「最前線の陣」
「虎次郎」
「はい」
「前線の報告は?」
「九の国の精鋭部隊が、まだ支えております」
「そうか」
「ただ、先ほど四の国の陣が一つ落ちたそうです」
「またか」
「はい」
「東の国に?」
「はい」
「では、取り返したのか?」
「九の国の部隊が取り返しました」
「……」
「そのまま陣を取り戻したそうです」
「よかったではないか」
「はい」
「四の国の兵も一緒に戦ったのじゃろ?」
「それが……」
「何じゃ?」
「残っていた四の国の部隊は、ほとんど動かなかったようです」
「……」
「九の国の部隊だけで取り返した、と」
「そうか」
「はい」
「虎次郎」
「はい」
「四の国の兵は、何をしておったのじゃ?」
「陣の後ろにいたそうです」
「見ていた?」
「……おそらく」
「取り返すのを?」
「はい」
「九の国の兵が?」
「はい」
「自分たちの陣を?」
「はい」
「変じゃな」
「私もそう思います」
「自分の陣じゃろ?」
「はい」
「取られたら困るのでは?」
「困ると思います」
「なら、取り返せばよい」
「その通りでございます」
「でも、動かなかった」
「はい」
「……」
「姫様?」
「九の国の兵は、ちゃんと戦ってくれたのじゃな」
「はい」
「なら、まずは褒めてやらねばな」
「そうですね」
「それから」
「はい」
「四の国には聞きたいことがある」
「何を?」
「なぜ動かなかったのか」
「おそらく、何か理由があるのでしょう」
「そうじゃな」
「ただ」
「うむ」
「今回ばかりは、私も納得しにくいです」
「虎次郎でもか?」
「はい」
「なら、よほどじゃな」
「そうかもしれません」
「……」
「姫様?」
「九の国の兵を、あまり無茶させたくないのう」
「はい」
「人が増えたからといって、兵をどんどん出してよいわけではない」
「その通りです」
「一人一人、帰ってきてほしい」
「はい」
「なのに、他の国の兵が動かぬから、その分まで戦わねばならんのは困る」
「……はい」
「次に援軍を出す時は、よく考えよう」
「承知しました」
「九の国の兵は、強い」
「はい」
「でも」
「はい?」
「強いから何をさせてもよい、ということではないじゃろ」
「……おっしゃる通りでございます」
「何じゃ?」
「いえ」
「また感心しておるのか?」
「少々」
「では、褒めてもよいぞ」
「姫様」
「うむ」
「少しだけ、でございます」
「なぜじゃ?」
「すぐ調子に乗られますので」
「乗らん」
「今、乗っております」
「……そうか?」
「はい」
「では、少しだけ降りよう」
「お願いいたします」




