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 東街道に出てすぐに南へと別れる道へ曲がる。


「改めて仕事の確認だ。依頼は農園の管理者から。作物を食い荒らすドンボアを駆除して欲しいというものだ。ドンボアは群れで来てるらしく、20匹近いとの事だ」


 歩きながら二人に今回の仕事の確認をしておく。今回は一応中級モンスターの群れが相手だからな。


 ドンボアは中級モンスターに分類されるが、戦闘力はそこまで高くない。地域によっては下級モンスター扱いされる事もある。


 大人と変わらないくらいの体躯を持ったイノシシのようなモンスターだ。実際、野生のイノシシを魔王がモンスター化させたという説もある。

 普通のイノシシとの相違点は、足がやや長いという事と、牙は地面と水平に、つまり構えたランスのように生えていると言う事。


 一度走り出したら止まらない猛進ぶりを見せるが、小回りはあまり利かないため、戦い次第では楽に討伐出来る。


 が、それは一体での話。群れになるとなかなか厄介だ。



「もしかしたらボスボアも居るかもしれん。そしたら危険だからな。二人とも十分に気をつけろよ」

「ええ、分かりましたわ」

「い、居ない事を祈ります」


 一定以上大きくなった群れにはボスボアと呼ばれる個体が居る事がある。名前の通りボスだ。通常のドンボアより二回りも三回りも大きく、牙が左右に二つずつ。通常の個体が黒っぽい体毛なのに対してボスは灰色だ。


「ヴィオラ、お前に心配は無用だが、相手もお前も直線タイプ。無茶はするなよ」

「まあ、それでは私も猪突猛進と聞こえるじゃありませんこと?」


 ご名答。



 打ち合わせをしてる間に目的地が見えてきた。


 綺麗に整えられた作物の緑が、まるでカーペットの縞模様のように伸びていき、その上を風が両手を広げて吹き抜けていく。


 ポカポカと照らす太陽を受けて、葉がキラキラと瞬きして、あちこちで撒かれる水が時折虹を呼び込む。


 平原と森の境に広がる畑。このパデスの人口を支える食糧元の一つだろう。


「わあっ、凄いですね」

「たしか芋類や人参などの根菜を主に作ってるんだったな。まさにパデスの食糧庫だ」

「美しいですわ~。それを踏み荒らす困ったさん達は成敗いたしませんと」


 農園は柵で囲まれており、その入り口になる素朴な木のゲートに赴く。

 入り口に近づくと、そこに居た二人の衛兵が制止してきた。


「止まれ。旅人か? この先は関係者以外立ち入り禁止だ」

「俺らはここの管理者に依頼されて来た者だ」

「依頼? ああ、もしかしてあんたらがスゲエヤー屋か?」


 スレイヤーな。皆わざとか?


「話は聞いてる。中へ入ってくれ。俺らじゃ全く役に立てなくてな」

「あ、あれ? そっちの女性はどこかで見た事あるような······」

「まあ、私の美しさはどこに行っても記憶に残ってしまうのね! でも、今日の私は麗しきヴァイオレットではなくてよ。モンスターキラーのヴィオラですわ~!」


 目を丸くして、口をあんぐりと開ける衛兵らを後に俺らは中へと入っていった。


 入ってすぐの場所に家があり、そこをノックする。


「どうもー。スレイヤー屋だ。モンスターの討伐に来た」

『おおっ、もう来てくれたか』


 中から依頼主の管理者が喜びの顔と共に出てくる。


「いや、まさか最初に私の所に来てくれるとはな。助かるよ」

「あー。うん」


 本当は最後ですとは言いにくい。


「早速仕事に取りかかりたいんだが、平気か?」

「もちろんだ。実は、ちょうど今奴らが来ていてな。南側の一角だ。せっかく出てきた新芽を我が物顔で食い荒らしていて······腸が煮えくり返りそうだ」


 怒り心頭の管理者から詳しく状況を聞き、早速その地点へと赴く事にした。


 農園の中を歩くのは初めてだが、何人もの労働者が水を撒いたり土をほぐしたりしていて長閑(のどか)な田園風景のようだ。


「意外にも普通にしてますね?」

「だが、一人一人の表情から不安や怯えが読み取れる。本当は逃げたいんだろう」


 青々とした葉の間を通り、奥へと向かう。


 やがて、労働者の姿が消え、衛兵が立つ休憩所の小屋が見えてきた。


「ん? お前達、労働者か? この先はドンボアどもがウロウロしている。危険だから進むな」

「俺らは──」


 俺はさっきと同じように、仕事で来たという旨を伝えた。


「そうか。それは頼もしい。噂は聞いてるぜ。またパパ~っとやってくれ」


 どうやら俺らの活躍を知ってるらしい衛兵のようだ。



 いよいよ、ドンボアに占領された地帯へと侵入する。柵や隔たりは無い。いつこのままこちら側に移動してくるか分からない。


「よし。まずはナズ、ヴィオラにスタミナ増強剤のポーションを渡してやってくれ」

「はい。ヴィオラさん、こちらを。全部飲んでしまって下さい」

「ありがとうですわ」


 小ビンを受け取り、底をグイッと天に向けて飲み干すヴィオラ。


「ん······。ふう」


 小ビンをそっと返し、背中の大剣の柄を掴むヴィオラ。


「さ、これで万端ですわね」

「まだだ。ナズ、強化魔法をかけちゃってくれ」

「はいっ。では······大いなる天の加護よ、我が言葉は祝福の音なり、人の勇気よ、力よ······」


 小さな杖で呪文を唱え始めるナズ。


 少しして、魔法の流れが俺らの身体に溶け込む感覚が伝わった。


「オッケーだ。サンキューな、ナズ」

「い、いえ。これくらいしか出来ませんから」

「これくらいなんてとんでもないですわ。さっきのポーション、もう効いてきましたわ!」


 グッと愛用のドラゴンスレイヤーを掲げるヴィオラ。


「今ならワイバーンでも一撃で首を落とせそうですわ~! 私は竜の姫よ~! ヒャーッ、血肉踊りたってワルツですわ~!」

「ナズ、ヤバい薬を渡してないだろうな?」

「だ、大丈夫なはず、です」

「あっ、気合い入れたら早速ですわ!」


 と、そこでヴィオラが声を上げる。

 俺も彼女の視線の先に目を向けてみると、そこには今まさに地面を掘り返しているドンボアの姿があった。


「居たな。まだ気付かれてないようだし、このまま後ろから──」

「成敗っ!」


 考えるより先に動いたヴィオラの体。

 肉体強化により、ほんの一足跳びでドンボアに肉薄する。


 ──ズダアンッ──


 そして、およそ斬撃の音とは思えない轟音を響かせて、一刀の下にドンボアを両断してしまった。


「まずは一、ですわね」

「相変わらずの脳筋。が、今ので──」


 流石に今の轟音を聞き逃す奴らじゃなかった。ドンボアのずんぐりとした体があちこちから現れた。


お疲れ様です。次話に続きます。

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