「四の国」
城の広間。
きらりの前には、また一通の書状が置かれている。
「虎次郎」
「はい、姫様」
「また来たぞ」
「四の国からでございますか?」
「うむ」
「何と?」
「早く来い、と」
「……またでございますか」
「ずいぶん偉そうじゃな」
「いつものことでございます」
「お願いではないのか?」
「お願いではございません」
「命令?」
「そう受け取ってよろしいかと」
「同盟国なのに?」
「同盟国だから、ではないでしょうか」
「変じゃな」
「四の国は、以前からそういうところがございます」
「昔から?」
「姫様が当主になられてからずっとです」
「私が当主になる前も?」
「その頃からでございます」
「では、父上にも?」
「はい」
「父上は何と?」
「毎回、返事をされておりました」
「何と?」
「承知した、と」
「素直じゃな」
「……そうでなければ、面倒になりますので」
「なるほど」
「四の国は、断ると何かと理由をつけてまいります」
「理由?」
「援軍が少ない。返事が遅い。協力する気がない。昔からの約束を忘れたのか、と」
「ずいぶん色々言うのう」
「はい」
「では、そろそろ断ってみるか」
「……よろしいので?」
「うむ」
「本当に?」
「うむ」
「四の国に?」
「うむ」
「断ると?」
「怒るか?」
「おそらく」
「困るのう」
「では、どうなさいますか?」
「……やめておこう」
「賢明でございます」
「虎次郎」
「はい」
「いつか、思い切り断ってみたいのう」
「その日が来ることを願っております」
「そのときは一緒に言おう」
「何とでございますか?」
「嫌じゃ、と」
「……姫様」
「なんじゃ?」
「そのときは、私もお供いたします」
「頼もしいのう」
「ですが、今は返事を」
「何と書く?」
「いつものように、承知した、と」
「……やっぱり嫌じゃな」
「私もでございます」




