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涙の帝国Ⅰ 〜入社試験〜  作者: 下松 紅子
終章
13/14

神々

コツコツと薄暗い廃墟に靴音が響く。

辺りには誰も人は居なく、寧ろ誰も通りはしないだろう。

そんな廃墟の一室のソファに少年が寝そべっていた。

本を開けたまま顔に乗せ、寝ている。

少年は何かに気づいたのか、本をどけて起き上がる。

すると錆び付いたドアノブが動き、ドアが開く。


「やあ、待っていたヨ」


やはり少年の片言口調はなおらない。

少年が持っている本をチラリと見るなり、男は静かに壁にもたれる。

夜の暗さの所為か男の顔は見えない。


「僕の言いたいこと分かるヨネ?」


男は顔をしかめた。

少年にはニコニコ笑っているが、内心は怒りを抑えていた。

『実の双子の弟』が仕出かしたことに。


「涙、のことか」

「そう。なんでいつも邪魔するのサ」

「あんたの思惑(おもわく)を潰すためだからだ。ルークス」

「へえ、双子の弟であり同じ『神』であるキミがボクに刃向かうノ?」

「刃向かったらどうなる?」

「ボクの片翼(かたよく)でもあるキミを潰すヨ?」


男の背筋に悪寒が走る。

少年は永遠にニコニコと笑っているがとんでもない殺気を(まと)わせていた。


「これは最後の忠告だよ。ボクの邪魔はしたら……殺すカラね、『ヴァトラー』」


そう言うと少年はトン、と足を鳴らし消えた。

そして男は苦虫を潰した顔で部屋を出るなり、何を覆い隠したように巻かれた包帯を強く結びなおした。



「ルークス……やっぱり君の好きな通りにはさせないよ」



ただ、そう呟いた。




。。。




「うわ、ありえん。か弱い女子にこの資料を完成させろってか!?」

「当たり前だ」


いつもの紫とのやり取り。

これは一日一回はしている。


「ホントにそれで異世界の天下を取るの?」

「ん? あぁ? 成り行きだよ、時間が何とかするって」

「これはダメダメ女王だね」

「うっさいな、あのな言っておくけど私はこれでも負けたことがないんだからな」

「知ってるよ。その絶対的自信があるから女王になったんでしょ?」


そう。

私は女王だ。チェスにおいてもだが女王は強い。あのキングよりもだ。

だったら、私だって強い。当たり前だ。


それでは、物語を語るとしよう。




『新たな女王のーーー(るい)の帝国の物語を』




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