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第十三話 ななちゃん、夜を走るの巻【後編】

 怖がりろくちゃんを一人お部屋に残し、かなちゃんを呼びに行く為、お外へ出たななちゃん、はちちゃん──



「わぁ! まっくらでしゅ!」


「はちしゃん。よるのことだから、しぃぃでちゅよ」



 風が揺らす木の枝や擦れる葉音に、三歳児が恐怖を抱くのは自然なことだと思いますが、はちちゃんに限っては、好奇心が勝ってしまうようです。



「おかじぇ、ちゅよいでしゅねぇ。はち、とんじゃうかもしれないでしゅ」


「あぶないから、おてて、ちゅないでいくでちゅよ」



◇◆◇◆◇



 刻を同じくして、その頃かなちゃんは──



「風強いなぁ。あの子達大丈夫かな? 特にろくちゃんは怖がり屋さんだから、泣いてるかも知れないなぁ。よしっ! 様子見に行こう」



 さすがかなちゃん先生です。三人のことは手に取るように分かっています。


 ですが、まさかななちゃん、はちちゃんが、自分の元へ向かっているとは思いもしていません。



「今日はあの子達と一緒に寝よう」



 部屋を出たかなちゃんは、三人のお部屋へと向かうことにしました。



◇◆◇◆◇



 翠先生の授業で教わった忍者走りをする、ななちゃん、はちちゃんでしたが……。



「ななちゃんみてみてぇ!」



 足は動いているのに、向かい風のせいで全く前に進まないことを楽しんでいるはちちゃん。



「はちしゃん、しゅごいでちゅ! しょれ、なんの“じゅちゅ”でちゅか?」



“無論、忍術ではない──”



 その時でした──


 これまでで一番強い風が吹き、葉っぱや砂などを巻き込みながら、二人の元へとやって来たのです。



「ちゅよいでちゅ!」


「しゅごいでしゅ! ななちゃん、みてみてぇ!」



 思い付いたら、やらずにはいられないのがはちちゃん。


 ぽんっと地面を蹴ると、小さな体は風に乗り飛んでいってしまいました。



「はちしゃん! どちてしょんなこと、ちたでちゅかぁぁ!」



 ななちゃんも地面を蹴ると、はちちゃん同様、宙を舞います。



「めがまわるでちゅうぅぅ!」


「おそらがしたにあるでしゅ!」



 二人はつむじ風に飲み込まれ、くるくるくるくると回転しています。



「ん? ななっ! はちちゃん! 何があったらそうなるの! 待ってて、今助けるから!」



 かなちゃんは手を合わせると、複雑な印を結び、目の前の風を相殺する術を繰り出しました。



「絶ち風の術っ!」



 かなちゃんの声と共に、つむじ風は威力を弱め、浮いていたななちゃん、はちちゃんは、ゆっくりと地面に足を着きました。



「かなしゃん、こわかったでちゅ!」


「かなしゃんしぇんしぇい、しゅごいでしゅ!」



 抱きついてきた二人に、何故こんな時間に外にいたのか尋ねたかなちゃんは、その理由の優しさから、怒ることはしませんでした。


 そして──



「どちて、だれもいないでしゅかぁぁ! ろく、こわぁいでしゅうぅぅ!」



 勢いよく部屋の戸が開き、中から大泣きのろくちゃんが歩いて出てきました。


 三人は駆け寄ると、ろくちゃんを抱きしめ……。



「ろくしゃん、ごめんくだちゃい」



 ななちゃんは謝るとき、ごめんくだちゃいと言います。



「ろくしゃん。はち、おしょらとんだでしゅ!」



 最早、外出の目的を忘れ、今一番興奮していることを報告するはちちゃん。



「風強くて怖かったね。ろくちゃん、よく頑張ったね。今日は私と一緒におねんねしようね」


「……ろく、かなしゃんしぇんしぇいと、おねんねしましゅ」



 かなちゃんのその言葉に安心したようで、ろくちゃんは目を閉じると、そのまま眠ってしまいました。



「二人もおいでぇ。一緒におねんねするよぉ」



 とても怖かったけど、かなちゃんと一緒に眠れるなら、お風もそんなに悪くないと思った、ななちゃん、はちちゃんでした──



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