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本日3本投稿予定です。
まあ、ちょいとしたアクシデントこそあったものの。
「それじゃあ、ターナ。今後はそういう事でよろしく頼む」
「任せてずら! オラもたくさんガッポガッポ稼いで仕送りしたいで」
「そう言ってくれると助かる」
リストには無い素材などは全部売っぱらって金にしてもいいからな。
ターナに計画と今後の方針を伝え終わった。
後はこのまま部屋を出ればいいんだが······。
「······」
まだ羞恥に顔を赤く染めたナズが恨めしげにこっちを見上げている。
「あー。ナズ。そうだ、ちょうど良かった。ほら、ポーションも大分溜まったろ? 今から一緒に売りに行かないか?」
「······はい」
まだ怒ってるようだが、応じるナズ。
どこかで何か買って機嫌を取らないとな。
幸い、フランに出くわす事もなくナズと共に外へ出る事に成功した。
今フランに会ったらナズの様子に気づいて、その流れでさっきの事を知られてしまうかもしれんからな。
「えっと、たしか倉庫にあるんだよな」
「はい。結構あるんで手で持ってくのは大変ですよ?」
「なら、台車使うか」
台車を押して裏に回り、倉庫の中へと入る。
棚には大小様々なビンと、ポーション用のビンが置かれている。
「どれなら売っていいんだ?」
「えと。そっちの右側のはトレイルさん達のために調合した物です。それ以外ならどれでも」
「そうか。なら、載せられるだけ載せてこう」
そうだ。今後の事を考えて、もっとちゃんとしたビンのセットを揃えてしまおう。
「ナズ、ここは俺がやっとくから、お前はフランとこに行って共益費を500ゴールドくらい貰ってきてくれ。ついでに、今日の晩飯に使いたい食材があるかも聞いておいてくれ」
「分かりました」
「あ、あと。くれぐれも、さっきの事は内密に······」
「······それは約束出来かねます」
無情な言葉と共にナズは行ってしまった。
「今日の晩飯······食えるかなあ」
そんな不安を抱えながら、ポーションを慎重に載せていく。
ポーションが載せ終わり、台車を表へと回したところでちょうどナズが出てきた。
「お待たせしましたトレイルさん。お金も頂いて来ました」
「おう、行くか」
ゴトゴトと音を立てるポーションのビン達を気遣いながら、俺とナズは薬屋目指して出発した。
俺らの拠点は住宅街から少しだけ離れてる。
同じ町の中ではあるが、ちょっとした林道を通って行った先にあるのだ。
そのお陰で広々と言うか、のびのびと庭先で火とか焚けるんだが、立地的には目立たない場所だ。
「この道も依頼者用に舗装したいとこだな。あんましガタガタしてると馬車で来たりする太客は困るかもしれん」
「でも、こういう道素敵だと思います。なんだか妖精のトンネルみたいじゃないですか?」
「妖精のトンネルか。面白い表現だな」
確かに。木々が擦れあって日だまりがいつも瞬いて遊んでるようだし、通り抜ける風にも、目に見えない笑い声が乗ってるようだ。
「そうだな。道の石とかだけどうにかした方がいいが、このまんまが良いかもな」
「あ、でも。もし、トレイルさんが嫌なら、それはトレイルさんが決める事ですし······」
「決めるのは俺かもしれないが、俺はみんなの意思を聞いた上で決定する。ナズがこの道を気に入ってるなら、なるべくそのままにしよう」
「あ、ありごとうございます」
妖精トンネルが終わり、細道へと出る。
その細道を進むと大通りに出て、薬屋はその通りの途中にある。
ご贔屓にして貰ってる薬屋の前に台車を停める。
「ナズ、店主に話してくる。少しここで待っててくれ」
「はい」
ナズにはその場で待ってもらい、店に入る。
──チリリン──
「はーい、いらっしゃい。お、あんたか」
「よ」
すっかり顔馴染みになった店主のオヤジ。
「今日も薬草を売ってくれるのかい?」
「今日はポーションを売ろうと思ってな。かなりの量があるんだが、どうだ?」
「おお、助かるよ。最近は回復ポーションが売れるのはいいんだが、すっかり品不足になってしまってな」
「そうか。アンタんとこも商売繁盛なのか」
世間話をしながら、俺らは一旦店の前に出た。
台車に寄りかかって待っていたナズがしゃきっと姿勢を正す。
「これに載せてあるやつ全部なんだが」
「お、おお。これは凄いな。ん? こちらのお嬢ちゃんは?」
「ああ、ちょうどいい。彼女はナズ。このポーションと、今までの薬を全部作ったのは彼女だ」
「な、なんだって? この子が」
驚くオヤジに、ナズは気恥ずかしそうにペコっと頭を下げた。
オヤジが感心したようにナズに言う。
「いやー、君がこのポーションの作成者だったのか。毎度毎度ありがとう。君のポーションを並べるようになってからお客がリピートするようになってね。薬と言えばここみたいになってるんだ。ほんと助かるよ」
「い、いえ。そんな大した事は······」
「いや、大したもんだよ。これからもよろしく頼むよ!」
オヤジからの感謝の言葉に、ナズは嬉し恥ずかしそうに俯いて頷いていた。
持ってきたポーションは綺麗に全部買い取ってもらえ、俺らの手元には4,000ゴールド近い金が入った。
空になった台車と、重くなった懐の財布の対照的な変化にホクホクとなりながら、ナズと帰路につく。
「やったなナズ。この分ならお前の儲けはかなりだぞ。えーっと、まずは1,200くらいが共益費で、残りの内2,800くらいがナズで、そこから引いた残りが······駄目だ、分かんなくなってきた。帰ったらフランに計算して貰おう」
「に、2,000······ほんとに、そんなに私が?」
半ば呆然とするナズ。
「なんだか夢みたいです。この間まで野たれ死ぬのも不思議じゃなかったのに」
「俺もそうだなあ。お互い、何とかなって良かったな」
「は、はい。これもみんなトレイルさんのおかげです。本当にありがとうございます」
「改まって言われると何だか照れるな」
だが、安心したような笑顔を見ると、つい俺も気が緩んでくる。
「そうだ。ナズ、少し買い物してこう。お前のポーションを入れるためのビンと、フランからリクエストのある食材を買わなくちゃな。あと、こんなに金が入ったんだ。何か買ってやる」
「え、そ、そんな! 私がトレイルさんに何かお礼をしたいくらいなのにっ······」
「遠慮するな。それに······」
「それに?」
「お前があんな可愛らしい物を履いてると知れただけで俺は満足だから、それが礼みたいなもんだ」
「っ~~!! もうっ、トレイルさんの馬鹿!」
頬を赤らめてプイッとそっぽを向くナズ。こういう反応が可愛くて、ついからかいたくなる。
「フランさんに言いつけちゃいますからね!」
「それだけは勘弁してくれよ~。ナズ~。この通りだ~」
「もうっ。もう······本当にトレイルさんは······」
ナズは呆れながらも笑ってくれていた。
そんな穏やかなひとときの事だった。
「おーっほっほっほ! 見つけましたわ~!」
嵐を告げる声が響いた。
お疲れ様です。次話に続きます。




