模感なのかは知らないが……1週間か。単純計算1日140mぐらいを掃討してまわればいいって考えるとなかなか簡単っぽそうだが。あーいや、この戦線ってどんくらい続いてんだ?それによって話は変わって来るが……


「1kmって言うけどこの戦線、どこまで続いてるんだ?端なんて見えなかったが……」


「ここ銀世界における北の戦線は端から端までおよそ200km……まぁ案ずるな、貴様にそこまでの重荷を背負わせる気はない、転ばれても困る。だからまぁ、その中でもここら一帯10kmを押し上げてもらう。」


10km……元々の前線が200kmだからその20分の1、か。それくらいなら余裕で達成できそうだが、まさかここに俺だけ?俺の課題だから俺がやるものだろうけど、せめて俺が上げた前線を抑えてくれる、まぁ保存してくれる人ぐらいはいないと……だって他のとこに行って押し戻されてりゃ世話ないし。


「スケール感はわかったが、味方は?まさかだが俺一人ってわけじゃないよな……?」


「安心しろ。駐屯軍がいる。あやつらは防衛の達人、一度上げた前線を下げることなど死んでもないからな。だが、上げるのは貴様がやるのだぞ。そこまで手が回らないからな。」


あぁ……そういえば飛び越えてきたから見てないがそりゃ前線を守ってる兵士もいるよな。じゃあ守りはその人たちに任せておけばいいわけだ。さらに楽勝に思えてきたな。10kmを1km押し上げる…それを7日間で成し遂げる。これで肉体が鍛えられるかと言われると少し効率が悪いんじゃないかと思えてきたが……言われたことはやろう。指示待ち人間みたいだが、俺の場合できなかった時なにが起こるかわからないからな。しょうがなくやってるだけだ。

さて課題は明日からだ。かくなる上は休眠と洒落込みたいところだが、生憎俺のいる場所は雪原の真っ只中、ここで寝たら確実に死ぬ。野営地は……と離れたところに朧げにテントと光が見える。寝床はあそこで決まりだな。


「待て」


そうしてそちらの方向に進もうとするとライノに呼び止められる。な、なんだここにきて殺そうとしてこないよな?


「そちらは駐屯軍の拠点だぞ。」


「だから向かおうとしてんだろ?なんで止めんだよ。」


「……お前は……アホなのか?」


急にディスってきた。やはりいつも通りのライノだな。よかったーいや、よくはないけど、駐屯軍の拠点のなにがまずいんだ?真っ当な兵士の人たちがいっぱいいるだけなんじゃないのか?


「……この戦場を指揮しているのはディストリア家の者だ。お前も見ただろう?あの……レイピアを使う……純血至上主義の」


「レイピア……?あぁ、あの……」


スパーリングでセンドウさんと戦ってたやつか。あわよくば殺そうとしてた……いかにもな貴族。俺のことすごい目で見てたの忘れてないからな。そうかあいつが……だとするとああいう拠点には近づかないほうが得策だな。一体どういう指示をされているのか、なにされるかわかったもんじゃない。それでライノみたいに問答無用で殺そうとされても困る。


「察しが悪いなぁ貴様は……ついてこい。今日は我輩の野営地に泊まるといい。だが明日からは自分のことは全て自分でするのだぞ。」


なんだこいつ、急に面倒見の良さを見せてきやがって……寝込みを襲われたりしないか?再三言っておくがまだ俺はこいつを信じてないぞ。あとちょっと仲良くなった感を出して来るな。普通に怖い。


「……!おい、立ち止まってないで早くこい。今の戦闘の騒ぎで兵士どもが寄ってきても知らんぞ!我輩は庇ったりせんからな!」


「おいおい、なにそんな急いでんだよ。別にいいだろ?ちょっとぐらい休んだって」


「アホなことを抜かせ、貴様はほとんど戦ってないではないか。」


何を言う。将軍を誘き寄せるため結構派手に戦ったぞ。お前もそれに引き寄せられてきたんだろ。それに妙に急いでるなぁ。なんでそんなにここを離れたがるんだ?別に派手に戦って兵士が寄ってきてもライノ自身は不利益を被らないと思うのだが……英雄だかなんだか言われてもてはやされるだけだろ?俺は捕まるかもしれんが……


「とにかく!さっさとここを離れないとなんともまずいことに……」


「何やら大きい音が聞こえたと思えば……!ライノ様!!やはりあなたでしたか!!」


「ぐっ、一足遅かったか……!」


ん?この声は……空から?そう思って空中を見ると見覚えのある家紋と色の鎧を身にまとった白い奴が降りて来る。ライノの横に着地したそいつは着くなりすぐにライノに跪き深々と頭を下げ始める。まるで崇拝しているかのようなその姿は側から見たらなんとも滑稽だが……当の崇拝されているライノも困惑している、いやもっと強い、軽蔑しているような目でそいつを見下ろしていた。

急に現れたかと思えばまさかライノが早くここを離れたがったのってこいつが来るからか?まぁ少なくともあのような場(四聖会議)に呼ぶぐらいには親交があるのだと思ってはいたが…まさか親交じゃなくて侵攻だったとはな。ライノがやけに冷たいのは単純にうざったいからだろう。


「ライノ様!ようやくお帰りになられたのですね!おかえりなさいませ!魔力感知で探知してからあなた様のご帰還をお待ちしておりました!そして先ほどの戦闘……肉体のみを使った吸血鬼の頂点であるあなた様にしかできぬ技!私はひどく感動いたしました。そのため今日こそあなた様に弟子入りしたいと存じます!」


「断る!今後一切我輩の前に姿を見せるな!!」


「そんなこと言わずにぃ。今後とも熱い関係を築いていきましょうとも!」


……うん、こんなに信心深い信徒がいるんだ。俺如きがいるのは無粋だろう。さてと、邪魔者は大人しく退散するとしよう。


「……じゃ、ライノ、あとは頑張ってくれよな。」


「貴様……!ちょ」


「待て」


ライノが言い終わるよりも前に白い奴の手が俺の肩に掴む。ぐっ、力強すぎだろ……!振り払えねぇ……!さっきまで跪いてただろうが……!動き早すぎるだろ。俺はここから離れたいだけなんだが……!


「貴様、ライノ様とどう言った関係だ。」


「関係ぇ?そんなのただ戦場でばったりあった戦友だよ。さっきだって俺のピンチを助けてくれたのさ」


「貴様は嘘をついているな。」


「は?」


真実だ。実際、嘘は言ってない。言うことを少し省いただけだ。こいつはどこが嘘だと言うんだ?


「貴様は混血だろう?匂いでわかる。そんなものがライノ様に近づく理由はただ一つ……」


「暗殺だぁっぁぁぁぁ!!!!!」


「断っっじて違うねぇ!!!!!」

本当のライノの力を知っているのなら暗殺されても大丈夫(そもそも攻撃が通じない)ということも知っているのでこの白い奴はライノ界隈ではにわかです。それか心の奥底にうっすらと不信感があるか。でも最大手なんだよなぁ……

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