表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/178

16

 

 薬草回収の後、森から出て依頼人の待つ薬屋に戻った。



「これが収穫だ。確認してくれ」

「おおっ! これはっ」


 オヤジが歓喜に声を上げる。


「こんな多くの天然物のルファ草が手に入るとは! しかもベタ花とマガン草も! 貴重なメルガ花も!」

「どうだ? 買い取って貰えるか?」

「もちろんだとも! 量の計算をするから少し待っててくれ」


 オヤジが量りを使ってペンを走らせていく。


「うん。こんな所だな。一般レートの値段に、少しだけ上乗せしておいた。全部で440ゴールドだ」

「そんなにか? 薬草だけで?」

「天然物だからな。しかも、鮮度も良い」

「そうか。あ、そうだった。こいつも頼む」


 ──ゴト──


「これは······シャルーグの肝か?」

「ああ。毒腺は無理だったが、こっちは何とか採れたんでな」

「おお、これもかなりの一品だ。量らせてくれ。うむ。こっちは80ゴールドだろう。だから全部で520ゴールドだ」

「マジかよ」


 想像以上の儲けだ。520ゴールドとなれば、そこそこ良い宿で三食付きでも三、四泊出来る。一人分の食費だけで計算すれば一ヶ月以上まかなえる。たった数時間の仕事でこの稼ぎは大きい。


 俺が内心ホクホクしていると、オヤジが申し訳なさそうな顔を浮かべた。


「でも、本当に原材料価格だけで依頼料払わなくていいのか? 見たところ、あんたも命懸けだったみたいだが······」


 オヤジは俺の肩に染みた血を指指して言った。


「その傷平気なのか?」

「ん? ああ、これは傷じゃなくて返り血だ。ちょいとゴタゴタがあったんでな」

「そ、そうか。流石と言うか。モンスタープレイヤーだっけ?」

「スレイヤーな。モンスタースレイヤー。そうそう、その事なんだが一つ頼みがある」

「ん? 頼み?」

「依頼料タダの代わりと言っちゃなんだが、俺の事を知り合いとかに話といて欲しい」


 薬屋なら、取引先の商人とか医者とかお得意先があるはずだ。


「俺は今日から開業した者でな。近い内に正式に事務所でも構えるから、宣伝しといてくれ」

「そうだったのか。もちろん、任せてくれ。こんなに良い質の薬草が手に入ったんだ。それくらいお安い御用さ」

「おう、頼む。お、そうだ。一つ聞きたい事があるんだが──」



 それなりの現金を手に入れ、宣伝の協力も得られた。初陣にしては大戦果だろう。


 それに。もう一つ良い情報も入ったし。


「······採って来ておいて良かったな」


 ポーチには数種類の薬草が残っている。いづれも回復ポーション等の材料になる。







 家に戻ってみると、ドアが開いており布団やらカーペットやらが外の低木などに干されていた。


「お?」


「ナズちゃーん、そろそろお昼にしよっかー」

「はーい」


 家の中からフランとナズの明るい声が聞こえる。


 俺が開け放たれたドアから中に入ると、二人が二階へ続く階段から降りてくるところであった。


「あ、トレイルっ。お帰りー」

「おう、ただいま。二人ともまた掃除しててくれたのか」

「はい、今日は二階の部屋をいくつか」

「トレイルはお昼もう食べた、って······!? ト、トレイル! その血は?!」


 フランが顔を青くして駆け寄ってくる。


「け、怪我したの?!」

「ん? ああ、これは返り血だ。モンスターのな」

「び、びっくりした~。もう、驚かさないでよ~」

「トレイルさん、モンスターと戦って来たんですか?」

「ああ、初仕事でな。上手くいったぞ」


 ポケットから金貨を数枚出して見せると、二人とも目を丸くした。


「うそっ!? こんなに?」

「これ、一日で稼いだんですか?」

「正確には半日満たないくらいだ。しかも、サービスしたから少なくなったくらいだ」

「はえ~。すごいね。まさかそんなに上手くいくなんて」

「すごいですっ、トレイルさん!」

「いや~、それ程でも。あるがな」

「もう、すーぐ調子に乗るんだから」


 コツっとこづいてくるフランも嬉しそうだった。


「やったじゃんトレイル。おめでとう」

「おう。でも、本当の仕事はこれからだ。役場に申請なしで本格的に商売するとマズイからな。明日辺りにさっそく行くわ」

「おおー、本格的っ」

「トレイルさん、頑張って」

「おうよ。あ、そうそう、ナズ。お前に少し相談したい事あるんだが」

「私に?」


 キョトンと首を傾げるナズに、俺はポーチから薬草を取り出して見せた。


「これ、森の奥で見つけたんだ。回復ポーションの材料とかだろ? お前は薬関係のスキルで作れるって聞いてたからさ。これで調合出来るか?」


 そう訊ねてみると、ナズは少し躊躇うような仕草をした。


「出来る、とは思います。でも、道具とかも今は無いので在り合わせの物での製薬になるから質の方は······」

「でも、やれそう。だな?」


 コクっと小さい肯定が返ってきたので、そのまま薬草を渡した。


 ナズはおずおずと言った体で受け取ると、少し緊張気味に部屋の中を見回した。


「で、では······このお家にある食器類を使ってもよろしいでしょうか?」

「ああ、好きに使ってくれ」



 そして、底の深い皿やすりこぎ等の道具を集めてからナズの調合が始まった。



お疲れ様です。次話に続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ