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リングの外では、まだ本当の自分になれていない。  作者: 黒黒の白描 / 黒ノ橙
第五章 霧が晴れた後も、歩みは止まらない
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第三十四話 劣跡女優と新人

『劣跡女優・清優マリハ役柄一覧』


「わあ! ひどい動画タイトル……なんと15万人も見てるの!」


『皆さん、こんにちは。私たちは異能崩壊観測所です。今回は最近話題になっている清優マリハ事件を整理します。先に結論を言うと、この人は同情を売りにしてのし上がった、無名の脇役にすぎません。ろくな役ももらえず、レスリングの話題に便乗して、自分の存在をアピールしているだけです。』


「内容はタイトルよりひどい!」


『第一部『嗤笑の夜』、見た目ばかり立派で、中身の伴わない作品で、極めてひどい宣伝のせいでこの作品を知る人は少ない。』


「これ、私がまだ学生の時に参加した作品だよ。このドラマ、私の名前も出てないのに、よく見つけられるね?」


『第10話冒頭のこの死体が清優マリハが演じたもので、演技はめちゃくちゃ。』


「どこがめちゃくちゃなの? このドラマ、最初から最後まで私は生きてないよ。全部で二シーン、冒頭は動きもしなかったし、次に出てきたのは写真だけだよ。」


 マリハはずっと動画にツッコミを入れていた。


「これは純粋に難癖をつけてるだけだよ。」泉も見ていられなくなった。


「後ろにももっとひどいのがあるよ……まだ見る?」」


 乃亜は動画を閉じようとしたが、マリハに止められた。


「どんな風に私のことを言ってるのか、見てみたい……」


『第五部『殺人者連鎖』、本作は推理文学大賞を受賞した小説の映画化作品。清優マリハが演じたのは物語最初の殺し屋・桐沢慶奈だが、小説のあの無口な成績優秀な生徒の感じをほとんど出せておらず、ただ狂人に演じてしまった……』


「おい!」マリハは動画を遮った。「これ、明らかに小説も最後まで読んでないし、映画も最後まで見てないでしょ。桐沢慶奈は狂気の殺し屋で、彼女の妹の桐沢慶子こそが平静な無口の成績優秀な生徒なんだよ。」


「正直、これ本当に印象に残ってる。原作では桐沢慶奈という名前は物語の終盤近くになって初めて出てくるんだ。物語の前半はずっと桐沢さんと呼ばれていて、この役は実は桐沢慶子なんだ。映画版は改編しているけど、冒頭では私の役が誰なのかも言及してない。よっぽどAIの解析を見てそのまま私を罵りに来たんだろうね。あ、そうそう、桐沢慶子も私が演じてるんだ。メイクでちょっと分からないかもしれないけど、台詞は少ないけど確かに主要な役だよ。」


『彼女を殺した青山栄一を演じたこの男性俳優は、とても演技が上手くて、感情表現も非常に自然で、細かなところまで行き届いている。』


「おい、ネタバレだよ! それに補足すると、青山栄一を演じたのは葵の彼氏――佐伯凛太郎だよ。」


「おお!」泉と乃亜は驚いてマリハを見たが、マリハは依然として怒りに浸っていた。


「ていうか、このブロガー、よくこんなに完全な情報を見つけられるね。私も前にネットで検索したことあるけど、これらの作品は見つからなかったよ。」


「多分、私が劣跡俳優だからだろうね。ニュースを見たみんなが『清優マリハって誰?』って検索し始めて、私の資料がどんどん掘り起こされてるんだ。実はこの三年間、出演作は結構多いんだよ。」


『第七部『鏡の中の女』予告編、この制作チームについて言及すると、本当に厚顔無恥もいいところだ。藤崎雪主演の映画で、清優マリハにレスラーを演じさせている。皆さん、よく考えてみて。受け身もできない端役がレスラーを演じる? 予告編での彼女の登場時間は合計二秒。二秒! その二秒でさえ、彼女は木偶のように立ち、投げられて、表情は車に轢かれたかのようだった。これで予告編に入れる? 制作チームがわざと彼女を話題作りに使い、以前のレスリングのトレンドに乗っかろうとしているのは明らかだ。』


「『鏡の中の女』の予告編にまだ私が出てるの? 見てないけど。」


「『寄生バラ』の先行上映会の時に自動アップロードされたんだよ。制作チームがあなたのゲスト出演シーンで予告編を作ったんだ。でもあなたが事件を起こした後、動画はすぐに削除されたよ。」


「本当に悲惨な芸能生活だなあ。殺すか殺されるか、あとは背景板。まあいいや、こんなこと言って何になる。どうせ私はもう気にしてないし、彼らがどう編集しようと、どう罵ろうと、私には関係ない。」


 口ではそう言っても、心の中ではやはり気にしていた。


「罵り方がひどい……とにかく、桐沢慶奈と桐沢慶子は私が演じた最初の名前のある主要役なんだ。これは私の履歴に載るはずなんだけど、今は履歴を持つことすらできないんだけどね!」


 心の中でぶつぶつ言いながら、スマホを置き、葵のオフィスに潜り込んだ。乃亜は引き続き新しい機材を確認し、泉は会議室の入り口のソファで休んでいた。


 あっという間に午後になった。


 トレーニング場の雰囲気は午前とは明らかに違っていた。泉とマリハはリング脇のガラス張りの部屋に座り、ガラス越しに場上の二人を見ていた。


「あの二人は誰?」


 マリハはリング上の姿を見て尋ねた。泉は彼女の視線に従って見た。


「左のあの子は小川ヘレナ。」


「小川……ヘレナ?」


「うん。彼女は元体操選手で、泉も以前、何度か話をしたことがある。」


 泉は場上のヘレナを見た。ただ立っているだけでも、彼女の体の柔軟性が普通の人とは違うことが分かった。


「彼女の体はとても柔らかくて、動作の幅も大きい。」


「体操選手出身なら、確かにレスリングに向いているね。」


 マリハはうなずいた。


 彼女の視線はもう一人に移った。


「じゃあ、隣のあの子は?」


「この人は私も初めて見る。」


 マリハはしばらくじっくり見た。


「彼女も背が高いね。」


「うん。」泉はうなずいた。


 リングの上では、二人が基礎トレーニングをしていた。


 小川ヘレナの動作は非常に標準的だった。


 彼女はアメリカ生まれで、半分日本人の血を引いており、元体操選手で、後にプロレスラーに転向した。体操の訓練の基礎があるからこそ、彼女の体の柔軟性は常人をはるかに超えていた。


 移動、ローリング、受け身のどれもが鮮やかだった。体が落ちる時に余計な動作がなく、立ち上がりも非常に迅速で、一連の動作はすでに習慣化されているように見えた。


「彼女の動作はきれいだね。」マリハは思わず言った。


「何せ元プロレスラーだからね。」


 それに比べて、もう一人の女の子の動作は明らかにぎこちなかった。


 彼女は背が高く、四肢も普通の人より長く、これらの動作は、長い手足も相まって、見栄えがよかったが、動作自体にはまだ明らかな新人感が漂っていた。


 前に進む時は体が少し硬く、ローリングの時もヘレナのように自然ではなく、明らかにレスリングの動作を練習しているのに、その姿勢はどうもレスラーらしく見えなかった。


「彼女の動作……ちょっと変だね。」


「うん。」


「でも身長と体の条件はとてもいい。」


 姿勢はまだ標準的とは言えなかったが、彼女はすぐに立ち上がり、失敗しても止まらなかった。


 ヘレナは傍らに立ち、根気よく彼女の動作を修正していた。


 越谷美咲もガラス張りの部屋に入り、マリハと泉の隣に座り、視線をリングの上に落とした。


「彼女たち二人とあなたたちの状況は全く同じよ。参考になるかもしれない。」


「あの子は陳之夏といって、中国から来たの。以前はグラビアモデルをしていて、今ちょうどプロレスラーのトレーニングを受け始めたところよ。」


 午後中のトレーニングで、ヘレナは常に教科書のようなリズムを保っていた。彼女はどの動作も考える必要がなく、体がすでにどう着地し、どう立ち上がるかを覚えていて、まるでそれらのローリングと受け身が筋肉に刻まれているかのようだった。


 陳之夏は同じ動作を繰り返し続け、一度できなければもう一度やり、その間ほとんど休むことなく続けた。彼女は自分が上手くできないからといって焦ることはなく、ただヘレナの指導に従って、何度も何度も角度と重心を調整した。


 ガラス張りの部屋で、三人は席に座り、ガラス越しに場上を見ていた。


 越谷美咲はトレーニング記録を手に持ち、視線を二人の間で行き来させ、時折うつむいて何かを書き留めた。


「時間はかなり迫っているわ。このところ、安藤レイナの引退試合が消えたことに関するトレンドが徐々に発酵しているし、Project Z企画もまもなく正式に発表される。」


「あなたたち四人のデビュー戦は何よりも重要よ。」


 マリハと泉は何も言わず、依然としてリング上の二人の一つ一つの動作をじっと見つめていた。


 時間は進み、外の世論も進んでいる。そして彼女たちにできることは、まず目の前のこの動作をしっかり練習することだけだった。


「はあ……まだやることがたくさんあるなあ。」


 夜になって、葵がようやく会社に戻ってきた。彼女は書類を整理し、ファイルに収め、ようやく着替えて帰る準備をした。


 彼女はハイヒールを脱ぎ捨て、一日中体を縛っていたスーツの上着を脱いだ。


「ふう……」


 束縛感が消え、彼女はようやくリラックスした。「人手が全く足りない。このままじゃ、私一人で到底持ちこたえられない。改装が終わったら、人を雇おう。」


 彼女は椅子にしばらく座り、足の指でハイヒールを引き寄せて揃え、机の下に押し戻した。それから、足を傍らの黒いショートブーツに入れ、立ち上がり、脱いだ服をハンガーに掛け直し、普段着のトレンチコートに着替えた。


 視線がホワイトボードに留まった。何か書いてあるようだった。服を着替えた葵が近づいて見ると、そこにはマリハがかつて出演した作品と役柄が整然と列挙されていた。


「マリハ、このやつ。」


 葵はそっと笑い、ホワイトボードをソファのそばに引き寄せ、一行書き加えた。


『清優マリハ作品履歴』


 それから、彼女は電気を消し、鍵をかけ、会社を後にした。

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