第十六話 ななちゃん、お願いの七夕さんの巻
ななちゃんのお誕生日(7月15日)記念の作品
今日は七夕です──
ろく、なな、はちのお部屋の前には、笹の葉がたくさんついた竹の木が植えられました。
「よしっと。これで準備は整ったわね」
外の騒がしさに顔を出したのはななちゃんでした。
「あっ! かなしゃん。おはよでちゅ。なにちてるでちゅか?」
「おはよ。ろくちゃんと、はちちゃんも起きてる?」
「おはぉぅ。はちおきまちた」
眠い目を擦りながら現れたはちちゃん。
「かなしゃんしぇんしぇい。おはよごじゃましゅ。ろくは、おかおさん、あらったでしゅ」
三人が揃ったので、これから何をするか説明を始めるかなちゃん。
「今日は七夕だから、この短冊にお願い事を書いて、竹の木に飾ると、何と何と、そのお願い事が叶っちゃうとか、叶わないとか」
お願い事を書く──
好奇心旺盛な三人が、食いつかないはずもなく……。
「なな、かきかきしゅるでちゅ!」
しかし、ここで問題がひとつ。
「そういえば、三人とも字が書けないんだっけ」
「かけまちゅよ!」
文字の読み書きに関しては、せいぜい自分の名前が読める程度。
書く方は、字と呼ぶには発展途上といったところでありました。
そんな三人が書くお願い事に興味を持ったかなちゃんは、短冊を手渡すと、書けたらここに掛けるんだよと言って、出来上がりを待つことにしました。
お部屋の中、筆を持ちながら、各々が短冊にしたためたお願い事。
重なった丸や、短冊からはみ出た線など、第三者が解読することは不可能とも思われた。
「やっぱりまだ早かったかな?」
そこへ偶然外を通りかかった食堂のおばさんが一言。
「あらぁ。皆お願い事は一緒みたいね。元気に仲良く遊びたいですって書いたのね」
「おばしゃん、ななのかきかき、よめるでちゅか?」
「えぇ。もちろん」
「えぇぇ! 何でですか? 何でわかるんですか!」
一番驚いたのは、かなちゃん先生でした。
「だって、丸はみっつ。これはろくちゃん、ななちゃん、はちちゃんだろうし、短冊からはみ出ちゃうってことは、それだけ元気な証拠じゃない。三人ともよく書けてるよ。後でお団子さん作ってあげるから食べにおいで。じゃあね」
食堂のおばさんのお団子は、三人の大好物なのですが、それ以上に、お願い事を“読んで”もらえたことが嬉しい三人。
その様子を見ていたかなちゃん先生は……。
「やっぱり食堂のおばさんは凄いわ。くのいちの腕は評価を受けた私も、まだまだってことね」
履いてるわらじは左右逆の三人ですが、きっとこのお願い事は叶うだろうと思うかなちゃん先生でした──




