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「店長、朝ずら。起きとき」

「ふわ~あ~······」


 朝。今日のモーニングコールはターナだ。

 日替わりで美少女コールとか寿命が伸びてしょうがないぜ。


 よし、今日はさらにデラックスな目覚めにしよう。


「さ、ターナ。朝一の膝枕を頼む」

「ええっ?! そ、そんな大胆な事するだかや?!」

「ここでは常識だぞ。フランもナズもみんなそうやってる」

「し、知らなかったずら。でも、オラみてえな田舎もんの膝で良いだかや?」

「良いとかじゃない。最高すぎて生きる活力が湧く。寿命が伸びる」

「わ、分かったずら。じゃあ、ちょっと失礼して······」


 ベッドに腰掛けて膝をポンポンと叩くターナ。

 ナズのスラリとしたガラスのような足ともまた違い、むっちりとしたパン生地のような質感が朝日の中で輝いている。


「店長、用意出来たずら」

「うむ。ご苦労。では早速──」


 ──バターンッ──


「朝っぱらから何やらしとんじゃーっ!!」


 ──ドゴォッ──


「ぐっふぉうっ?!」


 勢い良く開けはなれたドアから、怒りの形相と怒声を飛び込ませてきたフランの放った杖スローにより、俺は激痛モーニングの目覚めを受けた。






 いや~。今日も平和な一日の始まりだ。


「トレイルさん、大丈夫ですか? おでこに大きなコブありますが······」

「ナズ、痛くて死にそうだ。膝枕してくれれば治る。膝を頼む」

「へ? ふぇえ?」

「ナズちゃんが困ってんでしょーが!!」


 ──スコンッ──


「いってええ!!」


 フランにオタマでぶっ叩かれた。


「いってえな! 何しやがるフラン! 店長に向かって態度がなってないぞっ」

「セクハラは女の敵! 容赦しないもんっ!」

「くっ、なら代わりにお前のその大きな二つの枕で寝させてもら──いでででででっ!?」

「こんの~っ!」

「ギブっ! ギブっ! 折れる折れる!」



 朝飯前から満身創痍にされる俺。




「ふ~。食った食った。ごちそうさん」

「トレイル、食べてすぐ寝るのは良くないよ」

「ほら、俺もうボロボロだからよ。朝から女トロールにボコボコにされたからさ」

「もっと骨軋ませる?」

「すみませんでした」

「あっははは、店長とフランさんはホント仲良いずらね~」


 四人でその場にくつろいで食休みする。


 今日は仕事には出ずにゆっくりする事にした。昨日の疲れがまだ残っている。



「うーん」

「どうしたのトレイル。難しい顔して」

「いやさ。モンスタースレイヤー屋って名前なんだけどよ。ちょっと長いって言うか、いまいちカッコ良くねえなと思ってよ」

「前にも言ってたね」

「ここらで改めて良い名前を考えてえな」


 もっとこう、いいもんは無いか。スレイヤーはカッコいいが少し物騒なとこあるし、俺らはモンスター討伐だけじゃなくて薬草とかのアイテム集めたりポーションを売ったりもするから、もっと総合的に言い表した呼び名が欲しい。



 ここは新人二人にも意見を聞くか。


「ナズ、何か良い案は無いか?」

「え? 私ですか?」

「おう。こう、俺らを一言で表すような、それでいて今まで聞いた事ない斬新で新鮮な響きで、なおかつクールで陽気でワクワクするような、そんな名前だ」

「む、難しすぎませんか?!」


 あたあたと悩みだすナズ。その横のターナにも聞いてみる。


「ターナ、お前は?」

「オラは良いの思いついただ!」

「ほうっ! 自信ありか。言ってみな」


 ターナは自信まんまんに答えた。


「ずばり、“トレイルと愉快な仲間達の何でもスレイヤー屋”ずらっ!」

「おおーっ!」


 俺の第一候補に近い名前じゃねえか。これで良いんじゃねえか?


「それ良いな。略して“愉快屋”でいくか」

「やだーっ、もっと可愛いのがいいー」

「え?! 可愛くないだかや?」

「あ、違うのっ! ターナちゃんのセンスは良いんだけど、もうちょっとお洒落な感じが良いかなって」

「お、オラはやっぱお洒落じゃないんずら······」

「ご、ごめん、ターナちゃ~ん、そうじゃなくて~」




 結局。この日はこんな感じで夜までゆっくりと過ごして、穏やかに一日を終えた。






 ──翌日──



「ん? 一緒に行きたい?」

「んだ」


 この日の朝。


 朝食が終わった後。ターナが俺の仕事の手伝いがしたいと言い出した。

 今日はナズのポーションを売りに行き、その帰りに森へ薬草を取りに行く予定なのだが、それに同行したいそうだ。


「オラも店長の仕事手伝って少しでも稼ぎたいだ。故郷に仕送りしなきゃなんねえで」


 少しでも稼ぐため、原料の薬草採取の取り分と、それを使ってポーションを作る作業の手伝いの報酬の二つが欲しいそうだ。今現在、ターナの取り分は最も低いから仕事の数でどうにかするしかない。


「分かった。そういう事ならついてこい。お前、戦闘経験はあるか?」

「人とは戦った事ねえけども、モンスターとならちっとは。ドワーフは力だけはあるで」

「そうか。森に入るならモンスターとの戦闘になる可能性が高い。基本的には俺が守ってやるが、一応自分で自衛はしてくれ。武器は何を持ってる?」

「これだよ」


 そう言って古びたトンカチを見せた。


「それは?」

「納屋を掃除してる時に見つけただよ。オラ、本当はでっかい金槌で戦うんだけどとりあえず今はこれずら。あ、店長、これ使わしてもらっても良いずら?」

「構わないが······」


 しかし、いくら何でもこんな物じゃ護身用にすらならない。


 ここは早速、共益費の出番だな。


「······よし。ともかく出発するか」

「んだ」

「お前は水や食料の用意をしといてくれ。軽くでいい」

「分かっただよ」



 ターナに準備をしててもらい、フランの元へ行って事情を話す。


「てな訳で、ターナの取り分を増やすために今日は二人だけで採取してこようと思うから、フランはナズと留守番頼む」

「うんっ、そういう事なら私は大人しく待ってるよ。それと、はい」


 フランが共益費の入った箱から金貨を何枚か出して差し出す。


「良いの買ってあげてね」

「本格的なのは無理だな。とりあえず鍛冶屋で交渉してみる」

「ギャンブルにつぎ込まないでよー?」

「そうか、その手があったな。これを元手に二倍にすりゃあ良い物が······嘘だ嘘。そんな睨むなよ」



 懐疑的な視線を浴びながら、その場を後にしてターナの元へと戻る。既に準備を終えて待っていた。


「うし。行くか」

「んだ。店長、よろしくお願いするずら」

「ああ、よろしくな」



 こうして今日はターナとのタッグで出掛けた。


お疲れ様です。次話に続きます。

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