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ズラリと並んだ文字。それらはどれもモンスターの名前とその部位、素材の名称だ。
「けっこう色々あるな。けど、やっぱりっつうか上級モンスターのが多いな」
「そうなんだ。魔法属性を持つのは大抵上級モンスターだからね」
今日は朝起きてからはのんびりと過ごした。
飯を食って、フランと一緒に酒場のレイアウトを考えたり、ナズの作ったポーションを整理したり。
そして、食休みを終えた後はフルトと一緒に今後のあれこれを酒場で検討する事にした。
難しくて気取った言い方をするなら、事業企画会議だ。
「しかし、本当に出来るのか? モンスターの素材を利用した武器なんて」
「理論上は可能なはずだ。現に、モンスターの素材をそのまま利用して道具にする事自体は珍しくない」
「たしかに」
農家とかだと、サイスマンティスの鎌腕なんてそのまんま鎌にして使ったりもする。
「でも、モンスターの素材はあくまでも生物の一部。最近の学会では有機物って言い方とかもあるんだけど、とにかく石とか鉱石みたいなのとは違って生物由来の物質というのは時間経過と共に劣化しやすいという難点がある。これを特殊な薬品や魔法加工を用いて、鉄などの金属と融合しようというのが僕の考えなんだ。つまり、バイオニクス的技術を錬金術などのような魔導技術的アプローチによって工学的結果へと繋いでいきたいんだ」
「一言で言うと?」
「え? あ、えーっと············色んな技術を使って全く新しいタイプの武器や道具を作りたい」
「おお、理解したぞ」
フルトの考えはこうだ。
誰でも扱えて、手軽に持ち運び出来る強力な武器があれば、兵士達が少数でも多くのモンスター討伐をこなせてモンスターによる被害を減らせるんじゃないかと。
人間がその知恵と勇気によってモンスターと戦い、勝ってきた歴史があるとは言え、モンスターの力は強大。それこそ、ワイバーンみたいな怪物相手ではまともに戦える者すら少ない。
そもそも人間とモンスターでは大きな力の差がある。
中級以上になれば、基本的にモンスターは一般人を遥かに上回る力を持っている。
ましてや、上級モンスターになれば兵士などが束になってかからないと勝ち目は無い。
「けど、もしそんな強力なモンスター達の力を利用して強力な武器を持てたら? 軍全体の戦力を底上げ出来るんじゃないかと僕は考えた」
「そうだな」
ところが、これがなかなか難しいらしい。
モンスターの素材の大半は時間が経てば劣化してしまい、武器として保管するのが難しいのだ。
おまけに、素材と鉄などを融合させるには高い技術と高度な設備。さらには稀少な材料を惜しみ無く使用する必要があるため、金がかかる。
故に、予算が下りず、フルトの理論は机上の空論で終わってしまったそうだ。
「それに、僕の所属していた研究チームの主任はノビリティ主義でね。良家でも何でもない平民出の僕の理論は聴くに値しないと言われたよ」
「それはツイてなかったな」
「僕なんかマシさ。ルッカは言うまでもなく亜人ってだけでもっと露骨に差別されていた。元々気弱な性格だったのが、さらに自信を失くしちゃったみたいだ」
「つくづくアホな話だな。俺もお前らの話を半分も理解出来てねえから人の事言えんが、少なくとも出身や種族で全否定したりはしてない」
それにしても、よくもまあこんな有望株をホイホイ手放すよな。
フランといい、ナズといい、ターナといい、俺が出会った解雇者達はみんな超優秀な能力を持った奴らだ。しかも性格だってまともだ。
そこへ来ると、つくづく俺だけはクビにされても納得出来てしまうのが悲しい。
「まあ、ともかく。フルトの理論を実行に移すためにはターナの協力が必要不可欠な訳だな」
「そうなってしまうね······。それに、彼女だけじゃない。このリストにある素材を集めるには上級モンスターを何体も倒さなくちゃいけないし。君やフラン君でないと無理だろう」
「その辺は心配するな。もし本当に強力な武器が作れるようになれば、それだけ俺らの仕事の効率も上がるし、ターナやお前だって戦力として頼もしくなるはずさ」
この組織の力を底上げすれば、それだけ討伐が楽になる。
「ただ、このリストにある素材をいっぺんに集めるのは無理だ。依頼などをこなしつつ、少しずつ溜めていくぞ」
「ああ。よろしく頼むよ」
こればかりは一朝一夕にこなせるものじゃない。日を重ねて少しずつ進めていくしかないだろう。
フルトと別れ、俺は今の話をターナにすべく彼女の部屋を訪ねた。
──コンコンコン──
「ターナ、俺だ。トレイルだ。今いいか?」
『どうぞだよー』
──ガチャ──
「よ、お邪魔するぜ」
ちょうど二人用だった部屋。今はターナとナズの二人の共同部屋だ。
外から入る白い光を受けて並ぶベッド二つ。もはやほとんどくっついている。
「へー。お前らが住むようになってから初めて入ったけど、良いじゃんか」
「えへへ、そうずら?」
まあ、思ったより散らかってるのは意外だったが。床には本やらノートやら、薬草やそれを入れるカゴがごっちゃりと乱雑に置かれている。
「もしかして、ナズのか?」
「んだ。ナズさ、熱中して忘れっぽいだよ」
「はは、それは意外だな」
案外片付けられない系の美少女だったか。
「ん? お、これは······」
──カチャ──
「ターナちゃん、フランさんからおやつ貰った、よ?」
「よ、ナズ。お邪魔してるぞ」
部屋に戻ってきたナズ。手にはキャンディやクッキーがたくさん入ったバスケット。
それを持ったまま固まるナズ。
その視線が俺の手元に刺さってる。
「あ、あの、その手にあるのは······」
「ん? ああ、これ何なのか気になって──」
俺がさっき何気なく拾った物。なんか鮮やかなピンク色が目立ったので拾ってみたのだ。手触りの柔らかい布だ。
ピンク色の布がハラリとほどけて、可愛らしいパンティの形になる。
「ト、ト、トレイルさん······」
「あー······すまん。ピンク色の下着って流行りなのか?」
「~~!!」
顔を真っ赤にしたナズが涙目になってズンズンと近寄ってきて、下着をひったくり、そのまま布団を被ってしまった。
「知らないっ、知らないっ! トレイルさんの変態! スケベ!!」
「いや~、わざとじゃないんだ。わざとじゃ。な? ナズ」
「知らない! フランさんに言いつけます!」
「わ、悪かったって、な、ナズ?」
ナズが許してくれるまで、しばらく謝り続けた。
お疲れ様です。次話に続きます。




