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 西門から町の外へ出る。街道を真っ直ぐに進めばやがては海へ行ける道だ。まあ、歩けば一ヶ月以上はかかるが。


「店長、どこに行くずら?」

「南西の森へ行こうと思ってな。時間があるようなら、そのまま西の平原も行ってみようかと思ってる」

「平原へ?」


 首を傾げるターナ。


「たしか、店長はそこでワイバーンを倒しただわな」

「そうだ。今度ルッカにも現場を見て貰うか。モンスターの生態の専門家だし、なんでワイバーンがこんな所まで来たのか分かるかもな」

「え、えっと。期待に応えられるか分からないけど、頑張りますっ······」

「ま、今日は他にやる事があるからそっちに集中しよう」


 俺らの本日の目的。それは新しいフィールドの発見だ。


 これまで使っていた森は、薬草の穴場ポイントをモンスターに荒らされてしまった。しばらくは使えそうにない。

 そこで、他にもそういった場所が無いか探す事にしたのだ。


 闇雲に探す予定だったのだが、ルッカはモンスターの生態系に詳しい。彼女なら、自生している植物や地形などの周囲環境から生息モンスターを推測して割り出す事が出来るかもしれないという。


 ルッカいわく。モンスターの生態系が分かればその逆もしかりとの事。そこにどう言った植物や動物が存在するかも予測がつくのだそうだ。


 例えば。肉食動物が居る場所なら当然、その補食対象の草食動物が居る。草食動物が居るなら補食対象の植物が生えている。そして、その植物の生育条件から土壌の環境が、そこから生態系全体が──


 とまあ、俺に理解出来たのは半分くらいだが、とにかく、『一つの生物から、周りの生物などを紐解いていく』という事らしい。すなわち、パズルのように一つ当てはまればそこからどんどんピースが繋がっていき、最後は生態系という一枚の図になるのだと。


「店長ー、オラ楽しみだよ。新しい収入源でじゃんじゃん稼いで、みんなに沢山ごちそうするずら」

「おう、頼もしいな。お前は貴重な戦闘員でもある。背中は任せるぞ」

「んだ!」

「ルッカはサポートに集中してくれ。お前の魔法ならそつなくオールマイティに対処出来るだろうからな」

「が、頑張ります!」


 もう一人同行するメンバーは迷ったが、フランには拠点を守って欲しかったので、稼ぎたいと意気込んでたターナを連れてく事にした。


 メインアタッカーの前衛二人と、サポート一人。悪くない編成だ。



「楽しみずら~。これから行く所にはどんなモンスターが居るかやー? 見た事ないレアモンスターが出てこねえかなー」

「モンスターの種類は気候環境に大きな差が無ければ似たような分布になる事が多いよ。特に、ゴブリンとかスライム、サイス・マンティスは極寒地帯や砂漠地帯じゃなければ何処にでも居るし」

「へえー、そうずらー。ルッカさんはケンキュー者って言ってただな?」

「うん。軍属だけどね。でも、実地調査員として研究してたよ」

「凄いずらー。あ、でもオラは軍属の時は解体作業してたし、オラ達は案外繋がりがあったのかもしんねえだよ」

「うん。そうだね」


 和やかに笑みを交わす二人。

 雰囲気も悪くないし、三人チームなんて初めてだな。ちょっと新鮮な気分だ。



 しばらく、街道をのんびりと歩いた。

 普通の旅人や商人などはモンスターの襲撃などを警戒して、あまり呑気にはなれないかもしれないが、こっちは逆にモンスターを狩る側だ。むしろ、ターナに至っては何時でも戦う気まんまんだ。


 やがて、目的の森が見えてきたので、沿って歩く。


「店長、店長。オラには夢があるずら」

「なんだ、藪から棒に」

「オラ、うんとお金貯めて、家族が楽に暮らせるようになったら、店長みたいに自分の店持ちたいずら」

「それは良い夢だな。何の店だ?」

「それは考え中ずら。でも、食いもんに関係あるのがいいだわな。食堂なんかいいだ。鉱山で働くドワーフの皆は腹空かせてるで」


 そう語るターナの顔はとてもイキイキしていた。

 その横顔をルッカが羨ましそうに見ていた。


「ターナちゃんは偉いね。ちゃんと夢があって。私なんか、目の前の事をどうにかするので精一杯で······」


 と、肩を落とすルッカ。


「私も家族を楽にしてあげたい······」

「······そう言えば、ルッカはどうするんだ? 金が貯まったら故郷に帰るのか?」


 改めて尋ねてみると、少し考える素振りをしてから頷いた。


「一応、そのつもり。と言うより、今はとにかく失った財産分のお金をなんとか貯めて、それを持って一旦家に帰るのが目標、かな」

「そうか」


 しばらくは俺の所に居てくれるようだが、いずれはどうなるか分からんな。


「あ、でも。も、もしトレイル君が良ければ──」

「! ルッカ!」

「え?」


 ──ヒュッ──


 ルッカを抱きよせ、風を切って飛んできた矢を叩き落とす。


 ──カランッ──


「えっ、えっ? や、矢?!」

「ターナ、構えろ!」

「わ、分かったずら!」


 ルッカを背に隠し、ターナへの指示を出したと同時に、すぐ横の茂みがガサガサと揺れて小さな影が複数飛び出した。


『ギャギギッ』

『ギギイッ』

『ギッギッ』


 現れたのはゴブリン。手に木製の棍棒や槍を持って、こちらに襲いかかってくる。


「はっ!」


 戦闘の二体の首筋を正確に斬る。動脈を切断されたゴブリンらはピューっと血を噴き出しながら倒れた。


『ギィーッ』

「たあー!」


 ──ドゴオッ──


 横から飛びかかってきたゴブリンは、ターナのフルスイングハンマーによって、体をくの字に曲げながら吹っ飛んでいった。


『ギャイッ』

「ウインドカッター!」


 後方のルッカからの援護魔法が入り、弓を構えていたゴブリンが風の刃に切り刻まれて倒れる。


『ギャギギッ』

『ギイッ』


「は!」

「おりゃ~!」


 さらに向かってくるゴブリンを俺が斬る。ターナのハンマーが砕く。


『ギギャアッ』


 10体以上撃破した辺りで、生き残った僅かなゴブリン達は武器を捨てて森の中へと逃げていった。


「······ふう」


 どうやら完全に逃げたらしい。辺りからは気配が消えている。


 突然のゴブリンの奇襲に、ルッカは少し青ざめていた。


お疲れ様です。次話に続きます。

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