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【第59話 動いた】

二十一時。捜査員たちが再び会議室に集まる。昼とは違う空気。誰もが、もう分かっていた。

「現在の捜査状況や」

本部長の低い声が響く。

「容疑者は——」

一拍。

「金本慎二」

「松本健」

室内の空気が、はっきりと変わる。

「後は、証拠を固めたい」

視線が巡る。

「工場、なんか出たか」

「いえ」

一人が資料をめくる。

「ただ……気になる点が一つ。スプレー缶です。深緑と白。ナンバーと同じ色かと」

本部長が小さく頷く。

「ほー……バイクはどうや」

別の班が答える。

「西淀川、リバーサイド野里付近の映像ですが、同一の可能性が高いです」

「それと——バイクに二人、乗ってます」

ざわめきが広がる。

「中津、西淀川、吹田。いずれも雨でして。映像がはっきりせんのです」

本部長が腕を組む。

「わざと雨の日狙ったんか。たまたまか」

一人が言う。

「誕生日狙いなら、たまたま」

別の声。

「雨を狙ってるなら、ただの引ったくり」

本部長が短く言い切る。

「……誕生日狙いやろ。たまたま雨や。画像解析、急がせろ」

「はい」

視線が橋本へ移る。

「キャバクラはどうや」

橋本が立ち上がる。

「尼の千秋、当たりました」


「本人は否定してますが、襲われたと見て、間違いないです」

さらに続ける。

「それと——尼の店での様子ですが、羽振り、かなり良かったみたいです」

小さくざわつく。

「シャンパン開けたり、フルーツ盛り振る舞ったりと、金の使い方が派手やったと」

本部長が低く言う。

「……奪った金、持っとるな」

誰も否定しない。

橋本はさらに言葉を重ねる。

「誕生日狙い。二人組。尾行。犯行。消費」

一つ一つ、線が繋がる。

沈黙。

本部長がゆっくり頷く。

「……揃ったな」

低く、はっきりと言う。

「後は——」

わずかな間。

「詰めるだけや」

「……はい」

声が揃う。

その瞬間——この事件は、終わりに向かって動き出した。

「明日の動き、確認しとこ」

本部長が腕を組む。

「任意で引っ張りたいとこやけど——」


「まだ証拠がはっきりせんからな」

誰も口を挟まない。詰め切れない、最後の一線。

その時——会議室の扉が静かに開く。

婦人警官が一人、足早に入ってくる。周囲の視線を気にしながら、本部長の横へ。小さく身を屈め——耳打ちする。

「……」

本部長の表情が、変わる。

「……なんやて」

低い声。室内の空気が、一瞬で張り詰める。

本部長は小さく息を吐く。

「……ふー」

全員を見渡す。

「聞いてくれ」

その一言で、全員の背筋が伸びる。

「淀川自工の——」


「松本健」

さらに間を置く。

「——動いた」

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