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 多数のモンスターの気配がする。ヴィオラもそれを感じとったようだ。


「近くに居ますわね。それも、随分と多い。お茶会でも開いてるのかしら」

「あいつらに茶の味が分かるとは思えんが」


 気配のする方へと静かに移動する。

 やがて、森に隣接した街道にモンスター達が蠢いているのが見えた。


「多いな。下級モンスターばかりのようだが」


 スライムやアイアンバグ、グラブホッパー、ゴブリン。それらが多い。

 そんな下級モンスター達がわらわらとひしめいている。


「ん?」


 しかし、よく観察してみると争ってる様子が見られた。


「なんだ、縄張り争いか?」


 さらによく観察してみると、道には荷物が散乱しており、どうもモンスター達はそれを奪い合っているようだ。


「ありゃあ食料か?」

「まあ、落ちてる物を手で掴んで食べるなんてはしたない」


 おそらく、商人の馬車か何かがゴブリン辺りに襲撃され、慌てた被害者が荷物を投げ捨てて逃げたのだろう。


 そして、そこへ他のモンスターも集まって来てしまい、街道を塞ぐようになってしまったのだろう。


 この分ならしばらくすれば騒ぎも無くなりそうだが、町の近くだし二次被害が出ないとも限らない。やはり依頼通り殲滅しておこう。


「さて、どう攻めるかな。と言っても俺らは二人とも前衛だし、不意打ちってのも難しいだろうし──」


「おーっほっほっほ! そこなモンスター達! 善良なる民の道を汚し、通行の妨げをするとは不届き千万ですわ~!」


 どう奇襲すべきかをヴィオラと相談しようかと思った時にはその姿はなく、既にモンスターどもの目の前に剣を突きつけ、堂々と立ちはだかっていた。


「この私、ヴァイオレット・ラインフォースが直々にお相手してあげましてよ。さあ、一人でも束でもお好きなようにかかってきなさいな」


『ギギッ』

『ガチガチガチ』

『ジュルルッ』


「おい、何やってんだよ」


 既に名乗りまで済ませたヴィオラの横に並び、俺も剣を抜く。


「相手はモンスターなんだから名乗り上げて正々堂々とやる必要なんかねえだろ」

「あら、それもそうでしたわね。でも、例え相手がモンスターとはいえラインフォースの気高き私が不意打ちなんて美しくありませんわ。やっぱり正面から力の差を見せつける。これこそ高貴な者の生きざまですわ~!」

「はあ。たく。怪我はすんなよ」

「ふふ、頼もしいナイトが居ますもの。心配なんてしてませんわ」


 俺らが構えると同時に、モンスターらもさっきまでの争いなど忘れたかのように殺意を向けて突っ込んでくる。


「おーっほっほっほ! 高貴なる力を見なさい!」


 ダンっと力強く踏み込むヴィオラ。

 その手に魔力が集約されていくのを肌で感じる。


「せいやあっ!!」


 怒号のごとく気合い。それと共に放たれる一閃。


 ──ズガアアッ──


 剣の軌跡を追うようにして稲妻の光が瞬く。

 それは雷鳴のような轟音を辺りに轟かせ、向かってきたスライムとゴブリンが引き裂かれるように分断される。


「はああっ!」


 返す手でさらに追加の一撃。それがアイアンバグの硬い甲殻をも叩き切る。


「どうかしらっ? 高貴なる者の力は?! ねえっ、トレイルさん!」

「あ、いや。流石すげえ威力なんだけどよ······」


 まだ来るモンスターを纏めて薙ぎ払うヴィオラ。

 その威力は桁違いだ。少なくとも、威力だけなら俺が使う最高技に匹敵する。


 そう、威力だけなら。


「はっ、ふっ、おっ、おっほほっ、ほっ! はっ、つ、次はっ、どなたかしら?!」


 再度閃く稲妻の一刀。


 竜族は瞬間的ではあるが、他の人種を圧倒する程の凄まじい魔力放出能力を持っている。

 その力は凄まじく、正に一撃必殺。馬力が違う。


 が、その代償というか、反動というか、体力の消耗が極端に激しい。


 俺も詳しくは知らないが昔聞いた話では、魔力の流れが他の人種と異なる独特な物であるため、意図せず大放出してしまうらしい。


 つまり、攻撃力がめちゃくちゃ高い代わりにスタミナがすぐに尽きる。


「ぜえっ、ぜえっ、ぜえっ、ふ、ふふっ、わ、わた、くしの、ち、力に、よ、酔いしれましたかしら?」

「ああ、流石だな。けど、俺も見せ場が無いと格好がつかない。残りは貰うぞ」

「あ、あら、そう。なら、はあはあっ、さ、差し上げても、よろしくてよ」


 ヴィオラの剛撃によって大半は片付いてる。俺は残りの露払いだ。


「はっ!」


 風属性を纏った鋭い刃で、迫り来るモンスター達を斬っていく。

 ゴブリンは首筋を正確に切り、スライムはコアがあるであろう中心に当たるよう真っ二つにし、アイアンバグは体当たりを躱しざま、柔らかい腹に刃を通す。


 残ったモンスターらはすぐに片付いた。


「終わったな。大体40かそんくらいか」

「はあ、はあ、はあ、ふう······。おほほ、なんて事もない相手でしたわね」


 そう言って小さな笑い声を忍ばせるヴィオラ。まだ高笑いを出せるだけ回復していないらしい。


「トレイルさん、腕は落ちてないようですわね。私ほどでないにしろ、貴方も流石はと言ったところでしたわ」

「お褒め頂いて光栄ですわ。俺もやる時はやりましてよ」

「おほほ、そうでないと私のライバルは務まりませんもの」


 何故かライバルと思われている俺。


「そんじゃ帰るか」

「ええ、そうね。あら、やっぱり壊れてしまったわ」


 ヴィオラが使っていた剣は、彼女のその剛力に耐えられず刃が大きく欠け、もう使い物にならなくなっていた。



 東門に戻り、衛兵達に報告をする。


「て訳で、多分全部片付けたと思う」

「そうか、助かったよ。実は南の交易所の近くにもモンスター達が現れて人員が足りなかったんだ。報酬はどうすればいい?」

「あー、えっと。今回はみんな小型モンスターばっかりだったからとりあえず一体につき30ゴールドかな。ああ、でも半分以上はヴィオラがやったから半分くらいの数で計算してくれ」

「分かった」

「報酬? 30ゴールド? 計算?」


 隣で聞いていたヴィオラが首を傾げる。


「何の話をしてるのかしら?」

「あ、いや~······」


 やはり、流石に聞き流されはしなかった。


 上手い言い訳を思い浮かぶ前に、衛兵が


「ご存知ありませんか? この男はスプラッター屋と言ってモンスターを有料で討伐する商売をしているんですよ」


 と言った。


「有料で、モンスター討伐の、商売? トレイルさんが?」


 ヴィオラが一つ一つ咀嚼するように呟き、俺の方を見る。


「トレイルさん、貴方そんな仕事を始めていましたの?」

「い、いや。その、だな。他に雇ってくれるとこも無かったし、俺なりに考えに考えた苦渋の決断でな。一応ちゃんとした商売として俺も責任持って店長をしててな······」


 俺の弁明虚しく、ヴィオラの表情にみるみる怒りの感情が湧いていった。


「それを私に黙っていたなんてっ。帰りますわ!」


 プリプリと怒りながら、ヴィオラは一人でズンズンと通りへ消えて行ってしまった。


お疲れ様です。次話に続きます。

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