第十一話 ななちゃん、初めての任務の巻【後編】
教室に迷い込んだ一匹の子猫。
ろく、なな、はちの三人は、かなちゃん先生に、子猫のお母さんを捜す“特別任務”を言い渡されました。
校内から出てはならないというお約束をして、初めての任務が始まります。
「ねこしゃんの、おかぁしゃん! どこいるでちゅかぁ?」
ななちゃんの呼び掛けに、反応する声はありません。
「はちしゃん。おてて、はなしゃないでね?」
怖がりろくちゃんのお願いに、はちちゃんは、握っていた手にぎゅっと力を入れました。
「ねこしゃんのおかぁしゃん。かくれんぼのじゅちゅ、じょうじゅでちゅねぇ」
“かくれんぼの術とは、つい先程、かなちゃん先生の授業で教わった、隠れ身の術のことである──”
「あっ! もちかちたら……」
はちちゃんが何やら閃いたようです。
「えっ! なんでちゅか? ちょっと、ななに、おちえてくだちゃい」
ななちゃんや、はちちゃんの、“あっ!”や“えっ!”の声に、いちいちびくっとしてしまうろくちゃん。
「あのね? かくれんぼのとき、もぉいぃでしゅかぁい? っていうでしゅ」
「しょうでちたっ! もぉいぃでちゅよぉ! って、おへんじ、ちてくれるかもちれないでちゅ」
“もういいかぁい?──”
“もういいよぉ!──”
確かに言いますが、相手は猫さんで、言葉を話せないということを、三人は忘れているようです。
「しゃんにんで、もぉいぃでちゅかぁい? いうでちゅ」
ななちゃんが“せぇのっ”と言うと、ろく、なな、はちの三人は口を揃えて言いました。
すると──
「にゃあぁぁん!」
何とお返事があったのです。
その声を聞いた子猫が、ななちゃんの腕をすり抜けると、お返事の声の方へと走り出しました。
「まってくだちゃい! はちしゃん、ろくしゃん、はしるでちゅ!」
「ねこぉぉ! はしったら、めっでしゅ!」
「あぁぁ! きゅうに、はしったら、こわぁいでしゅ!」
次第に近づくお母さん猫の声。
「あっ! おしょとでちゃうでちゅ!」
かなちゃん先生としたお約束が頭をよぎり、ななちゃんは子猫が出ていってしまう前に、どうしても捕まえたかったのでしょう。
まるで雷の如き速さで駆け抜けると、子猫と出入り口の間に立ち塞がりました。
「ななちゃん、はやぁい!」
「ごろごろしゃんみたいの、こわいでしゅぅぅ!」
子猫も驚いたのか、一瞬体勢を崩しましたが、すぐさま元に戻り、何とななちゃんの股の間を突っ切って行ったのです。
「あれぇ! ねこしゃぁぁん!」
股下から覗き込むななちゃんの景色は、逆さまに映り……。
「おしょらが、したにありまちゅ」
見たことない景色に、子猫のことを忘れしまったようです。
「ん? なな、何してるの?」
そこに通り掛かったのは、お母さん猫と子猫を抱いたかなちゃん先生でした。
「あっ! かなしゃん。おしょら、したにありまちゅ」
「まっすぐ立ってごらん?」
「……もどったでちゅ。あれぇ? ねこしゃん、ちゅかまえたでちゅか?」
「うん。お母さん猫が、ありがとうって言ってるよ」
かなちゃん先生が親子猫を下ろすと、ろく、なな、はちの方へと歩み寄り、三人の周りをくるくるを回り始めました。
「よかたでちゅねぇ。ねこしゃん」
「ろくしゃん……くるちいでしゅ」
「ろく、ねこしゃん、こわぁい」
自分の周りをくるくるとされて、怖かったろくちゃんは、思わずはちちゃんを、凄い力でぎゅうっと締め付けていたのです。
「猫さんも無事、再会出来たところで、今回の特別任務は、これにておしまい。三人共よく頑張ったわね。さぁ、食堂でご飯ににしましょう」
こうして初めての任務は終わり、ろく、なな、はちの三人は、少しだけ成長したのでした。
「それにしても、さっきのななの速さ……」
「かなしゃん。はやく、ごはんいくでちゅよぉぉ!」
「あっ、はぁい!」
先を行くななちゃんに呼ばれ、走り出すかなちゃんでした──




